「思い込み、差別、慢心」キリング・オブ・ケネス・チェンバレン じぇんぬさんの映画レビュー(感想・評価)
思い込み、差別、慢心
Filmarksオンライン試写にて
無実の男が警察によって殺害された事件を、彼が殺されるまでの90分とほとんど同じ尺で描く。
上映時間を実際の事件に寄せることで、ケネス自身が体験した恐怖を追体験できるようになっています。
本当に新たな恐怖との出会いでした。
怒りや呆れ、悲しみ。
すべてのやるせない感情が混じり合い忘れられない一本となった。
なぜならこの作品は”事実”だから。
”精神障害を患う70代の男性”
このパーソナリティに”黒人”や”元米兵”が加わるだけで、その人の見る目が変わってしまうのか。
「黒人の男性だから、部屋で人を監禁している可能性がある」
彼はただ機械の誤作動で”安否確認”のために警官を呼ばれただけで、彼らが過度にパーソナルスペースに押し入る権利なんてなかったはず。
これは確実に警察側、警官の人間性、そしてバイアスの問題かと思います。
そもそも警官と言っても、公的な許可なく人の家に押し入ることなんてできない。
こんな至極当たり前の常識が”勘違い”や”バイアス”によっていとも簡単歪められてしまうものなんですね。
彼らの抱く「犯罪を未然に防ぐべきだ」という正義感
「黒人だから徹底的に調べるべきだ」という差別意識
「警察なら正義のために、法に逆らって独断で判断できる」と言う慢心(うぬぼれ)
これらが不運にも重なってしまったとも考えられるが、彼は本当に運が悪かったのだろうか?
そんなはずがないから、防げたことだからこそこの作品を撮ったのだと思います。
アメリカ全土でまだまだこのような事件を耳にします。
日本では毛頭見かけることのない状況だからこそ、見なければならない一作です。
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