「アメリカ現代史のなか原爆開発者の生涯」オッペンハイマー 味澤俊治さんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカ現代史のなか原爆開発者の生涯
共産主義と人民戦線、冷戦と赤狩り。1930年代の若き原子物理学者たちも時代の流れに翻弄される。核兵器の開発は彼らに大きな力と深い苦悩を生み出す。原爆開発の父と讃えられた、その晩年の葛藤を初めて知った。原爆投下に至るアメリカとアメリカ国民のあまりにも無邪気な空気。その一方で無差別殺戮の現実。オッペンハイマーがそれを受け止めきれずにいるのは分かる。しかし、1950年代にはすでに湯川秀樹やアインシュタインらによる反核へ動きが物理学者からも始まっている。国家の軍事戦略に深く関与しすぎたための限界か。この作品を日本に持ってきた配給会社に感謝。
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