市子のレビュー・感想・評価
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現在と過去の交錯が多過ぎる
人気舞台を映画化したヒューマンドラマで一人の女性の壮絶な人生を描いているストーリー。現在と過去が交錯しながら進んでいく展開ですが、交錯する頻度が多過ぎる印象で全く共感出来なかった。
それでも主演の杉咲花は今や誰もが認める実力派女優であり、今回も彼女の演技が素晴らしく引き込まれた。
2023-209
演出以外はとても良い
役者の演技は良い。
カメラワークも良い。
特に美術部のお仕事が素晴らしい。
大まかなプロットも興味深く面白い。
しかし肝心の演出が正直残念だった。
以下、次回作に期待を込める意味で忌憚なくコメントします。
大きく気になったのは以下の2点。
①演出の方向性がバラバラ
社会課題を取り入れたストーリーと、ドグマ95のようなドキュメンタルなカメラワークの相性はとても良い。ならばストーリーのドキュメント性ももっと高めるべきだと思う。元々は舞台の作品のようだが、人々の関係も舞台のまま持ってきてしまっ他のか、カメラワークの狙いと乖離してしまっている。その人とその人がその場所に一緒にいるのはおかしいだろ、と観ながらツッコミを入れざるを得なかった。舞台のままのストーリーを大切にしたいなら、カメラワークはここまでドキュメンタルにするべきではない。もし予算やスケジュールの都合でドキュメンタルな撮影になったのなら、脚本も見直すべきだと思う。それと、ドローンショットは他のカメラワークの狙いから外れているので要らない。ただ「ドローン撮影をやりたかった」ようにしか見えなかった。
②音をもっと大切にして欲しい
一番ストーリーに没頭出来なかった理由は音声の扱いである。人物の対話シーンで、Aさんの画のときにBさんの声が入るが、その声がマイクから遠すぎて聞き取りづらい。同録スタッフいなかったのかな?こういうところで、幻想の映画の世界に浸っていたのに、あ、これは作り物なんだよねって一気に覚めちゃうから、最低限の音の設計はしっかりやって欲しい。映画という夢の世界に没頭させてください。
上手く演出すればラース・フォン・トリアーの作品みたいになりそうなストーリーなだけに、惜しい作品だなと思いました。次回作に期待しております。
そこらへんに転がってる悲劇
「ある男」を彷彿とさせる内容ではある。
元が戯曲なだけにセンセーショナルな内容であり、舞台映えはしそうである。ヤングケアラーとかシングルマザーとか生活弱者とか、その劇団のカラーを知り、それ目当てでくる客層には好評なんだろうなぁと思う。
ただ、映像にするにあたりも少し交通整理は必要ではないのかと思う。劇作家であり演出も手掛けたのなら抜け出せない迷宮かもしれないが。
誰が主役かいまいちピンとこない。
タイトルである市子の事が語られはするが、過去が暴かれるだけで、彼女自身の変化にまでは至らない。新たな戸籍を手にするようではあるが、身元不明の遺体を特定する方法は多々あるし…結局、彼女は元の暗闇に戻っただけだ。
彼女の周囲の人々は結構な確率で不幸に見舞われていて…じゃあ、その元凶はなんなんだってなると、障害を持つ妹に行き着く。そこから派生して、その障害者の家庭へのケアが不足してる社会批判も含まれるとかってなるとそんな事もないように思う。
残酷な現実は、普通に、幾らでも転がってるんだという一例に過ぎないのだ。
彼女を追う彼も最後までは描かれないし…。
同情を誘いたいわけでも、感動を届けたい訳でもないはずで、どうにも不完全燃焼な作品だった。
観客はどう思うのだろう?
市子じゃなくて良かったと安堵するのだろうか?
更なる市子を誕生させないようにしようと思うのだろうか?
それとも対岸の火事ではなく、現代の日本で普通に起こる悲劇であると認識を改めるのだろうか?
