「オッペンハイマーという人の映画」オッペンハイマー 小町さんの映画レビュー(感想・評価)
オッペンハイマーという人の映画
オッペンハイマーという人物の作品でした
原爆のひどさを思うと観る事をためらいましたが、そういう描写はなく、でも音と炎で原爆の悲惨さとこわさを想像してしまってしんどかったです
一番しんどかったのは広島に原爆投下して、足踏みして喜ぶ人達へのオッペンハイマーのスピーチのシーン
「この日を忘れない」という言葉、日本人も忘れられない日だけど全く違う想い
悲しすぎて涙が出ました
オッペンハイマーや他の物理学者の人達からしたら、広島と長崎の犠牲者数はただの数で、助かっても差別されたり、80年近く経ってもまだ原爆に苦しめられながら生きている人達もいて、そういう事を後々知ったのか、知ったとしたらどう思ったのか
オッペンハイマーは原爆投下したくて開発したのじゃなくて、物理学者としてただ純粋に成功させたくて開発したってわかるけど、どれだけの犠牲者を出すか、どれだけの人を苦しめるか、何で想像してくれなかったのかと思わずにはいられませんでした
後悔するくらいなら作らなかったら良かったのにって思ったけど、それならアメリカじゃなくても誰かが作っていたのだとは思います
免罪符みたいに「戦争を終わらせるために原爆投下した」っていうけど、開発に携わった人達の「どんな威力があるか知りたい」という興味と「他の国に力を見せつけたい」という政治家のエゴとしか思えません
原爆の犠牲者を思うとオッペンハイマーの後悔やその後の彼の不遇さとかあまりに些細な事すぎるとしか思えませんでした
その後悔も広島と長崎の犠牲者の人達への後悔じゃなくて、とんでもないものを作ってしまったという後悔のように思います
この作品を観た世界中の人達がオッペンハイマーの後悔という形で反戦映画として受け取ってくれる事を願います
ノーラン監督に豪華キャストで、3時間という長さにおののきながら観ましたが長さは全然感じませんでした
政治家ばかりではなく、良くも、悪くも科学者の「ego」についてよく考えている立派なレビューというより論文だと思います。
これからも、今持っている気持ちを大切にして下さい。