「いつもながら集中力と記憶力を総動員させられる」オッペンハイマー Ashura5さんの映画レビュー(感想・評価)
いつもながら集中力と記憶力を総動員させられる
クリストファー・ノーラン監督作品の多くは表題の通りの覚悟が必要ですが、それでも自然にそうならざるを得ないような圧倒的な映像とストーリー展開で引き込まれていきます。
本作も同監督の過去作品の傾向に漏れず、いや輪をかけて時間軸を前後に揺さぶられ、一体どういう物語として収束するのか、断片的に挿入されていくモノクロシーンを必死に記憶に留めながらメインとなる原爆開発のストーリーを追っていきます。
そして開発成功、広島・長崎に投下後からが本作の核心となり、断片的に挿入されたストーリーの紐づけというかタネ明かしが行われ、日本人には(ひょっとして米国人にも?)あまり知られていない政治的な裏事情や抗争、科学者の苦悩が描かれていきます。
本作で直接的な描写が無い投下された日本側立場の物語は(ほぼ日本人向けの感はありますが)映画、テレビ、漫画、小説等で幾度となく語られ、惨状は広島で展示され続けているので敢えて間接的な表現にしたとも思われますし、そこをリアルに描いても本作のテーマがブレるため意識的に排除したと思われますが、事実の矮小化や米国の正当性を訴える内容にはなっていないと少なくとも私は感じました。
逆にこれを観たメジャー配給元がなぜ去年配給を躊躇ったのか理由を聞いてみたいです。
ただ、映画としての完成度や見応えは素晴らしいものの決して後味の良い物語ではなく、エンターテインメント性という意味においては歴代クリストファー・ノーラン監督作品で最低というのが私の評価です。
毎度感じますが私にはアカデミー賞作品賞受賞作品は合わないっぽいです。
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