「集合住宅もの」市子 スコア105さんの映画レビュー(感想・評価)
集合住宅もの
NHKドラマ「団地のふたり」
NHKドラマ「しあわせは食べて寝て待て」
そして今回の「市子」
最近見たこれらのドラマや映画が面白かった。
これらの作品に共通しているのは、集合団地が物語の背景にあるということ。
集合住宅は日本の高度成長時代の象徴のひとつであり、中流階級の象徴でもありました。
高度成長も終わりバブル景気が崩壊し、景気浮揚もなかなか見えづらい中、
その高度成長の曲がり角、というよりその曲がり角をさらに進み、着地点として我々はどう生きるのか?その帰結は何だったのか?を上記のドラマ・映画は現しているようだった。
川辺市子の家族は、高度成長時代でも拾いきれなかった落し子ともいえる。当時は好景気に紛れ込んで見つけられなかったものが、いまの時代になって露わになったのであろう。
婚約者の長谷川も、ストーカー同級生も現在社会の中では比較的に弱者と位置付けられているような設定になっている。
その彼らが市子と交わることで、市子の実状が分かっていく。
言い換えると、市子はずっと誰にも見つけられることなく社会の底辺におり、そこに長谷川や同級生が
近づいていった、というか社会格差が広がっていき、長谷川らと底辺の市子との距離が近くなったと言える。
市子の弁当をぶち撒けた女の子も、当時集合住宅に住んでいたようだが、その女の子が大人になって、聴取を受けている時、彼女は気怠そうなヤンママになっていたのは、この社会の実態を表しているようでおもしろかった。
豊かさの影で見えなかったものが、経済成長が芳しくない今の日本の中で、露わになっていく。
「団地のふたり」や「しあわせは食べて寝て待て」では高度経済成長後の日本において、人生の終着点をしなやかに描いていたが、
「市子」では高度経済成長の見えなかった闇を描いている。
