「痛快ムロツヨシ劇場!」身代わり忠臣蔵 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
痛快ムロツヨシ劇場!
原作の同名小説は未読ながら、ムロツヨシさんが大好きなので、予告を観たときからずっと楽しみにしていた本作。期待どおり笑わせてもらい、さらには泣かせてもらい、とても楽しい作品でした。
ストーリーは、勅使饗応の指南を請う赤穂藩主・浅野内匠頭を陰湿にいじめたことで斬りかかられ、逃げ傷を負った吉良上野介が瀕死となり、その恥を責められお家取り潰しになることを恐れた家臣・齋藤が一計を案じ、上野介にそっくりな弟・孝証を身代わりに仕立てて難局を乗り切ろうとしたことから起こる騒動を描くというもの。
日本人なら誰もが知る「忠臣蔵」に“身代わり”というフィクションを加えて、史実との整合性を保ちつつ、コメディ全開で描いているところがおもしろいです。しかも主演のムロツヨシさんが、性格が正反対の上野介と孝証の二役を演じ分け、時には同じ画面に収まってみせ、冒頭からガッツリ笑わせてくれます。
また、孝証が身代わりとなることを単におもしろおかしいギミックとしているだけではなく、吉良の善政、大石内蔵助との友情、家臣や領民との絆につなげ、ろくでなしの生臭坊主だった孝証が人のまごころに触れて変容するさまを描くというストーリーラインに生かしています。終盤、一連の騒動にけりをつけるために下す孝証の決断が熱いです。
前半はしっかり笑わされ、後半は何度も泣かされ、しかも幕引きの後味もよき。かなりふざけて描いている部分も多いですが、そんなのは想定内なので全く気になりません。ムロツヨシさんの魅力がしっかり詰まった、まさにムロツヨシさんによるムロツヨシファンのための作品であり、彼のファンなら文句なく楽しめると思います。
久しぶりに「忠臣蔵」に触れて、泉岳寺や花岳寺にまた行ってみたくなりました。ちなみに浅野家と吉良家の菩提寺がともに花岳寺という同じ名前なのは、何か理由があるのでしょうか。そういえば、地元愛知県西尾市吉良町あたりでは、吉良の殿様は領民から慕われる名君として扱われており、そのあたりも本作で回収された気がして、あながちフィクションではないのではと思わせる展開もなかなかであると感じます。とはいえ、名君説は資料の裏づけがなく、史実とは言い難いようではありますが…。
主演はムロツヨシさんで、本作はもはや彼の独壇場です。脇を固めるのは、永山瑛太さん、川口春奈さん、林遣都さん、北村一輝さん、柄本明さんら。北村一輝さんの使い捨て感や柄本明さんのフィクサー感も見どころの一つです。