「僕は面白いと思ったけど、他人には勧めない(観る人を選ぶ)」スラムドッグス 福島健太さんの映画レビュー(感想・評価)
僕は面白いと思ったけど、他人には勧めない(観る人を選ぶ)
事前に映画館で予告を観て、「ひどい飼い主に捨てられた犬が、復讐のために飼い主のチンコを食いちぎりに行く」という下ネタ混じりの下品な内容を承知して観に行くのなら、普通に面白いと思います。
犬には人間の言葉はわからないから、ひどい飼い主が暴言を吐いても全く通じない。
自分は愛されている幸せな犬だと思いこんでいるのは悲しい話ではあるものの、そのズレたトンチンカンなところが笑えます。
飼い主のダグは自分を大切にしてくれるけれど、彼がもっと大切にしているのは自分のチンコだと、犬の体毛はトリミングしてくれないけれど陰毛は処理するし、犬を撫でたりしないけれどチンコをしごいて自慰行為もするというところは、下品な話なんだけど、笑いました。
最初から最後まで下品なジョークの連続なので、予告動画を観ないで、「ペット闇堕ち」ってポスターだけを見て何も知らずに劇場へ行ったら、下ネタの嫌いな人はきっと「最低の映画だ」と評価するでしょう。
観客が下品なジョークに耐性がないか、下品なジョークで笑えるかによって評価が分かれると思うので、僕は面白いと思ったけれど、他人には勧めることができません。
ただ、下品なジョークの連続の中にも、感動的な場面が混じっていて、単に「下品なジョークがコメディーとして面白い」というだけではなく、なかなかに良いです。
僕は、途中で犬達がお互いにオシッコを掛け合う場面が気に入りました。
レジーの復讐のために車で3時間もかかる遠い道のりを旅するのに、付き合ってくれたバグ、マギー、ハンターの3匹との友情は、チンコを食いちぎりに行く下品な話のくせに、なかなかに泣けます。
捨てられたレジーが、まさか捨てられたなんて思いもしないで、帰り道がわからずに途方に暮れている。
野良犬のバグがレジーに声を掛けて、野良犬のルールを教える。
野良犬は、欲しい物にはオシッコをかけて自分のものにする。
それが、復讐の旅でいくつもの苦難を乗り越えて、仲間との友情が強固なものになって、人間は信用できない、だけどこの仲間達とはずっと一緒にいたい、自分のものにしたいって、お互いにオシッコを掛け合うのですから、ちょっと泣けます。
元は飼い犬だったけれど、飼い主の少女を噛んでしまったために捨てられて、人間を信用できなくなった、バグの過去が明らかにされる終盤以降がまた、いい話でした。
僕は面白いと思ったし、結構好きです。
万人ウケする内容ではないので、他人には勧めることができません。
でも、「この映画を観て”下品だけどいい話だった”と言う人が増えたらいいな」と思っています。