LIVEではない事で伝えきれないモノは多いと思われる。
ただ、杉咲さんの儚さは絶品だった。
あくの強い関西弁なのだけど、彼女の口から発せられると、とても柔らかく聞こえ好きだった。
芝居の妙
大変引き込まれる作品でした。
アクションとか疾走感があるわけでもないのに、登場人物と役者が演じる芝居の熱がすごくて目を離せない、そんな感覚です。
後で調べて知ったことですが、本作の戸田監督は劇団も主宰されており、その旗揚げ作品だったのが本作の原作だったのですね。確かに映画館で感じた感覚は舞台を観ているようでもあり(もちろん芝居っぽいというのではなく)、映画のストーリーが身近で起きているかのような臨場感がありました。
それには演出はもちろんでしょうが、俳優陣の高度な技量があってこそ。皆さん素晴らしいのですが、特筆すべきはやはり杉崎花さん。NHKのテレビ小説に主演された時もその演技力の高さに圧倒され、それまでほとんど見たことがなかったテレビ小説を最後まで観届けてしまいました。
あとやはり脚本の面白さも際立っていると思います。舞台版は映画とはまた違って角度からストーリーが展開されるようで、機会があれば是非観てみたいと興味が尽きません。
しかし、ラストは大きく賛否が分かれるものと思います。果たしてこれで良かったのか。これが良かったのか。個人的にはちょっとモヤモヤする終わり方。これも監督が意図されたものでしょうか?
あと気になったのは録音。カット割りごとに目まぐるしく変わる音声の振り方がやや雑で、聞いていてあまり心地よいものではありませんでした。残念。
面白かった。
杉咲花がすごい。
今年最後の最後にキターーー
【市子】にびっくりした。
窪田正孝&妻夫木聡の去年の「ある男」にテーマは似ていて、簡単に言うと「なりすまし」で生きざるを得なかった人の話。
市子の場合は、まず自分の戸籍がそもそもありません。
戸籍がないということは、保険証もない、学校にも通えない。それでどうしたか?というと、他人を【始末】して、その人になりすまして生きていくわけです。
でも、その大きな秘密を抱えながらひっそりと生きていても、人生の選択においてどうしても誤魔化しきれない事になり、彼女は逃亡する場面から映画はいきなりはじまります。
この映画、オープニングとエンディングがめちゃくちゃセンス良くて、最後なんか音楽も無し。鼻歌と、足音だけなんです。韓国映画のようなエッジが効いています。
まず特筆すべきは、市子役の杉咲花ちゃんがべらぼうに上手く、
恋人役にこれまた芸達者な若葉竜也(大衆演劇出身の彼には最近とっても注目しております。「愛がなんだ」ナカハラ役でまずやられました)。
決して裕福ではないけど、ある夏の祭りの夜に出逢ってやがて一緒に暮らし始めた2人の3年間。狭いけどなんか私好みな小さなアパートで仲良くつましく暮らしていた。
ところがその暮らしはある日を境に一変し、市子は失踪してしまう。
義則がプロポーズをした翌日、忽然と消えてしまう。
途方に暮れ、警察とも協力しながら市子の行方を追う義則は、やがて信じがたいほどの苦難に満ちた市子の過去を知ることとなる。といったストーリー。
子供時代から成人後まで、市子と関わりの深かった人物が数人登場しますが、各々のエピソードを通じて、市子の複雑な胸の内や葛藤を知ることができ、いかに彼女が自らの宿命を振り払うように懸命に生きてきたかを知ることになります。
彼女を心から愛して、死ぬほど心配して探し続ける義則に若葉竜也くんが非常にハマっていて、彼の曇りのない真っ直ぐな愛が素敵です。
それだけに、切ない。
結末は、ありません。ベタな御涙頂戴演出も、ありません。
胸が締め付けられるけど、すごい作品だな、と呆然としました。邦画では稀な事です。
タマ子でもあみ子でもなく…
杉咲花を観に行く作品。ポスターのドアップを見て、前よりかわいくなったな岸井ゆきの(岸井さんに失礼!)と思ったが、髪から出ている耳で杉咲花に加点していると言えなくもない。戸田彬弘監督は劇団をやってるとのことで、三浦大輔や加藤拓也など最近の演劇人監督作とは相性がいいので本作にも期待。
