「所詮日本人は蚊帳の外」オッペンハイマー カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
所詮日本人は蚊帳の外
オッペンハイマーはマンハッタン計画の責任者だったため有名だが、プルトニウム原子爆弾の圧縮起爆原理を創案し、最も原爆の完成に貢献し、共産主義の理想に忠義を示した故にソ連に情報を流してしまったドイツ人科学者クラウス·フックスのほうが苦難に満ちたヒューマンドラマにふさわしい人物だと思う。クラウス·フックス役のクリストファー·デナムはそっくりだった。しかし、最後のほうでちょっと出ただけ。丸眼鏡の顔も丸い色白の人。パンフレットには掲載なし。残念。
そりゃ、キリアン・マーフィはいい男だし、興行的にも見込める。おいらもキリアン・マーフィー目当てで観たもの。実際のオッペンハイマーもキリアン・マーフィーに負けず劣らずの色気があるいい男でキャスティングは申し分ない。オッペンハイマーの父親はユダヤ系ドイツ人。この話はアメリカ原子力委員会の私怨に絡む内輪揉めがメイン。しかも長い。
日本人はまったく蚊帳の外。ロスアナモス研究所はいまなお先端科学技術の要所で、多くのアメリカ人の誇り。原爆は肯定的にとらえられている。オッペンハイマーのみならず、携わった科学者は少しは人命を奪うことに良心の呵責を感じていたかもしれないが、映画のシーンにあるように成功した喜びの方がはるかに勝っていたにちがいないのだ。第二次世界大戦中に原子爆弾の開発に着手したアメリカがイギリスと協定を結び、ドイツからイギリスに亡命した科学者などをオッペンハイマーのロスアナモス研究所に送り込み、原子爆弾の開発を促進したことには触れずに、オッペンハイマーと不倫関係にあった共産党員の精神科医ジーン·タトロック役にすぐ脱いじゃうフローレンス·ピューを当て、まったりした話にエロ場面を入れ、眠くなるのを防いだ感が強い。
フローレンス·ピューの固太りの体は嫌いじゃないけどさ、こんなエリート不倫男の開発した大量殺戮兵器にやられたと思うと悔しさ倍増。
ドイツが降伏したから、日本に使ったなんて言い訳。開発はかなり前から着々と行われていて、1943年には日本に落とす目的で開発を急いでいたんだから。水爆を作る余裕もあったし。しかも、オッペンハイマーはユダヤ系ドイツ人で、ドイツを故郷と感じていた。彼もまた時代の被害者であったと思うが、映画としてはあまりにアメリカの正当化に寄与し過ぎではいないか? クリストファー·ノーランの観るものを混乱させる時系列のいじりも悪意に思えてくる。
ソ連への牽制が一番大事で日本はただの舞台だった。黄色人種での人体実験だったんだと思う。爆心からの距離や被曝線量と人体への影響が測り易い都市を選んでいたんだから。ロスアナモスはもともとネイティブアメリカンの居留地だし。朝鮮戦争やキューバ危機で核が使われなかったのはクラウス·フックスの機密漏洩によりソ連がアメリカに遅れをとらずに核兵器を実戦配備したため、冷戦下の均衡が保たれたためだと指摘する人も多い。割を喰ったのは日本人だけ。そして、瞬く間に中国が核を保有し、北朝鮮がロシア、中国の鉄砲玉になって、極東アジアの平和を脅かしている現実。この映画を観るためのお金があったら、赤十字やユニセフに寄付したほうがいいと思う💢それと、ロバートダウニーJr(ストローズ役)のアカデミー賞授賞式の振る舞いも嫌だよね。早く終映にしてほしい。
【追記】1200円もするパンフ買ってしまった。読んでもピンとこない内容だった。
NHKがアメリカのテレビ局が作成したマンハッタン計画を正当化するような内容の番組を独自の解説を添えることもなくタダ流しするのは怠慢過ぎると思うのである。
共感ありがとうございます😊
大変お詳しいですね。
フローレンス•ビューさん、『ストーリー•オブ•マイ•ライフ』のエミリー役の方ですね。元々エミリーが嫌いでしたし、エリザベス•テイラーなら可愛い💕のにこの俳優にちっとも魅力を感じずシャラメと結ばれるのが不快でした。今作、なるほど、男性なら目覚め効果絶大だったのですね。私などは何故何回も⁇としか。