オッペンハイマーのレビュー・感想・評価
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オッペンハイマー (DolbyCinema)
有楽町 丸の内ピカデリーでクリフトファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』(DolbyCinema)鑑賞。原爆開発物語というより、赤狩りと権力闘争の映画だった。複雑な思いのする場面はいろいろあるけれども、"ピカ"が先に来て"ドン"が後に来るという表現の迫力はさすがノーラン&ホイテマ撮監だった。#21
人物中心の展開と描写
人類初の核エネルギーの利用は偉業のはずだが、影も大きい。その影をきちんと描いた映画だけど、3時間は長い
オッペンハイマーは、物理の天才たちを集め、巨額を投入して設備を整え、世界で初めてのことを成し遂げたということだろう。でも、それをじゃまするいろいろな出来事があり、偉業を達成したあとも足を引っ張られたりして苦労したのだと、伝記を読むように感心した。
「プロメテウス」という比喩のように、宿命を受け止め、逃げたりしない姿勢にも感心した。
世界初の核エネルギーを利用した爆発の場面は、緊迫感があり、映像もリアルでよくできていると思った。「計算上では、これくらいの威力」なので、30㎞ほど離れたところから観測する、一人ひとりに黒いガラスを渡す、などは史実なのだろう。ポツダム会議の前という日程で失敗できない状況の中、前夜の嵐も緊張を高めていた。よくできたシーンだと思う。
日本の広島、長崎の被害を具体的に描いてはいない。そのことは、映画のテーマがそこじゃないのでしかたないと思う。むしろ、被害者の多さを嘆く場面もあり、スルーしていないことを評価したい。
原爆を使った責任と開発した責任とは別であるとしつつ、使わないと日本が降伏しそうもないことや、ナチスやソ連への対抗という意義との、政治的な『葛藤』が描かれていて、良心的だと思った。
オッペンハイマーを狭い会議室で尋問する場面が、映画の軸となっていて、その回想シーンで、順次出来事を説明する形式になっている。よく考えられた構成だと思うが、尋問の場面は、どうしても重苦しくなるので、映画全体に暗い印象を受けてしまった。観客もオッペンハイマーの視点で観ているので、自分が責められている感じがしてしまう。
また、映画全体が3時間と長く、冗長に感じた。多くのエピソードを盛り込み過ぎたのではないか。映画と伝記は違うのだから、削った方が良いエピソードがいくつかあるような気がする。
オッペンハイマーの主観を徹底的に。
この作品は、公開当時から原爆がどれほどの被害をもたらしたのかを直接的に描いていないと批判されてきた。これを観てそういう気持ちになることも分からないではない。しかし、おそらくノーランの関心は、客観的に原爆がどのような影響をもたらしたのかではなく、開発者オッペンハイマーが何を考え何を思ったかであって、ここにとことん焦点を絞っている。だから、反原爆のためにこの作品を撮ってはいない。だけれども、開発者側の想いを丁寧に辿っておくことは、結果的に反原発に貢献すると私個人は思う。何故なら、同じことを繰り返さないためには、こういう振り返りは必要不可欠だからだ。
この作品は、ある意味では科学の暴走を描いているのだが、この作品を観てみると、科学者単体ではこの暴走は起こらない…むしろ政治の暴走が呼び水になったり、火に油を注いだのではないのだろうかと、そんな風に思わないでいられなかった。ひとりの科学者として、オッペンハイマーが原爆の開発に貢献したことは間違いないけれども、彼が生きた時代と歴史、その時の政治に大きく振り回されたことも、また悲劇を生んだ大きな要素であっただろうと。
そして、ノーラン監督の撮り方にも言及しておきたい。この監督は、初期の頃からこの傾向が強いが、物語を時系列に描く気が乏しい(もちろん、全ての作品でではない)。単に回想シーンを挿入するとか、そんなレベルでなく、「時間」の取り扱い方が実に複雑で(この傾向は『テネット』で極まった)、行きつ戻りつするかのように重層的かつ循環的に物語ろうとする。そして、これが実に効果的に作品の核心的なテーマを浮かび上がらせる。やはり特異な監督であることは間違いない。
感情移入しました
少し予習しておいた方がより楽しめる
3時間という長尺でも全く飽きずに鑑賞できました。
ただ、複数の時系列が入り乱れる構成を理解するのに少し時間を要してしまい、序盤の理解が不充分になってしまいました…。また、登場人物も多くて名前と顔とポジションが消化しきれず。
上記2点については若干の予習をしてからの鑑賞がお勧めかもしれません。
あとは、歴史が得意じゃない人(自分がそう…)は第二次世界大戦前後の大まかな世界情勢は復習しておくと年号が出てきたときに直感的に時代背景が補完されてベターな気がしました。
原爆の実験シーンは、さすがに日本人としてアメリカ軍に対する憤りと憎しみの感情が沸き上がるのを禁じ得なかったですが、この映画の主題は核兵器の是非ではなく、一人の天才科学者の輝かしい成功とその陰にある苦悩であると解釈しました。
だとすると、もう少し苦悩する部分に尺を割いてもよかったのではないかという気もするのです。
社会派作品
アメリカから見た原爆投下。歴史を学ぶ教材として良い映画
ノーラン節は健在
映像作品としての演出は流石のノーラン
大前提として面白かったか面白くなかったかでキッパリ別れるタイプの映画。
ノーラン映画を知っている人はわかると思いますが、この作品でも数タイムラインに分かれいる。
オッペンハイマーの聴聞会(1954)
ストローズの公聴会(1959)
オッペンハイマーの物語(1925〜1945?)
