オッペンハイマーのレビュー・感想・評価
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原爆開発者とスパイ
J・ロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィ)と、その妻キティことキャサリン・オッペンハイマー(エミリー・プラント)、それとロバートの元カノであるジーン・タトロック(フローレンス・ピュー)の三人は実在した人物で、原爆関係の実話をクリストファーノーラン監督が映画化したもの。視聴前にそれくらいの情報だけで挑みました。
実際、観てみると登場人物の数はかなり多いのですが、しっかり覚えていなくてもストーリーを楽しむことができました。きっと詳しく知っていたら、もっと興奮できるかもしれません。
回想シーンが沢山ありますが、演出が上手くて混乱することもなく、分かりやすくて良かったです。
実験のシーンは臨場感があったし、アインシュタインの登場シーンも印象に残ります。
当時の政府の深い闇について考えさせられました。スパイが存在していて、登場人物が騙されていたことが描かれています。
日本の原爆についてどのような見解を持っていたとしても、J・ロバート・オッペンハイマー視点で描かれているので、整合性が取れるように作られていました。
アメリカ政府が技術力を世界に誇りたいがために捏造した(大日本帝国において仁科博士が完成させた原爆を地上起爆させたという陰謀)と考えて視聴したとしても、公式発表の通りアメリカで完成した原爆を日本に運んで空中爆発させたことを疑わずに観たとしても楽しめる内容になっていて、見事な脚本だと思います。
戦中・戦後の当時の雰囲気や人々の会話・表情も見ごたえがあり、キリアン・マーフィの圧倒的な演技力に魅せられました。
恐ろしく難解、かつハイスピードな社会派
ここまでスピード感のある社会派の作品を観たことがない。
恐ろしいスピードで描かれるオッペンハイマーの原爆製作までの道程と、その後の顛末。
大前提として、オッペンハイマーが原爆製作後に罪悪感を抱えていた、という心象があって成立している。
原爆製作は科学者として、他国の先を行きたい、と思って突き進んだ結果であると。
先を見る、ということができていなかった彼は、原爆の成果から水爆は作ってはいけないと判断していたと。
ドイツやソ連といった明確な敵国が存在していたからこその軍拡だが、日本はそこにたまたまいた、厄介な島国に過ぎない。
原爆を落とさずして日本に勝利することはできたのか。
もちろん、勝利はできた。だが米兵の犠牲は増えただろう。圧倒的な軍事力を見せつけるだけなら、近海に落とした上で降伏を促す術もあったのでは、と考えるが、そこは戦争。しっかりと犠牲を産んで、事を納めたわけだ。
後半の裁判のような展開も、何となく分かるが、ほぼ分からない。
役者の芝居と音楽で、引っ張っているにすぎない。この辺りは、ソーシャルネットワークの展開にも似ており、スピード感のある編集で飽きさせずに保たせている。
ロバートダウニーJrが素晴らしいが、なぜ彼を貶めるような流れになってしまったのか、がイマイチ伝わりきらず、ストーリーとしては半煮えな印象。
総じて素晴らしいデキだし、傑作であることに間違いないが、反核ではなく、独りの男の苦悩を描いた作品として描かれていることに、日本人は物足りなさを感じてしまうのだろう。
プロジェクトXではないので、フィクションとして描かれる史実に、足りない描写があるとすればそれは、意図に対して不必要だったからにすぎない。
ちゃんと公開し、正当な広告がうてていれば、日本ではまた違った流れができていたに違いない。
長いが、あっという間。是非多くの日本人に観ていただきたい。何ならアメリカ人と一緒に観て意見交換するのも、楽しいだろうな。
長い。ヒロシマ、ナガサキは?