話は時系列をいじくりつつ見せていくミステリーでそこは楽しめたけど、実はけっこう重たい社会派テーマの話ゆえに、筋ジスの娘にしても頬がただれた希死念慮のある女にしてもその扱われ方が引っかかってしまった。毒親設定とはいえさすがに「ありがとう」はないわ。でも「市子」というタイトルからしてホラー作品だと解釈すれば納得できなくもないような気も…。
小学校時代の市子は将来、杉咲花ではなく前田敦子になりそうだったが、中田青渚のケーキ屋が近所にあればぜひ買いに行きたいと思った次第(余談)。
ストーカー怖い((((;゜Д゜)))
市子(杉咲花)の過去を遡ればのぼるほど
見えてくる闇深さ。
単純な殺人事件とは違う、重厚なミステリーを思わせます。
3年間同棲し、結婚を考えた相手にも関らず
その相手の素性を何も知らないというのはいまどきなのでしょうか。
昭和のおばちゃんには、そこがしっくりこなくて
現実味を感じられません。
中盤からどんどん複雑怪奇になって、
時系列もコロコロ変わっていくので
テンポもあまりよくないため、おいてけぼりを喰らうし😫
ストーカー気質の元同級生 北(森永悠希)を
利用?しつつ第二の人生を歩もうとした姿は
弱者を利用する捕食者のようでした。
市子の本音がほぼ語られないため
何を感じて何を思っていたのかわからない。
もったいない気がします。
「さがす」と比較して…
面白い。でも難しい。
僕は「さがす」のALSの表現を記号的だと思わないし、倫理的にも物語の筋が通っていると評価している。この映画の病弱表現も主人公をそう足らしめるために必要だったと思う。とはいえ、フィクションの世界であるとはいえ、やっぱりこのラストは倫理的に受け入れ難いかな。これを繰り返していく人生を「最高の映画だった!」と両手を挙げて拍手を送る勇気が自分にはない。
あと、主人公が逃げる冒頭、この主人公ならもっと用意周到にやれるよな!?と、市子の人生に対峙すればするほど思ってしまった。
サスペンス映画としてずっとゾクゾクしてられた。鼻唄の継承。殺気立つ波。エンドロールの入り方が美しい。
杉咲花の代表作になるのでは。若葉竜也と中田青渚の絡みは別の映画のファンサービス的で、キャラも近しいので微笑ましく見ることができた。
お菓子を掠め取らせたのはよくわからなかった。自分の読解力のなさ。
「無国籍児」となって育った川辺市子
市子
神戸市内にある映画館「シネ・リーブル神戸」にて鑑賞 2023年12月20日
パンフレット入手
戸田彬弘監督が自身の主宰する劇団チーズtheaterの旗揚げ公演として上演した舞台「川辺市子のために」を映画化。
おかっぱ頭の川辺市子は、3年間一緒に暮らしてきた恋人の長谷川義則からプロポーズを受けた翌日に失踪。
途⽅に暮れる⻑⾕川の元に訪れたのは、市⼦を捜しているという刑事・後藤。後藤は長谷川の目の前に市子の写真を差し出し「この写真は誰なんでしょうか」と尋ねると、「あんたの知っている川辺市子って人間は、存在せえへんのですよ」と告げた。
長谷川は後藤と協力し市子を探す決意をする。
幼少期に同じ団地に住んでいた幼なじみのさつき、高校時代の北、市子が同じバイト先で一緒に下宿していた友人キキらの話で、市子に妹がいたことや、違う名前、年齢など偽っていたことを知る。
長谷川は市子が置いて行った鞄の底の一枚の写真を発見、裏に書かれた住所を訪ねると、失踪中であった市子の母なつみにたどり着く。
「300日問題」により「無国籍児」となって育った川辺市子。なつみは筋ジストロフィーを患った妹・月子の戸籍を市子に使わせていたことが判明。
300日問題とは、明治時代に制定され戦後も変わることがなかった日本の民法772条は、母が離婚後300日以内に生まれた子は遺伝的関係とは関係なく前夫の子と推定されると規定いている(嫡出推定)。このため生まれた子が前夫の子となることを避ける目的で出生届を提出せず、無国籍の子が生じている問題をいう。
2022年に法改正がなされ、2024年4月1日から施行される。
女性の再婚を100日間禁止していた規定はなくなるものの、離婚後300日規定は残る
パンフレットには「市子」年表があり、時系列になっていますが、長谷川から市子がプロポーズされる前まで。
あまりにも過酷な境遇で翻弄されてきた女性、市子であった。
なお、この映画を鑑賞した理由はかつて「市子」という女性とお付き合いをしていた。
なんとなく思い出してしまうのでした。元気にしているのかなならいいんだよ。
よかった…?
