愛を耕すひとのレビュー・感想・評価
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愛ありてこそ・・・荒地にて(18世紀デンマーク)
1人の退役軍人(マッツ・ミケルセン)のヒース(荒れ地)開墾史
デンマークの至宝・マッツ・ミケルセンあってこその説得力でした。
重厚でドラマティックな歴史叙事詩。
何よりマッツ・ミケルセンの哀愁に満ちた暗い瞳が多くを語ります。
デンマークの18世紀、国土の3分2は石ころだらけの荒れ地(ヒース)でした。
1755年。
退役した大尉ルドヴィ・ケーレン(マッツ)は、荒れた国有地を
豊かな農地に開拓しようと入植する・・・それもたった1人と馬1匹で。
その土地には地主としてデ・クレールという名の悪徳領主が君臨していた。
ケーレンはデ・シンケルに目の敵にされ開拓を妨害され、
やっと雇った農夫(クレールから逃げた男)は、
見せしめに目の前で煮え湯をかけられて殺されます。
それでもケーレンはおしゃまな小娘でタタール人(スラブ系正教徒)の
アンマイ・ムスを教えて手伝わせたり、殺された農夫の妻アン・バーバラと
共にヒースにジャガイモを植えます。
翌年にはジャガイモを収穫します。
そのことが余計にデ・シンケルを刺激します。
チカラをつけるケーレンを畏れたのです。
妨害はエスカレートして、手伝いに来たドイツ人入植者を殺して、
家畜も殺します。
怒ったケーレンはデ・シンケルの手下を皆殺しに、してしまいます。
しかしケーレンはは領主デ・シンケルに捉えられてリンチを
受けることに。
そこで夫を殺されたアン・バーバラはリキュールに薬を混ぜて領主を
ナイフで惨殺してしまいます。
釈放されたケーレンですが、ドイツ人は逃げてもういません。
アン・バーバラも牢獄の中。
思いあまったケーレンは修道院に預けたアンマイ・ムスを迎えに行きます。
開墾も続いて、ジャガイモ畑は豊かに実っています。
しかし成人したアンマスの元へタタール人の放浪の民が、
小さな仕事をもらいに来ます。
アンマイは青年に恋をしてタタール人人と、旅立って行ってしまうのです。
ケーレンの瞳に滲む涙。
国王はケーレンに男爵位と毎月の賃金を渡すと言いケーレンの苦労は
報われるのです。
しかしケーレンの心を占めるのは喜びや達成感より、
アンマイもアン・バーバラも失った喪失感でした。
1755年に入植して8年。
1763年ケーレンは開拓した土地を捨てて、
何処かへともなく消えてしまいます。
幻影かもしれませんが、アン・バーバラを馬の背に乗せて、
2人で海の見える丘を走る一頭の馬。
これが願望ではなく、本当に実現していたら、
どんなにいいでしょう。
荒れ地を耕す原動力は、
愛する人と共にあればこそ。
愛ありてこそ、ですね。
爵位よりも大切なもの
デンマーク開拓史の英雄、ケーレン大尉を描いた物語。
爵位を求めて開拓に励んでいたケーレンが、数々の困難や妨害を乗り越え、人とのつながりの中で開拓を成し遂げていく姿を、マッツ・ミケルセンが非常に魅力的に演じていて素晴らしかったです。
ラストで、あれほどまでに渇望していた爵位を捨ててアン・バーバラのもとへ駆けつける姿には、たしかに彼が「愛を耕していた」のだと感じられ、邦題の秀逸さにも心打たれました。
やはりマッツか
ストーリーが非常にシンプル且つ普遍的なので、共感できる人も多い作品だと思いました。