他にもあるがメインはこの3つ。
ノーラン独特の手法でダンケルクなんかはこれに似てたんじゃないかな。
この手法がうまくラストでまとまる。
まとまったかどうかも、観る人に委ねられている感じが最高に意地悪。
この手法のせいでノーラン映画は時間軸がわからないや人物の関係性過去や未来がどこで一致するのかとにかく厄介。
好きな人には刺さるが的が狭い
が、今作はそこまでは難解ではない。
頭から完結まで見れば『なるほどね』と終われる映画。
それよりも今回のテーマ。
オッペンハイマーと言えば。。
日本人には嫌でも忘れることはできない『原爆』の話を避けては通れない。
かなり攻めた題材だが。
オッペンハイマーとはどんな人物か。
名前は知っているが、、と言った日本人が大半だろう。
それ自体を映画の脚色ありきでも知れて良かったと思う。
造ったのはロスアラモスのチームだが
落としたのはトルーマン大統領。
ここは重要。
アメリカにとっては平和の為の善であり
日本にとってはただの戦争犯罪大量虐殺。
互いに言い分はあると思うが、ここは我々日本人としてはパールハーバーの攻撃を踏まえたとしても、やり過ぎ。
普通にありえない。
既に負けは確定していた。
本土の決戦になれば更なる死傷者が出ると予測されたが、日本は本当に降伏しないつもりだったのかは不明だしアメリカ側のイメージでしかない。
日本と言うより完全にロシアと戦っている。
その踏み台にされたのが日本。
なんとも考えさせられる内容だった。
映画館にて音響が地響きのようにリアルに感じる様は衝撃的だった。
自分が日本人である事を強く感じました
オッペンハイマーの映画
唐突に終わる
時間軸が飛び飛び、場面がコロコロ変わる、セリフの中の名前が誰を指してるのか分からない。で、1時間くらい訳分からん状態で進行する。
原爆の父と呼ばれた男が、権威を失墜し、名誉を回復するまでの個人的な物語といったところか。だいそれた事を成し遂げた人なのだが、非常に狭い世界で生きている。原爆の功績を持ち上げられるが、自分の下らない一言で恨みを買い、高みから転がり落ちる。かと言って廃人同様になるわけではなく、大学教授のポストにはついている。宇宙のパワーを利用した原爆、星の誕生と終焉の映像と諮問委員会に掛けられる現実の対比。
正直原爆を落とされた側からすれば、権威を失墜しようが名誉を回復しようがどうでも良い事だと思った。
「原爆の父」のその後
伝記『オッペンハイマー 「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇』を下にした作品。
映画公開時、オッペンハイマーは原爆の描き方、そして、同時期に公開された映画『バービー』と融合させた描写の「バーベンハイマー」が生まれたりして、大批判が巻き起こりました。特に日本では、原爆をちゃかしている、被爆者への配慮が足りないなどの批判が巻き起こりました。
でもなぁ、作品をみて見て、それらの批判は『なんだかな』と思いますね。そもそも、この作品は、原爆開発に携わったオッペンハイマーを描いた作品なんですよね。被爆者の悲劇を軽視する意図はありませんが、殊更その点について固執するのは、この作品で描いていることをあまり理解していないかなと思います。
それよりなにより、オッペンハイマーが、「原爆の父」としていいように使われて持ち上げられた後は、いろんなしがらみや政治に巻き込まれて非難にさらされていたという事を知りました。もっとも、対外的には、公職追放後も一流の研究者として活躍していたようですが。原爆開発後に、そう言うオッペンハイマーの“その後”を描いた時間が、1時間ほど残っているので、実はそこに焦点を当てたかったのではないかと思いました。
百聞は一見に如かず。
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