昨年映画館で見損ねた作品。話が話であるだけにまあ仕方ないのかもしれないがやはり3時間は長い。そして、日本人としては一番気になる所である広島、長崎の件に関してはほぼスルーだったのには驚いた。タイトル通りロバート・オッペンハイマーの一生を描いた作品で、それ以上のものではない。予習せずに観た僕にも問題があったが、カラーの場面とモノクロの場面の違いがどこから来ているのかを把握するのに1時間くらいかかった。ある意味狂言回しと言うべきストローズを見ていると、本当に男の嫉妬というのは醜いとしか言いようがない。マット・ディモンとか、フローレンス・ピューなど贅沢なキャスティング。
核兵器の使用が叫ばれる現代こそ
ナチスが原爆を作っているとの情報で、アメリカの威信を掛けて原爆を作る。
しかし、ナチスは降参。
作り上がった原爆を日本に落とす。
原爆の脅威を見せつける事でその恐ろしさを示めす為。
やがて原爆の父と呼ばれる事になる。
やがて水爆が開発され、その脅威に核兵器の反対の立場を取る。
大統領とも閲覧し、核兵器の反対を述べるも「小心者!」と大統領に叱責される。
やがて赤狩りの様な尋問委員会に糾弾されるが自分を嵌めた委員を同僚の科学者が彼を救う。
所々でアインシュタイン博士が登場し、「研究が理解出来なかった民衆の為に君は賞を私に与えた。これはわたしにではなく、理解出来ない大衆の為に賞を与えた」等、コメントをくれる。
人の成功は時によって、その時代によって多角的に評価されるものだと思った。
原爆の父と祭り上げられても、その脅威で反対の立場を取れば評価は変わる。
ウクライナ侵攻でロシアが核を脅しに使っている昨今。日本の反核団体がノーベル平和賞を受賞した。そんな時代に必要な映画だと思う。
展開についていけず
事実を描いている点が評価のポイントなの?ヒューマンドラマが弱かったです。
これが評価されている時点で、アメリカの歴史教養や科学史、戦争の振り返りが知識階級にすら不十分なんだろうなと感じました。淡々と伝記と歴史を描いている点について、この作品を評価する理由が「知らなかったことを知らせた」だけにつきるなら、こんなにつまらない評価理由はないです。
日本の公開を遅らせたような配慮についても、いや、今更この程度のことで刺激も批判もありようがないだろう程度です。
当時の軍の汚さ、共産主義がどう科学者に影響を与えたかなど裏を描いたところは面白いですが、それ以上の何かがあるわけではないです。
興味を持ったのが家族・友人関係や、共産主義者の女性との関係とか奥さんとのヒューマンドラマですが、単なる映画をエンタメとして成立させるための刺激で終わってしまいました。結局トルーマンやアメリカの覇権主義をどう評価しているかを入れていないし。漠然市民に原爆を使った何かがある程度です。
この映画を3時間近く見て、大量破壊兵器を開発した人の苦悩というありきたりの視点だし、科学者の変わり者の性質とか、軍や国家の機密は非人間的だ、核兵器は怖いねとか、核兵器を開発した人は病むよねとかそういうのを描きたいの?としか思えませんでした。
それぞれの演技や当時の再現度などは素晴らしいと思いますが、それは映画としての評価の一部です。
チェーンリアクション
3時間は長くて登場人物の立場が分からなくなる場面もあったので全てを理解できたとは思わない。オッペンハイマーは求められて、米国から求められた結果を残した。オッペンハイマーだけが非難されるべきではないし、原爆投下が戦争を止めたとも思わない。ましてや日本の負けはほぼ決まっていた。ニアゼロが現実と化していた場合は地球は滅んでいたが、実行に移してしまうものなんだなとは思った。核兵器開発競争のチェーンリアクションの引金を引いてしまったのは事実。止めることができた可能性があるのも事実。自分の利益や所属する国家の利益だけを求めることは間違っている。責任や影響力が大きい立場の人間ほど大きい十字架を背負わされてしまうことは悲劇だし、何者でもなくてよかったと思ってしまった。人間は私怨にとらわれたり、特定の利益だけを考えたりして行動してはならない。一つの判断による社会全体への影響を精査して決断を下さなければならない。