権力者の象徴であるシンケルが殺され、英雄の象徴であるケーレン大尉がアン・バーバラと結ばれるラストには救われました。それに、アン・バーバラが勇ましくて最高でしたよね。キャスティングがうまくはまっていましたし、ケーレン大尉はマッツ以外には考えられません。
マッツ・ミケルセンの演技は重厚で良かった
これは名作でした。
史実に基づいて執筆した小説が原作。
主要登場人物の演技が各々素晴らしい。
ダブルヒロインがどちらも魅力的。
マッツ・ミケルセンの演技は重厚で良かった。
もう一度観たいと思う。
デンマーク語の原題は「Bastarden」で「庶子」。
主人公は、貴族のお手付きの子で、貴族から全く子として扱われない人生を送ってきた。
そのことへのこだわりから貴族の称号を得ようとすることが物語の引き金となり、エンディングにはその結末も示されている。
現代の日本人には、この階級制の本当のところがピンと来ないから、邦題は、これで仕方がないだろうと思いました。BESTではないけれど。
耕していたものは愛だった
この映画で印象的だったのは俳優たちの目の演技だ。浅黒い少女を厭い恐れる大衆の目、その少女を娘のように愛おしく見つめる"家族"の目、愛おしい少女を手放し見送る悲しみと迷いに満ちた目。たとえ家族同様の者たちが殺さようとその怒りの感情に満ちた目から涙が零れることは無かった。その決意の裏にはいつも開拓への強い意志があるように見えた。
映画が後半に差しかかるまで「愛を耕すひと」というタイトルの意味を理解するのが難しかった。たしかにアン・バーバラやアンマイ・ムス、アントンとは家族同様の絆を育んでいたが、開拓という最大の目標の元、その絆さえ一次は犠牲にされていたからだ。しかしアンマイ・ムスが他の家族を見つけ、ヒースを去った途端、いかなる状況に置かれようと一滴の涙も流さなかったケーレンの目から涙が零れる。
そこからストーリーは一転。命を懸けて耕したヒースの地を呆気なく去り、自分の人生を犠牲にしてまで命を救ってくれたアン・バーバラを取り戻しに行く。このシーンからは家族を犠牲にしてまで貴族の称号を求めたケーレンと、愛するもののために命を犠牲にした家族の対比が色濃く表現されていて、とても巧妙だと感じた。結局、映画は開拓したヒースの土地だけでなく与えられた悲願の貴族の称号をも捨てたケーレンが、命をかけて愛してくれた愛する人の願いを叶えに行くというラストシーンで締めくくられる。
ケーレンが命をかけて開拓したものは土地ではなく愛だったのだ。
マッツ・ミケルセンの圧倒的な魅力全開!
マッツ・ミケルセンあっての作品だといって過言ではないと思う。
これが彼の代表作にもなったのではないか。
退役軍人ケーレン(マッツ・ミケルセン)が
貴族の称号をかけて荒野の開拓をするというのがストーリーの軸。
最初はひとりだったが、アン・バーバラ(アマンダ・コリン)やアンマイ・ムス(メリナ・ハグバーグ)と出会い
もはや家族と言って良い関係になりながら、一緒にジャガイモ🥔を栽培する。
この関係性ができあがるまでが、実に複雑で時間をかけながらでありながら、実に納得性もあり深いなあと思った。
それを邪魔するシンケル(シモン・ベンネビヤーグ)が、これがまた絵に描いたような悪役で
あの手この手で執拗にケーレンの邪魔をするわけだが、
虫唾が走るくらいクソなヤツで、誰しもケーレンに感情移入していくつくりになっている。
そのくらいシンケルの悪役キャラが立っていると言えよう。
後半は怒涛の展開で、ケーレンを助けるために、アン・バーバラが命をかけてシンケルを殺害するシーンは
衝撃的だった。もはやシリアルキラーばりの流血である。
