恋脳Experimentのレビュー・感想・評価
全4件を表示
全ての始まりは、何気なく与えられる呪いの詰まったぬいぐるみなのかもしれません
2025.4.14 アップリンク京都
2025年の日本映画(110分、G)
恋愛とカワイイに悩まされる女性を描いたヒューマンドラマ
監督は岡田詩歌
脚本は岡田詩歌&岡田和音
物語の舞台は、関東某所(ロケ地は群馬県高崎市)
お人形を見て固まった幼少期の山田仕草(祷キララ、中学時代:大月美里果、幼少期:塚尾杏樹)は、その時に何かを思っていたが言葉にはならなかった
その後、中学生になった仕草は、誰かが言った「恋愛をすれば可愛くなれる」と言う言葉を信じて、フラれたばかりの同級生・後藤晴人(佐藤和太)に告白をした
晴人は「付き合ってもいいよ」と言うものの、それは「好きだから」と言うものではなく、自然と拒否反応が出てしまった
仕草は塾に通っていたが、そこの講師の栗原(二見悠)は距離の近い男だったが、クラスメイトの樹里亜(関谷翼)は、あらぬ誤解をして、言いがかりをつけてきた
その後、クラスのみんなに付き合っていることがバレるものの、晴人は全力で否定し、「告白したけど、フった」とまで宣うのである
物語は、幼少期と中学時代の経験を経て、大学生活がスタートするところが本編となっている
映画全体は章立てになっていて、「1.ある子供とおままごと」「2.仕草と初恋未満」「3.佐伯と俺の未来」「4.卒制彼氏」「5.かわいいね」「6.仕草のカルマ」「7.子供が好きな子」「8.仕草の葬式」「9.仕草と営み」と続き、時折回想シーンが入ると言う構成になっていた
大学時代はコンテンポラリーダンスに青春を捧げている佐伯翔太(平井亜門)と付き合うものの、大学の卒業生活制作を理由に別れることになってしまう
この二人の馴れ初めは明確ではないものの、仲の良いゼミ仲間から進展したと言う感じで、ゼミ仲間の丹下(中山雄斗)や塚本(門田宗大)らに焚き付けられて意識し出したように思えた
社会人になってからは、憧れのデザイナー西川(小林リュージュ)の元で働くことになったものの、そのパワハラ気質を肯定してしまう様子が描かれる
西川の元同僚の金子(中島歩)との出会いによって「毒が抜けた」と表されるものの、その後はその自分らしさが金子との関係を解消させるに至っている
男性目線だと「男の見る目がない」とも思うのだが、かと言って仕草に非がある訳ではない
それでも、どこか歪んでいる恋愛観であるとか、他人の意見に左右されやすい部分とか、その立場から違和感を無くす方法に長けているような感じで、おかしく思える状態の中で普通にいるように見えてしまう
傍から見ればわかるのだが、本人には自覚がないと言うところがあって、それを世間的には恋愛偏差値が低いと言うのかもしれない
体験を通じて学んでいくものの、本人の特質には抗えないところがあって、その根幹がどこにあるのかと言えば、それは母親(河井青葉)に他ならない
幼少期に「自然と与えられる人形」はその先入観のメタファーのようなもので、その人形に問いかけるのは仕草だけではない
劇中に登場する西川の娘(演者不明)も同じような行動を取っていて、子どもながらにも「大人が持つ先入観」はどこかおかしいと感じているのだろう
それでも、それが普通だと思っている人が大半であり、その中で馴染んでいくことで、幼少期に抱えていた違和感というものが押し込まれてしまう
本作では、その部分がきちんと描かれていたのではないだろうか
いずれにせよ、ちょっと意識高い系みたいに揶揄されるところがあって、ちょっとイタいと表現されそうな人物がたくさん出てくる内容だったと思う
おそらく関西だと総ツッコミ状態の作品で、「何抜かしとんねん」と誰かの声で脳内再生されること待ったなしのように思う
そのあたりは地域差というよりは風土の違いのようなもので、ラーメン屋の店員さん(森本あお)は関西出身のキャラなのかなとか思ってしまった
