「ピクサーの「後世に残らない」作品」星つなぎのエリオ あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
ピクサーの「後世に残らない」作品
鬼滅に占拠された映画館の平日一回目。観客は鬼滅を観ないお利口そうな親子連れが二組と私だけ。吹き替えものは普通、観ないのだけど、地元では字幕版が上映されないのでやむを得ず。まあピクサーだしなということもある。久しぶりに吹き替え版を観るとセリフの吹き替えだけでなく画面に現れる文字(お店などの看板やモニター表示)も日本語にしっかりと置き換えられていてちょっとびっくり。
で、肝心の映画ですが、はっきり言ってピクサーにしては近年稀にみる出来の悪さ。
この映画の原題は「ELIO」。孤独な少年エリオの体験と心の動きを追いかけたものである。だから冒頭で惑星探査機ボイジャーを取り上げて、コミュニケーションを求める少年の孤独と関連付けたところは秀逸な設定だった。でも、以降出てくるコミュニバースや異星人たちの設定やキャラクターがいかにも浅く魅力的でない。異界との接続というのがピクサーの主題の一つというか、得意技であることは「リメンバー・ミー」の名前を挙がるまでもないが、この映画ではコミュニティバースの存在感、存在意義やグロイゴン、グロードンの父子関係が、どこかで観てきたような博愛意識や家族観でしか説明されておらず、キャラクターもどこかで観てきたようなレベル感にとどまっている。だからエリオの成長についてもきちんと折り合いがつかず中途半端に放り出されている印象を受けた。
ピクサーの作品は何度観ても面白く、そのたびに発見もあるのだが、私はこの作品は一回だけで結構です。
コメントする