そういう意味でも、本作はいろんなジャンルを取り入れたエンターテインメントとしても申し分ない面白さだ。
ケーレンは当初の目標を達成し、成功したとおもいきや、爵位を剥奪され、王の家を追われるのだが、
ラストはコペンハーゲンに移送中のアン・バーバラを救い、一緒に海辺に向かう。
そこは、アン・バーバラが住みたいと言っていた海の近くなのだ。
結局、ケーレンが得たものはアン・バーバラとの愛情であり、
それゆえ邦題が『愛を耕すひと』なのだろう。彼が耕したのは荒地のみならず人の愛情なのだ。
アンマイ・ムスも同族の男が迎えにきて去ってしまうが、そういう愛情を持てる人物に育てたのもケーレンである。
映像の質感と音響が非常にマッチしており、また、マッツ・ミケルセンやアマンダ・コリンのビジュアルも美麗で
実に見応えのある作品となっている。
パンフレットは1,650円と少々高めだが、超美麗写真集としての価値もあり、お買い得。
ぜひ手にとってみていただきたい。
実にマッツ・ミケルセンが魅力的な作品であった。
ラストの描写も好き。
ミケルセンの傑作作品
18世紀半ばのデンマークの荒地開拓のお話し。実話をもとにしているとのこと。ケーレン大尉役のミケルセンが、渋い。怒りや希望、喜びを表す時の表情がとても良かった。バーバラ役のアマンダ・コリンの感情の変遷がとても上手く描かれていると思った。タタール人の子供役の子も健気だった。憎むべき地主は、自業自得ですね。同時代を日本にあてはめると、徳川家治の時代か?田沼意次が、権力をふるっていた時かしら?飢饉や天変地異が有り、徳川幕府は財政赤字だったでしょう。(←今の日本と同じかも)あのような地主もいたかもしれませんね😡⚡
マッツと開拓話と18世紀ヨーロッパが好きな人におすすめ
私はマッツ・ミケルセンを観にいきました。
「表情を変えぬマッツ」という前評判を見ましたが、とても雄弁に感情を伝えてきます。怒り、哀しみ、愛、絶望、希望、苦悩、様々な気持ちがしみてきました。
18世紀のデンマークの王侯貴族の生活と荒地や森林風景が美しく映し出されています。その場に立ちたいと思う景色でした。
原作は日本語訳されていないようです。鑑賞後に原題を知って、なるほどねと想いました。私は映画を観る前に知らなくてよかったな、と。
登場人物の造形が深く、魅力的な人がたくさんいました。
今年観た良い映画の一本です。
素晴らしかった
自分も裏の荒れ地を畑に開墾していたのでとても興味深い。しかし最初からあんな広大な土地を一気に開発するのではなく、なんとか自分が食えるくらいの無理のない範囲ですべきではないだろうか。
主人公がなかなかの偏屈ものでちょいちょい間違いを犯す。特に子どもを手放すのは大失敗だ。でもそこが人間らしくていい。人間にとって必要なものが何であるかを全部描いているようだ。
貴族のフィアンセのお嬢さんとくっつく展開だと思っていたらすっといなくなる。キスを2回しただけだ。
貴族のあいつが一点の曇りもない嫌な人物で、憎たらしくて最高だ。毒を飲まされてちんちんを切られて死ぬ。メイドを意味もなく殺すし最悪だ。
貴族が雇った囚人たちを暗殺する場面がものすごく生々しい。
恋愛映画みたいなタイトルだけど全然違う。そんなに愛を耕さない。
男は去って、女は去らず
歴史ものが好きならお勧め、18世紀のデンマークが舞台で
わかりやすい悪貴族VS開拓者の構図に 三角関係の恋愛要素に 家族愛
てんこ盛りのエンタメ色強い作品ですが、マッツ・ミケルセンの演技力と画力のせいか
1級の映画に仕上がって見ごたえがありました
