「映画館で観ると粗が目立ってしまうのだが、スケール感が劇場向きなのが何とも言えないところ」メカバース 少年とロボット Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
映画館で観ると粗が目立ってしまうのだが、スケール感が劇場向きなのが何とも言えないところ
2025.3.5 吹替 イオンシネマ久御山
2023年のシンガポール映画(97分、G)
亡き父の後を追ってロボットのパイロットになる少年を描いたSF青春映画
監督&脚本はリッチ・ホー
原題は『Heavens: The Boy and His Robot』で、「Heaven」は劇中で登場する惑星間移動ができるゲート「Heavens」のこと
物語の舞台は、近未来の地球のどこか
少年カイ(イライジャ・ホー、幼児期:ジョセフ・ホー、青年期:ジョナサン・シー)は、父(サミュエル・リム)のようになりたいと思っていた
父は地球軍のロボットパイロットで、地球を守るために日夜奮闘していた
だが、ある時の戦いにて死んでしまい、宇宙のもくずとなってしまう
さらに母(ロセアナ・ン)も父と同じように戦争に行ってしまい、約束の10年が過ぎても音信不通のままだった
カイは父の友人に預けられ、母親を探すために自前でロケットを作ろうと考える
様々な分野の知識を仕入れ、そしてプロトタイプを完成させるものの、実験は失敗に終わった
だが、その実験を養父母の友人である地球軍のキャプテン(リッチ・ホー)が見ていた
キャプテンはアカデミーに来るように言い、そして彼はパイロットになるためのテストに向かうことになったのである
映画は、主に訓練生時代を描き、そこで鬼軍曹と呼ばれるコーチ(ケニー・ウー)にしごかれる様子とか、他の訓練生と仲を深めていく様子が描かれていく
カイは頭脳は優秀でも基礎体力が備わっておらず、喘息持ちというハンデがあった
だが、必死に訓練に食らいつき、何とかロボットとの接続にまで漕ぎ着けることができた
カイはロボットのとのコンタクトを済ませ、彼に「リトルドラゴン」という名前をつける
そして、カイとリトルドラゴンの戦いの幕が切って落とされるのである
と、映画本編はここで終わるという感じになっていて、最終決戦は火星から偵察に来た一小隊と戦うという構図になっている
おそらくは敵の司令部にも伝わったと思うのだが、そのあたりは次回作に期待をというところなのだろう
映画は、11年もの歳月を投入し、ほぼ自己資金と支援で賄った作品なのだが、そりゃあこの映像を作ろうと思うとお金が掛かるよねという内容になっていた
低予算でも作れるホラー映画とは違って、これだけのメカがCGで動くとなると複雑な処理が必要になる
そして、それに付随する背景にもお金が掛かるのだが、そのあたりは許してねという感じでスルーされていたように思えた
物語は、よくあるハンデ練習生の成り上がりというもので、そこまでサプライズなものはなかった
主人公に特殊能力があるということもなく、周りよりも頭が良いという部分があって、そのひらめきによって事態を打開するというもので留まっている
これ以上チートな能力があると冷めるので、これぐらいがちょうど良いのかな、と思った
いずれにせよ、公開規模がえらいことになっていて、宣伝にも力が入っているのだが、やはりシナリオが弱くて、お客さんが殺到するという内容になっていないのは惜しい
主人公は普通の男の子ということもあるが、彼自身が他の訓練生よりも明確に秀でている部分がわかりにくいのと、彼自身の変化が乏しく見えるのが難点なのだろう
彼には喘息というハンデがあるが、それが戦いで克服できるものではないので、彼自身が何かを得るという部分が弱く見えてくる
そう言った面も含めて、完成させたことがゴールとなっているように宣伝されていることもマイナスなのだと思う
映画は努力だけでは口コミにはつながらず、心を奪うだけの何かが必要になってくる
そう言ったオリジナリティがないと厳しい世界なので、本作はその追求が弱いゆえに残るものが少ないのかな、と感じた