「音楽映画の主人公として非常に新鮮なタレントの持ち主。」フローラとマックス 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
音楽映画の主人公として非常に新鮮なタレントの持ち主。
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ジョン・カーニーの安心印の音楽映画、と言いたいが、正直『ONCEダブリンの街角で』がピークで、その後は魅了もあるが精彩を欠いているような印象はあった。本作も、手放しで傑作だと感じているわけはないが、音楽映画としての主人公像が新鮮。素行の悪いシングルマザーが、素行の悪い息子に拾ったギターをプレゼントしようとするがスルーされて、ネットで見つけたイケメンオンラインギター講師にギターを習おうとする、という、いろいろどうしようもない導入がなんだかとてもいい。イヴ・ヒューソンのダルそうだけど心の奥になにかありそうな持ち味も本作ではピッタリでした。そしてこの主人公がギターの腕前を上げてミュージシャンとしての才能を開花させていく……みたいなありきたりな展開でないのもいい。主人公はあくまでも素人なんだけど、他人が作った音楽のいいところを発見し、どうすればより磨かれるのかを言い当てるプロデューサー気質なのだ。プロデューサーの音楽活動って物語になりづらいのか、あまり音楽映画の中心に来ることは少ない気がするのだが、これは間違いなく新味のある気持ちいい音楽映画でした。
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