ラストまでどんな展開になるのか目が離せない
物語の着地がたくさんあって後半はクライマックスの連続です
もうここで終わりかなと思ったら次に次に物語は続いていきます
個人的にはアンマイ・ムスが嫁に行くところで終わっても良かったかなと思いましたが
最後の選択を描いてこそ物語が完結するんだろうなと思いました。
往年の名作「風と共に去りぬ」のスカーレットは愛をなくしても土地を糧に前に進んでいったのですが、ルドヴィは土地を捨てて愛を選んだ
いい映画でした
約束する。ずっと一緒だ。
こないだ鑑賞してきました🎬
誰もが失敗した荒野の開拓に名乗りを上げる、ルドヴィを演じるのはマッツ・ミケルセン🙂
終始しかめっ面の彼ですが、独特の魅力は健在。
台詞は少なめながら、孤独な闘いに挑む男の心情をしっかり表現していましたよ👍
「ドクター・ストレンジ」
「カジノ・ロワイヤル」
とは違った、苦労が刻まれた男の雰囲気がありました🫡
アン・バーバラにはアマンダ・コリン🙂
私は彼女を見るのは初めてですが、ちょっと冷たそうながらも凛とした強い女性を静かに時に激しく演じてました。
終盤の決意を秘めた瞳が美しい😀
ルドヴィの家畜を盗む少女アンマイ・ムスにはメリナ・ハグバーグ🙂
その境遇には同情するところですが、ルドヴィらと暮らすようになってからは持ち前の明るさを発揮😀
画面を明るく照らしてくれます😁
フレデリック・シンケルを演じたシモン・ベンネビヤーグも、虚栄心と権力の座に取り憑かれたどうしようもない男を怪演していました。
シリアスなドラマであり、時に目を覆いたくなるシーンも😔
しかし全編にわたって抑えた演技のマッツ・ミケルセンを始め、共演者らのケミストリーは確かな手応えを感じる1本でした🖐️
マッツ・ミケルセンの男っぷり
18世紀デンマーク。
開拓不可能と言われた広大な荒れ地を、苦労の末に開拓しながら、足元を掬われる。
開拓させて成功したら取り上げて自分たちの手柄にしようと目論む政府高官がいたら、いったいどうすればよいのか。
王の権威は地方まで行き届いていないのは明らか、王の土地であるにも関わらず、地方有力者のしたい放題。
特に力あるデ・シンケルは、法などあって無きもの、数々の非道な行いにも関わらず、ひとつの報いも受けないどころか、ますます肥え太って大きくなる。
熱湯刑がひどすぎて思わず声が出てしまった。
デ・シンケルの、腹を刺しモノをちょん切ったアン・バーバラに拍手喝采。
不条理な世界をぐっと我慢して見られるのは、信念を持って黙々とすべきことをする、ケーレン元・大佐の男っぷりと、雄大で厳しく美しい風景、弱い者同士が肩寄せ合って小さい幸せを分かち合う温かさがあるから。
春が来て、蒔いた種芋から新芽が出たところは感動的。大事に見守る3人に、こちらも胸が温かくなった。
アンマイ・ムスは、赤毛のアンに似ている。人生が過酷すぎて、想像力を発揮して夢の世界で生きているよう、おしゃべりなのも似ている。愛に飢えていて、優しくしてくれるアン・バーバラとケーレンに全力で懐いているのが泣ける。そして、なんともかわいい。
彼女が成長して、自分の「一家」を見つけて去って行くのを見送るケーレン、可愛い娘の巣立ちは喜ばしいと思いつつ、自身の孤独には耐えかねたのだろう。
幸せってなんだろう、と彼は考えつくしたと思う。
地位も名誉も富もいらない。すべてを捨てても、力づくでアン・バーバラを取り戻したケーレン、彼女が住みたいと言っていた海の近くに馬を進めるふたりが、幸せを掴めたら良いなと思った。
予想より遥かにスペクタクルだった!!!
