「中身がぎっしり詰まった人間ドラマに魅せられた…」フェラーリ 瑞さんの映画レビュー(感想・評価)
中身がぎっしり詰まった人間ドラマに魅せられた…
大好きなマイケル・マン監督の8年ぶりの新作なので、迷わず映画館を訪れた。しかも、504名収容の大型スクリーンで観ることができたのはラッキーだった。観客は30人くらいしかいなかったが… エンツォの人生のたった3ヶ月を描いているだけなのに、彼の魂に触れられた気がした。家族への愛憎、スピードへの情熱、スタッフへの信頼など… 彼の言葉がカッコよすぎる。「ジャガーは売るために走るが、私は走るために売る。全く違う。」「私の車に乗るなら、絶対勝て。」「どんなものであれうまくゆく場合、見た目も美しい。」などなど。決して愛想がいい男ではないが、信念が感じられるし、一本筋が通っている。やはり、男を描かせたら、マン監督はピカイチだ。今まで、アダム・ドライバーが演じてきた役は一つもかっこいいとは思えなかったが、今回は違う。実年齢よりも20歳も年上を演じながら、とにかくカッコよかった。また、ペネロペ・クルスもすごかった。どこかに書いてあったが、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされてもいいくらいの熱演だった。息子を失った悲しみを内に秘めつつ、夫の不在を嘆き、一方で会社の経営には心を砕いている。目の下にクマを見せながら、美しさをかなぐり捨てて体当たりで演じていた。それからミッレミリアのレース・シーン。この年を最後に中止になったそうだが、堪能した。街中から、田園風景、山岳地帯までそのスピード感と美しい景色。CGに頼らない絵は素晴らしかった。最後に、エンツォのことを、みんな「イル・コメンダトーレ」と呼んでいて、他は英語なのにどうしてこの言葉だけイタリア語なのかなと思って、後で調べてみた。彼の愛称だったらしい。司令官と言った意味で、彼がもらった勲章の名でもあるらしい。納得した。8年も待たされたけど、すごくよかった。満足満足。