監督の意図を知りたい
天才って不幸
自分が理数系が苦手なので、理数系の人に憧れがある。理数系の天才たちのエピソードとか大好きだ。
理数系の天才たちは皆、一般社会に溶け込むことができない超がつく変人揃いで、素っ頓狂な天然エピソードからとんでもない超絶頭脳エピソードまで同じ人間とはとても思えないような面白エピソードをたくさん持っていてワクワクさせてくれる。
しかしながらそんな天才たちには共通点が一つある。
それは、みんな頭が良すぎるが故に栄光を手にするが、同時にとてつもない悲劇にも見舞われるということだ。
興味のある方は数学者の藤原正彦氏が著した『天才の栄光と挫折 数学者列伝』などお読みいただきたい。メチャクチャ面白い。
この映画の原作も『オッペンハイマー 「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇』である。
これは、一人の天才が国家に目をつけられて
世界の運命を変えるような巨大プロジェクトに無理やり引きずり込まれて、いったんは栄光を手にするが、その後とてつもない重荷を抱えて一生苦しむ羽目になるという話である。
広島長崎の悲劇を知っている我々日本人にとっては原爆の非人道性をもっとはっきり描いてほしいという思いはやっぱりあるし、この映画に賛否両論さまざまな意見があるのは当然だと思う。
ただこの映画はアメリカの日本への原爆使用を正当化したり擁護したり弁解したりするような、そういう意図を以て作られた映画ではない。
この映画は国境線という見えない線を引いた時から国家というものが本質的に孕んでいる狂気を描いている。
そして、たとえ国が狂気に走った場合であっても多くの人間は自分の国を愛するものであり、その愛国心や同胞愛は無下に否定できるようなものではないのである。
だが、その愛国心や同胞愛の先に待ち受けているのが戦争であり虐殺だったとき、我々はどうすればいいのか。
答えは容易には出ない。
オッペンハイマーはただ立ち尽くしている。
『ダークナイト』でガツンとやられて以来クリストファー・ノーランの作品はチェックし続けているが、やっぱりノーランは一筋縄ではいかない監督である。
原爆を完成させるまでがものすごくスリリングなのだが、その後の展開の方がずっとスリリングだった。
終盤のキリアン・マーフィーとロバート・ダウニー・Jr.の演技は特筆に値する。
ただし、ノーラン監督は『メメント』や『TENET テネット』などを観れば分かるが観客と知的ゲームをやりたがるきらいがあり、今回も時間軸を交差させてこちらをケムに巻いて鼻面を引きずり回そうとするのでそこは要注意である(笑)。
原爆はなぜ造られたのか
昨年、劇場で鑑賞。どのように原爆が開発されたのか、その背景や科学者たちのエゴイズムなど、学校や資料館では知ることができなかった。エロシーンを削って、中高生にも観てもらいたい作品。オッペンハイマーが被爆者と面会していたことも取り入れてほしかった。
罪を犯しておいて、その結果に同情しろと?
いろんな意味で難解な作品、しかしあらゆる人に観て欲しい作品だ。
誰か(他国)が造ってしまうかもしれないなら、自分達がソレをしよう!、……解らないでは無いが、ソレがどんな作用を引き起こして、どんな結果を招く事に成るのかを充分に理解し尽くした上での行動なのか?
歴史上の出来事を批判しても仕方ないけど、そこまでして造りたかったのか?造らなきゃならなかったのか?がズシリと遺された。
後半の審議会で叩かれる事で、殺戮兵器作成を濁された感も少し有った……。
融通の効かない乏しい思考の哀しさも感じた。
共産主義の排除具合も当時は正当だったのだろう。
時系列や登場人物の関係性を把握しきれないまま進んで行くのも、しんどかった。
それでもやっぱり、いろんな人に観て欲しいと感じるのは、唯一の被爆国民だからなのかな?