何となくイメージ的に、単調な映画なのかな、でもマッツ出るし、見とかなきゃな的に見たのですが…
圧巻でした!めっちゃ悪代官的な悪者出てくるし、マッツのカッコいい戦闘シーンもあり、ドキドキハラハラそして泣かされました。デンマークの大河ドラマです、これは。
成り上がり者だけど、国王に忠誠を誓った誇り高き男の話。そして本当にムカつくんです!あのヘボ領主!ヤツが死ぬシーンはよくやった!本当は熱湯地獄も味わせないとだ!と思いましたが…
ラスト、アンバーバラを迎えに行くシーンは逆に淡々としてたのがよかった✨2人再会の時涙涙なシーンもなく、ただ馬に彼女を乗せて、彼女が言っていた海の見えるところに向かうシーン…静かだけど、いや静かだからこそ、やっと訪れた安息の地、というのがとても表現されていて…
心に残る映画になりました。ありがとうマッツ…
追記:全然映画に関係ないけども、あの牧師さん、ヒューダンシーぽくて思わずえ?ハンニバル?って思っちゃったのはやっぱり私だけですよね
デンマークデンマーク版・大草原の小さな家? ではなかった
デンマークの海沿いの荒地。その美しい風景の中にポツンと建つ「王の家」。家族が(疑似家族なのだが)畑を耕し、少しずつ愛情を育んでいく。まるで『大草原の小さな家』のような開拓物語かと思いきや、もっと複雑で現代にも通じるテーマが見えてきた。
主人公(マッツ・ミケルセン)は25年の軍隊生活を終え、次の人生の目標として開墾を選ぶ。過去に何人も失敗してきた荒地を。そして、成功すれば貴族になれる。
彼は軍隊でも、身分のない者としては最高位まで昇進した意志の強い男であり、目標を決めたら必ず達成するタイプだ。だからこそ、また新たな困難に挑む。
けれど、彼が本当に戦っているのは荒地ではなかった。悪徳封建領主の圧倒的な権力、仕事と家族のバランス、組織作りの難しさ……。開拓は順調に進んでいるように見えても、それだけでは幸せになれない。貴族になれれば自由になれるのか? 成功すれば人生は満たされるのか?
最初は「開拓を成功させて貴族になれば報われる」という話かと思った。でも、残念ながらそうはならない。
目標を達成しても幸せになれないことは往々にしてあるのだ。というか、この主人公は目標を全て達成したけれど、それ以外は空虚な人物でもある。
しかし、ラストの彼の表情には、「目標を達成することだけが人生じゃない」と気づいた人の姿があった。それはまるで、長年「戦う」ことを生きがいにしてきた企業戦士が、ようやく別の価値を見つける瞬間のようだった。
目標達成への努力による自己実現的な価値観の限界、封建社会の理不尽な現代にも通じる権力構造。美しく、見やすい映画だけど、その奥には意外なほど多くのものが詰まっていた。観終わった後も、しばらく考え続けたくなる作品だった。
タイトルなし(ネタバレ)
18世紀のデンマーク。
国土の多くを占めるユトランド半島は荒地だった。
救貧院に身を寄せる退役軍人のルドヴィ・ケーレン大尉(マッツ・ミケルセン)は、王領地の荒地開拓を申し出る。
資金は軍人年金。
開拓の暁には貴族の称号が欲しい、と。
それは、貴族の私生児として生まれた自身の出自、その汚名返上だった・・・
といったところからはじまる文芸映画。
原題の「Bastarden」は「私生児」の意。
彼の名誉を賭けた後半生の物語。
ケーレンが開拓に着手した土地は王領地であるが、近隣の領主デ・シンケル(シモン・ベンネビヤーグ)は、自分の土地と言って譲らず、悪質な嫌がらせを仕掛けてくる。
デ・シンケルは、元々のシンケルの苗字に箔をつけるために自ら「デ」をつけたぐらいの輩。
ケーレンは、シンケルの元から逃亡した小作人夫婦を雇い、また森で暮らす流浪民を雇い、開拓を続けるが、するうち、逃亡小作人夫婦の夫はシンケルに捕らえられて、文字どおり煮え湯を浴びせかけられて殺されてしまう。