かなり上から目線の男性が登場しまくるのだが、誰一人として自覚がないところが凄い
故に、ここにいる男性に憧れを持つと恋愛的には赤信号なので、反面教師として受け取った方が良いのではないだろうか
個人的には、色々と恨み節の多い人生だったのかなあとか、余計なことを考えてしまった
ハイアートでもなくコマーシャルアートでもなく
「監督は芸大出身なんだな」と観てて思うの。
芸大エピソードが満載なのもそうなんだけど、なんか意味不明なシーンがあって、そう感じるの。
主人公は「かわいい」の呪にかかっているというか、「かわいくいることを強要されることで、本当の自分を生きられない」みたいな感じなんだよね。
そしてそれを、自身の創作能力で救う。
出てくる作品が「なるほど芸大」なんだよね。
確かに面白い。しかし「こういうの散々、観たな」という面白さなの。
だから、救えないと思うよ、あの作品では。
そこが難しいね。
祷キララはすごいね。
ホームパーティーでは上半身の服に赤・青・黄が入ってるんだけど、違和感なし。「さすがモデル」と勝手に思ってたけど、モデルじゃないんだ。すごい。
中島歩はミニシアターになくてはならない存在だね。
作品ごとに芸に磨きがかかってる。
最初から最後まで佐伯くんはいい。
「芸術家気取り」という設定だけど、最後は芸術家になってるからね。気取りじゃない。
演じた平井亜門も良かった。
ラストは棺桶の中から「かわいいね」と言ったシーンで切って良かった気がしたな。
PFFスカラシップで撮ったということだけど、2時間の尺にしなきゃいけないっていう縛りがあるのかな。
中学のときのエピソードも長すぎた気もするしね。
かわいく生まれるとかわいいの呪にかかってしまうの大変だなと思ったけど、そりゃお前、自分でなんとかしろよと思ったな。主人公はなんとかしたよっていう話だと思うけど。
SHIGUSA EXPERIENCE
平井亜門と中島歩が揃ったら観るしかない。
綺麗になりたくて彼氏をつくる、という通常とは逆の論理展開をする主人公がユニーク。
しかし、相手のぽっちゃり君もその先で出会う男たちも、主人公ですら、恋愛絡みのキャラが皆ろくでもない。
どいつもこいつも自分勝手で、そりゃ上手くいかんわ。
そんな様子をコミカルかつシニカルに描いており、特に中島歩パートは突出していた。
しかし、テーマとなる“呪い”に関して表現できてるとは言えない。
ポスターに『「恋を、しなければ。」の呪いを解き放て』とあるが、そもそも仕草にそんな様子あった?
綺麗になるためだったり、芸術に転化したり、常に恋を“糧”にしてるように見えたよ。
たまに変わったこともするが突飛とまでは言えず案外フツウで、正直どっちつかずな印象は拭えなかった。
大学時代にいきなり「ヤグ」と呼ばせたのは最悪。
仕草だと確定してヤ(まだし)グ(さ)の略だと気付いたが、別人か親が離婚かなど無駄に考えてしまった。
個人の感覚では、周りからあんなにカワイイカワイイと言われる感じに見えないのも違和感。
主人公以外の視点は要らなかったし、ラストに結論を台詞で言っちゃうのも残念かなぁ。
演劇人としても人間としても成長した佐伯は好きだし、中島歩の新しい引き出しが見られたのも収穫。
幼少の仕草役の、アップになった目の芝居は凄かった。
祷キララは、伊藤万理華や河合優実に続く『サマーフィルムにのって』第三の刺客になれるかと期待したが…
まだ惹きつけるものまでは感じなかったです。
栗原の気持ち悪さに嚥下音を使ったり、センスと面白さは感じたので、監督には期待したい。
おそらく新しい試みのPFFスカラシップ作品
アニメーションで実績のある若手女性監督が、初の実写映画を撮ったとのこと。
PFFスカラシップ作品を観たのはかなり久々だったので、今どきの多様性を受け入れる時代に撮られたという意味では非常に興味深い作品ではあった。
アニメパートはほんの一瞬でした。
全4件を表示