「気弱な悪魔」ナポレオン サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
気弱な悪魔
違う、そうじゃない。予告から想像していた、緊張感たっぷりの18世紀はどこに。ナポレオンのイメージを大きく覆すというのは面白い試みだけど、誰のために作られた映画なのか些か理解できない。史実に基づいているか否かといった深い考察は知識不足が故に出来ないけれども、確実に言えるのは自分が見たかったものでは無い。
ホアキン・フェニックスとバネッサ・カービーは、またもやアカデミー賞にノミネート、はたまた受賞するのではないだろうか。演じているとは到底思えない、繊細で絶妙な感情の起伏。どの作品でもそうだけど、本作においても2人に魅せられた。ホアキンは「JOKER2」で、バネッサは「Mission: Impossible Dead Reckoning Part Two 」という超大作が控えているため、今後もめちゃくちゃ楽しみ。にしても本作のバネッサは、より一層色気がすごかった(語彙力)。
まだまだお盛んなリドリー・スコットによる演出も、やはり自分の映画癖にぶち刺さる。毎度毎度、性描写が激しいこと。そういったディープなところも隠すことなく堂々と描くから、リアリティのある作品に仕上がるんだろうね。歴史物の演出で、彼の腕に立ち向かえるものは誰一人としていない。正直、「最後の決闘裁判」のようなカタルシスがあり、ドラマティックな展開を目にすることが出来なかったのは残念だったけど、前半はかなりワクワクさせてくれた。
本作はこれまでのイメージの裏を返すような設定、それだけが斬新で目新しく、その他の意外性は全くない。ただ淡々とナポレオンの冷酷さと情けなさを描いている。しかもその上2時間半を超える長尺であるため、後半は同じような展開が続きかなり睡魔に襲われる。ハッキリ言って退屈。映像にこだわりは感じるけど、迫力は感じられない。IMAXで見ているというのに、あまり心が踊らないんだよね。音楽が微妙であることも致命的な欠点かも。
なんかこう、もっとあるやろ。
せっかく素晴らしい俳優を使い、大金かけて大きなセットを用意し、最高な環境での撮影ができたというのに、色々と不満点が多い。全体を通してみればそれほど悪くないんだけど、どうも好きになれない。やっぱりカッコイイナポレオンを求めていたのかな。戦場でのヒリつきがいまひとつでした。