流浪民たちもシンケルの企てで去り、ケーレンのもとに残ったのは、逃亡小作人の妻アン・バーバラ(アマンダ・コリン)と、黒い肌から周囲から忌み嫌われる少女アンマイ・ムス(メリナ・ハグバーグ)だけになる。
ケーレンは、シンケルの従姉妹エデル(クリスティン・クヤトゥ・ソープ)から思いを寄せられるが・・・
と展開する。
悠揚とした語り口で、前半はややもたついた印象があるが、ケーレンをはじめ清濁ある人物造形が物語への深みを生んでいる。
強そうだから強い、弱そうだから弱い、という訳ではない人物造形。
ケーレンも、ある種の妥協も引き受ける。
このあたりは、演じる側の力量・魅力も試されるわけで、マッツ・ミケルセンの演じっぷりは堂々としている。
ただし、敵役シンケルやその側近がややステレオタイプか。
これは俳優に魅力がないのか演出が悪いのかはわからず。
登場する女性たちはそれぞれ魅力的。
気丈夫なアン・バーバラはわかりやすい人物像だが、シンケルの従姉妹エデルの役どころはやや複雑。
エデルの出番はもう少し多くてもよかったかも。
物語的には、終盤、着地点が予想出来ず、かなりの面白さ。
納得の終局で、満足の一篇。
日本版タイトルは、やや甘い印象。
「荒れ野を耕すひと」ぐらいでよかったように思えるが、それだと商売にならないかも。
トーマス・ハーディ小説の映画化『テス』『日蔭のふたり』『めぐり逢う大地』が好きなひとは必見です。
執念の開拓
事実に基づいた小説とのことだから、創作も多々あるのだろうけど、なかなかに壮絶。
そもそも誰も成功しなかった開拓なのに、何故そこまで執着するのか理解できん。
お仕置きショーのつもりが、周りをドン引きさせたところで諦めればいいものを、広げた風呂敷を畳めないのか、映画のヒールとしては申し分ない活躍ぶり。
シンケルはザマァな最期を迎える訳だけど『パリタクシー』同様、陵辱された男へ最大の復讐を遂げるアン・バーバラの表情がたまらなくカッコいい。
そして側近の“まぁそうなるわな"とでも言いたげな呆れ顔が滑稽。
アンマイ・ムスの扱いに少し腹が立つも、まあ理解できないわけでもない。
最後は分かりやすく出来すぎな回収かなぁ。
他の終わり方は無いっちゃ無い。
幸せとは何であるかを問われる映画
素晴らしい映画です。
鑑賞後もカラダが震える。
展開のテンポがいいので、2時間とはとても思えないほど内容が濃い。
しかも、心の揺さぶられる回数が半端ない。
不安と安心が常に繰り返される。
安心がとても短い。
そして、悪役がどこまでも悪役。
権力を悪用しまくって弱者をどこまでも追い込んでいく。
この時代は権力が全て。
人権など関係ない。
そんな間違った世の中を見事に開拓していく主人公。土地だけではなく、権力の間違った方向までも。そして彼は初志貫徹する、軸のブレない男。しかし、非常に心が温かい正義感に溢れた人間だ。だから、話が進むに連れて、彼を応援したくなる。常に無理難題が降り注ぐのを見事に切り抜ける。
人生は全てのものが手に入らないことをこの映画は伝えてくれる。
ハッピーエンドの映画は全てが手に入るような映画が多いが。
たくさんの大切なものから、1番大切なものだけを守る。それは欲や名誉ではない。このタイトルが全てを意味している。
場面の展開もよく考えられている。
こんなに完成度が高い作品はなかなか巡り会えないだろう。
トップの画像がおっさんの写真だけだから興味が削がれて、最初の仕分けで対象外として撥ねられてしまうんだろうか(笑)
本当にもう一度観たい秀作である。
人を失い愛を知る
この映画の日本語タイトルは嫌いではない…
