「非常に疲れました。私はだめでした」オッペンハイマー Marikoさんの映画レビュー(感想・評価)
非常に疲れました。私はだめでした
ノーラン監督作品の中では、私は唯一不満の残る作品でした。残念です。
理由は、原爆被害が映像として全く描かれていないからです。
唯一の被爆国の日本人として、国をあげて原爆開発に勤しむ中盤あたりから、観ていて沸々と怒りが湧いてきて・・・心がゾワゾワして・・・
実験成功の場面の恐ろしさと合わせて、大騒ぎで歓喜する様子を見て非常に不快。
腑に落ちないし、正直とても気分が悪い。
出来上がった2つの原爆が砂漠の中を運ばれていく場面は、罪のない沢山の人たちがこの球体によって無惨に焼き殺されたのだと思うとたまりませんでした。
広島や長崎の人たち、これ見れないんじゃないでしょうか?
私は、敗戦間近の日本への原爆投下は間違っていたと思っているので。
非人道的過ぎると思うので。
ロバート・オッペンハイマー個人は善人だったし、大変優秀な研究者でしたが、結果、とてつもなく恐ろしい殺戮兵器をその手で作り出したことは変えられない事実であり、罪を背負うべき。
あの時代に政治利用されないわけがないでしょう?
科学者は、そういう事を考えられないの?
罪の意識に苦しむ晩年を丁寧に描いてはいるけど、それが当然の報いだと思ってしまう私は厳しすぎるのでしょうか?
3時間観終わり、とっても疲れました。
私はいまだに東京大空襲の10万人の犠牲と原爆の犠牲について、何がどう違うのか整理がついていません。
どちらも民間人の被害という意味で、あってはならないこととしての違いはないと思ってるので、なぜヒロシマ、ナギサキ、トウキョウと並べて言われないのか、そちらの方が不思議なのです。犠牲に軽重はない。
ウクライナとガザのこともあり、アメリカ人が、というよりは人間って、これだけ学んできたはずなのに、何やってんだろう!?という感覚のほうが強くて…
私にとっては、オッペンハイマーは善人とは言い難いところです。とはいえ、普通の人だったようには思いました。(つまり冷血無情な実践家ではないという意味)
科学者というより巨大プロジェクトのリーダーのイメージが強かったのですが、理論物理の人ですから頭はよかったのでしょうね。
せっかくいい頭を持っているのだから、自分が作ろうとしているものが、どんな意味を持つことになるのかを事前に考えて欲しかった気がします。
とはいえ、彼がいなくても、誰かが彼の代わりを果たし、原爆は完成されたのでしょうね。