市子だった。
プロポーズした次の日に失踪した彼女。今まで何も知らなかった過去とともに追い求める彼。
彼女は何故幸せな生活を捨て消えたのか。。。
プロポーズのシーンが冒頭から始まり涙を流し喜ぶ姿。そして何もかも明かされた終盤にも同じ場面が流れた時、その笑顔と涙・歓喜と諦めに似た虚空が乗っかって一気に引き込まれた。
杉咲花は凄かった。空を掴むような、存在があって無く、自分が自分である事への諦めと主張。背景にある社会的問題を抜きにして「市子」だった。
そして相手の若葉竜也。『街の上で』で主演だった時も思ったが、どこにでもいるような、何も無いような、ただ存在してるような、でもなんか引っかかる、突き刺さる。どこかで見たことあるんだよなぁって感じではあるが演技はしっかり覚えてる。そんないい役者さんで好きなのです。
凄く面白かったです。
別格の日本映画
すべては杉咲花のために
演技力で魅せる映画。とにかく出演者の細かな表情の変化で、セリフが少なくても感情が伝わる。演技を堪能する作品。
出生300日問題やヤングケアラー、毒親など取り上げたテーマと妹になりすますという発想は絶妙。それだけにもっとおもしろい映画にできたのに…と思ってしまう。
分かりやすいエンタメ路線に乗せる必要はないのだけれど、もうすこしテンポアップしてほしかったのと、市子自身の本音や何をどう考えているのか深掘りがあればと感じた。
見方によっては、その出自と家庭環境が故に生まれた連続殺人鬼なだけにも見えてしまう。
親しくなった人を容赦なく切り捨てて別の人間として常にやり直していく人生。
子供の頃には確かにあった幸せな家族時代。そんな幸せが婚姻届と共に目の前まであったのに、またゼロからやり直す。
そうしてしまう背景がもちろんあるのだけれど、何かこう同情しきれないというか、市子自身の感情が見えにくいだけに「そこまでする?」と違和感を覚えてしまう部分があった。
市子という存在の不確かさをミステリアスに描くよりも、その悲哀をより切実に描いてほしかった。
そのあたりを俳優陣の演技力に依存してしまった気がする。一方で、演技力だけで見せてしまえるのも同時にすごい。特に杉咲花の魅力が全開。間違いなく代表作と言える。役者としての才能はこの1本を観れば分かる。どんな言葉よりも、宣伝よりも伝わる。彼女のためにあるような映画だった。
市子の人生、救えたはず
過去に戻れるならと考えても仕方ないけど、
一番の過ちは母親の流された選択としか言い様がない。
あの場面でまともな福祉の方に繋がっていたら市子の過酷な人生はなかったに違いない。
嘘を守るための新たな犯罪を犯す事もなかった。
ニュースになる家族間での犯罪行為の大半は、他者に相談する事はない。
人様に知られるぐらいなら内々でなんとかしようとして、益々事態はひどくなり最悪な決断を犯してしまう。
他者を入れる事で風穴が開く。
当事者ではどうにもならないのだから。
杉咲花よ、泣く不思議ちゃん役からの脱却を。
しばらく立ち上がれない
未来に希望を見つけようとする人たちと、
今にしか生きられない市子の、どこまで行っても交わらない哀しさ。
真夏の暑い中、汗をかきながら、お母さんの鼻歌を口ずさみ、冬子になった市子は生きていく
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