この物語りの主人公は私生児として生まれ育ったケーレン。彼は彼自身のアイデンティティを証明する為(ここでは貴族の称号を獲る事)、只々猪突猛進となって不毛と言われた大地を耕す事を目指す。それはある意味、彼自身が自分に課した呪縛であり生きる糧なのである。その過程で擬似家族を体験し人としての温かみを初めて知る。しかし移住民の差別で我が子同然であったアンマイを手放した事でバーバラも離れて行く。そして悪徳貴族のシンケルに捕らえられる。一方バーバラはシンケルによって自分の夫を殺された恨みもありシンケルを殺害し投獄される。この助けがありケーレンは解放される。その後ケーレンは荒地開拓の功績が認められ男爵の称号を得るが、その家には誰も居なくなり…その寂しさからケーレンは食事中ひとり涙ぐむ。。愛を知った瞬間だ‼︎
18世紀中頃のデンマークの荒地を開拓した人物の姿を描いたヒューマンドラマ。開拓者の話に貴族社会の実態や民間信仰の話が加わり、重厚さを感じる作品でした。良作。
この作品の紹介を読んで、開拓者の話と知り内容が気になりま
した。デンマークの作品う観た記憶が余り無いので、その意味
でも興味あり。・_・です。
(デンマークと他国の合作品は観たことあるかも)
そんな訳で鑑賞です。
舞台は18世紀中頃のデンマーク。
開拓不可能と言われ続けていたユトランド半島の荒れ地。
そこを開拓した一人の男の人生を描いたドラマです。
骨太のヒューマンドラマ。
主人公の名はケーレン。年齢不詳。退役軍人。
庭師から軍人になり、25年を経て大尉になった。
身分も財産も無いこの男、開拓に成功したあかつきには貴族の
称号を手にするのが夢らしい。
経歴を考えれば、そこそこの年齢と思われる。
地方領主が使用人に手を出して生まれた私生児。家族なし。
庭師をやっていた経験から、土壌の知識があるようだ。
知識はあれど、とにかく土地が悪い。水が無く岩だらけ。
広大な荒れ地の中を探し回り、水分を含む土地を探しだす。
家を建てなければ。
畑を開墾しなければ。
何をするにも、働き手が必要だ。
教会の神父が、 ” 良い働き手がいる " という。
一緒に行ってみれば、若い男女の夫婦。
…彼らは奉公先を逃げ出した使用人だった。
男の名は…(あれ? CAST一覧に記載がない…)
女の名は、アン・バーバラ。
ワケありだが仕方ない。連れて帰る。
ギリギリ食いつなぎながら、開拓を続ける。
小さな女の子を囮にした盗賊に襲われたが銃で撃退。@△@
この少女、その後何度もニワトリなどを盗みにやってくる
のだが、雇っている者たちは捕まえようとしない。
” なぜ捕まえない? ”
そう問うと、こんな答えが。
” あの娘は南の生まれで呪われている。 関わりたくない”
” … ”
結局はケーレンが捕まえ、少女の住む村に連れて行く。
少女の名は、アンマイ・ムス。
村人たちと交渉。彼女と共に、村の住人たちを開拓要員とし
て連れて帰る。働き手の数は次第に増えていく。
ある日、領主の手の者が逃亡した使用人を探してやってきた。
居ないと答える。と、
” この土地の開拓には領主との契約が必要 ”
と、言い出す。どうやら
王の所有する土地をかすめ取ろうとしているらしい。
厳しい自然環境と戦うケーレンにとって、領主も敵となった。
この領主、「虚栄心の鎧」に「狂気の剣」を装備している。
思い通りにならない事が起きると、暴力をふるう。
分別の無い子供が権力を持つことの危うさ。その典型だ。
直接または間接的に、何人の命が奪われたことか…。@▲@;;
と、まあ
荒れ地との戦いに加えて、ケーレンは理不尽な領主や権威主義の
国の役人(貴族たち)とも戦わねばなりませんでした。
その戦う姿を、荘厳に・骨太に、かつ精彩に描いた物語でした。
事実に基づくお話かと思えば、ほぼ創作らしいです。 ・△・エッ
ちょっとびっくり。(ケーレンは実在の人物のようですが)
お話の骨格が良く練られているためか、リアリティ感じました。
「創作だが小説より奇なり」
そんな歴史大作でした。
観て良かった。満足です。・_・
そういえば
この領主の従姉妹で、政略結婚を迫られている娘(エレル)も
存在感ありでした。(女性の連携、見事です)@△@
◇あれこれ
■18世紀の半ばというと
日本なら、江戸時代の中期。
八代将軍吉宗の時代のあとから田沼意次の時代の前くらいまで?
