「力は感じたが、熱を感じず」オッペンハイマー pekeさんの映画レビュー(感想・評価)
力は感じたが、熱を感じず
「さすがにオスカーを獲得しただけのことはあるな」と納得させる、力のある完成度の高い作品だと思いました。
でも、セリフの量が多く、字幕を目で追っていくのが大変だった。ちょっと読書しているような気にもなりました。
当然そんな作業を3時間も集中してつづけられないので、登場人物たちの話していることが頭に入ってこない箇所がいくつもありました。
まあノーラン監督は、英語圏以外の観客のためにいちいち考慮して映画づくりをしているわけではないのだから仕方ないですが……。
それから、イメージの集積、重ね方は秀逸だと感じましたが、作品の構成をもう少しシンプルにしてもらったほうが僕のような凡人には話の流れがわかりやすかったです。でも、それだと「NHKスペシャル」みたいになっちゃいかねないな。そこが伝記映画(?)のむずかしいところでしょう。映画的な表現をしないと、わざわざ劇映画にする意味が薄れてしまいますからね。
また、本作では7割か8割以上の時間でBGMが流れている。つまり、それだけの量のBGM、音楽を使用しないと間がもたなかったのではないか。音楽と音響の力でストーリーをかなり補っているなと感じました。
あと、——というか、これがいちばん不思議だったのですが。冒頭に書いたように、本作はとても力のある作品だと思います。
でも、どういうわけか、作品から受ける「熱」というものを僕はほとんど感じませんでした。
力はじゅうぶんに感じたけれど、熱を感じなかった。何故だろう?
感情を抑えた監督の冷徹な眼差しがそうさせたのでしょうか。
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