劇場公開日 2024年3月29日

「戦争の不安が高まっている今だからこそ見てほしい」オッペンハイマー AZUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 戦争の不安が高まっている今だからこそ見てほしい

2025年8月14日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

明日は終戦記念日ということで鑑賞。
本当に原子爆弾を投下しなければ第二次世界大戦は終わらなかったのか。私は小学生の頃からずっと考え続けている。

様々なドキュメンタリーや戦争映画を見てきた。けれどいまだに答えは見つかっていない。そしてこの作品を見終わった今も、答えは出ないでいる。
ただ私たちはこの経験から、原爆を落とさずに終戦させる手立ては本当になかったのかということを、今現在も戦争をしている国があるからこそ、考え続けなければいけないと思っている。

オッペンハイマーのような科学者たちが、人類の進歩や発展に大いに貢献してくれてきたことはわかっているし、彼らがいなければ今のような便利な世の中になっていない。
けれど、その類まれなる知識や頭脳は、時に大量殺戮兵器を産み、一瞬にして地獄と化す力を生み出せることも事実だ。

原爆実験が成功し喜ぶ姿、広島に落とされたと聞いて喜ぶ姿、原爆の被害を知っている日本人にとっては、言い表せない不快感と嫌悪感が込み上げてくるシーンで、思わず悔し涙が出そうになった。

私は過去のノーラン作品は正直あまり刺さらなかったけれど、知識がある程度もっていたからか、過去一見やすかった。
ただ、ここらへんの歴史が疎い方にとっては、少々難しくわかりづらい内容になっていたと思う。ここが賛否わかれるところだなと思った。

また実在の人物に対して、第三者が本人の知らないところで原爆に対しての解釈を述べるのは、アメリカで原爆は正しかったと思っている人の反感を買ってしまうものになるとは思うので、個人的にはもう一歩踏み込んだ彼の戦後の苦悩や内面を描いて欲しかったけれど、難しかったのだろう。
シュミレーションをはるかに越えた、実際の原爆被害者数を初めて知った時のリアクションとか見たかったな…。
この作品を見て、改めて北風と太陽の物語のように、強い武器を持てば抑止力になるという考えは諸刃の剣で甘いと感じた。

人によっては分かりづらさや難しさはあるだろうけれど、過去の歴史を振り返え、考えさせられる良作だった。

AZU
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