年表を見ても余り目立った出来事は見当たらなかった気が。
当時鎖国中の日本。交易していた国はオランダですが、
デンマークはオランダより北東に位置します。
分類としては北欧に含まれるのでしょうか?
■デンマークといえば
有名な人としては、童話作家のアンデルセンでしょうか。
というか、それくらいしか知らないのですが…。
コペンハーゲン空港には、昔は童話がモチーフの飾りがあった
ような気がします。やはり、国民的作家なのかも。
(今もあるのかは不明です)
■デンマークの貴族社会
有力領主に劣悪な自然に貴族階級の保身と傲慢と。
日本の貴族と変わらない感じがしました。
退役した軍人に年金が支給される制度が18世紀からあったのが
西洋の国らしいなと感じました。(良く知りませんが@_@;;)
※武士の社会って、退職金支給してないですよね…?
■タタール人
アンマイがそう呼ばれ、仲間うちで爪弾きされていました。
また「南からきた」とか「呪われている」とも…。 ・△・;;
タタール人とはどの辺りの人を指すのか、気になり調べてみたら
「達靼(だったん)人」 聞いたコトある気が…
「モンゴル高原の遊牧民」 そうなんだ
モンゴル帝国のヨーロッパ遠征に同行 侵略者一味だから悪魔?
デンマークからみて南では無いような… はて。
アンマイの肌の色からは、中東(アラブ系?)のようにも思えた
のですが、もっと色々な事情等があるのかもしれません。
(少し調べてみただけで脳内キャパオーバーしました )
■痔のひと(…名前不明)
実は重要人物。・_・;
国とケーレンとの間を、まめに仲介してくれた人です。
単なるお笑い担当の人物と思ってゴメンナサイ。
この人のような人の記録のおかげで、今の人びとがケーレン
の存在を知っているのかなぁ と思います。陰の功労者。
※古今東西、人類を悩ませてきた病気ですよね♪(なぜ音符?)
■開拓といえば
日本の同時期だと印旛沼。 …江戸時代に何回も頓挫。
大自然との戦いの蝦夷地。 …明治期に大量の移住者。
個人で開拓する話は余り聞いたことが無い気がしますが
国から見放された土地だったこともあって、個人での開拓も
できたということなのでしょうか。
■パンフレット
買おうかどうしようか迷いながら売店に。
値段を確認して目が点に。予想の1.5倍。 うわ …@-@
どんな内容なんだろう と、 思わず買ってしまいました。
文章が多く、読みごたえあります。
…ありすぎて、まだ読み切っておりません。 頑張ろう @-@
(パンフレットの文字が小さくて、目がすぐに疲れるのです…)
◇最後に
「愛を耕すひと」のタイトルに寄せて・-・
耕したのは、荒れ地
植えたのは、じゃがいも
実ったのは、家族の絆 と 愛
そんなことを感じさせる邦題なのかも と。
彼の開拓した土地には、その後また新たな開拓者がやってきては
開拓地が広がっていったのではないか
そうだと良いなと想像をしたり ・_・シテマス
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
邦題のイメージとは違うかも
一部にショッキングなシーンもありますし、「愛を耕すひと」というイメージで観るとこんなはずじゃなかったと思う人もいるかもしれません。
歴史好きな人、人間ドラマ好きな人、北欧好きな人、色々楽しめると思います。
ケーレンとデ・シンケルって真逆の存在のようで、本人がこだわってる部分は重なってるよなと感じました。
それが原題の「Bastarden」に繋がるのでしょうか。
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