「地獄の先の地獄、絆とも呼べない絆」ほかげ uzさんの映画レビュー(感想・評価)
地獄の先の地獄、絆とも呼べない絆
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少年を中心に、趣里パートと森山未來パートで大きく分かれている。
趣里パートは、全編彼女の店の中だけで展開される。
少年や復員兵と出会い、疑似家族のような関係を築くうちに、機械のようだった趣里が“おかん”の顔を見せる。
それが単なる母性だけからのものでないことが後に明かされるが、一発の銃声が崩壊を招く。
ここで匂わされた復員兵の“トラウマ”が、森山未來パートに活きてくるのが上手い。
復員兵の過去を語らず、ここから派生して想像させるのだ。
こちらのパートは屋外が中心だが、それでも陰影の濃い画面が目立つ。
ただ、この作品の“闇”は、他でよく見られる単に見づらく分かりづらいだけのそれとは全く違う。
絶妙に表情を隠し、そしてそれ故に感情が浮かび上がるようにつくられている。
ダンスも得意とする森山未來はもとより、腕だけで魅せたタイトルバックなど趣里の肉体表現もまた素晴らしい。
子役も表情芝居が抜群で、台詞はやや(仕事内容のところなど特に)聞き取りづらいが、補って余りある。
最後の銃声や彼らのその後など、空白の残し方も適切だったと思う。
戦争を描かず戦争の悲惨さを描いている点も含め、近年稀に見るほど映画らしい映画でした。
疲れから瞬間的な寝落ちが何度かあり、その繊細な表現を堪能しきれなかったことが悔やまれる。
是非、万全のコンディションで鑑賞することをお薦めします。
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