予想と違う凄さ
究極の再現VTR
2度目
人類が火薬を手に入れたことで騎士階級のあり方が大きく変わったようにオッペンハイマーも世界の仕組みを大きく変えた。
火薬と並ぶインパクトをたった独りの人間が人類に与えた(そう評価された)ことが周りの人間や彼にどのような対価を支払わせたか精彩に描いてる。
オッペンハイマーは最終的に自分の人生をもって支払うこととなった。
1度目
オッペンハイマーの想像力、先見性を映像化している部分の解像度が兎に角高い。この映画にキューブリックを感じたのは映画の文法よりも映像としての強度を優先させているように感じたところにある。
この作品はアカデミー賞を取るべきである(実際2023年度最多受賞を成し遂げた)。正確にはアメリカのアカデミー賞を取るべきである。素晴らしい傑作であるからではなくこの映画がアメリカ人のフロンティアスピリッツが払うべき代償を強く示唆しているからである。
ノーラン監督はアメリカで唯一の’’大衆を相手に超大作を撮る現役の映画作家’’である。その彼の一つの重要な通過点に今作はなった。しかし彼はまだゴールにはたどり着いていない。僕はそう断言できる。これほどの傑作を創って尚まだ上があるといえるのが彼の恐ろしいところである。
要するに想像力が世界に与える力。
ノーランの巧妙さ
まず、本作はもちろん原爆使用を称賛してはいない。しかし、原爆製造と使用は政府の判断なのに、それをオッペンハイマーの自伝という形で描かくことで、あたかも〝科学の進歩VS倫理〟という人類の命題のようにすり替えている。巧妙に。
オッペンハイマーの科学者としての物語、社会背景、苦悩はよく描かれているし、ナチスに先を越されないようにドイツから亡命した物理学者たちとロスアラモスに街を作る描写なんか、さすがに面白かった。
だが、観ているうちに、わざわざストローズとのややこしい確執を軸にしているのは、ひょっとして投下したアメリカ政府への言及を避けるためではないかとすら思った。
広島長崎についても、オッペンハイマーの幻想、科学者の罪悪感で終始。いやいや、科学者に罪悪感を背負わせる前に、映画監督なら時の政府をきちんと検証してよ。
311の福島原発事故のときにも思った。追及するべきは東電や政府の責任で、原発開発者に責任を負わせるのは間違っている。
結局ノーランもアメリカで炎上することを恐れて保身に走ったか。それとも、原爆投下を〝あれは仕方なかった〟と考えている一人なのか。ノーランの頭の良さに腹が立つ。
不倫相手が死んだときに妻が言った。
「罪を犯しておいてその結果に同情しろと?」
科学者の苦悩に同情するのもいいけど、政治判断を掘り下げないのは片手落ち。
太陽を創り出した男たち・・・
この時代のひとつの解釈として意味がある
日本への原爆投下の描写がないとか、十分だとか、いろんな意見を読みました。
でも中身がどうであれ、受け取り手がどう思おうが、この映画がこの時代に出たことに意味があると思いました。
少なくとも、アメリカのこの時代の原爆に対する、現在の解釈のひとつの例になるんだろうと思います。
ただわたしが受け取るには、当時のアメリカの理解が足りなかった。それぞれの人物の立場も関係性もよくわからないまま見てしまいました。
その上で、オッペンハイマーがなにかしらの罰を受けたいと考えていたのは意外でした。兵器を製造したこと、核戦争の火蓋を切って落としたことに対する苦悩があったと描かれていたと思います。
ロバート・ダウニー・Jrの演技は、マーベル作品や『シャーロック・ホームズ』でしか観たことがなく、しかもこのときのアカデミー賞の授賞式しかり、不遜なキャラクターが板についているイメージでした。
こんなにそのキャラクターを抑え込んだ、普通の人間をやるんだと言ったら俳優だから当たり前ですが、勝手に感動してしまいました。後半の畳み掛けがすばらしかった。
途中、何度もしんどくなる
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