「ラストメッセージとリベラルの欺瞞」サウンド・オブ・フリーダム MP0さんの映画レビュー(感想・評価)
ラストメッセージとリベラルの欺瞞
本日、11月11日は映画評論家の淀川長治さんの命日。
何か映画を観に行きたいなと思って上映している劇場はかなり減っていたけど、本作を観に行きました。
この作品はペイフォワード($15=10人分寄付)でも観ることが出来るので、お金がないからと言う人は公式WEBページからチケットを入手も可能なので、可能であれば是非劇場で観て欲しいと思います。
前情報なく鑑賞前に何となく思っていたのはエプスタイン事件をモデルにした「事実に基づく」作品でしたが、この事件とは別な話でした。
けれど描かれている児童誘拐、人身売買、少年少女たちの性奴隷など目を覆いたくなるような出来事は想像の通りの物語でした。
中南米から子供たちを誘拐して人身売買、買われた先で子供たちは性奴隷として買い主の元で過ごします。
直接の描写こそありませんが、買い主の機嫌を損ねないように子供が怯える様子、いわゆる事後に子どもが浴室で泣く様子は子のいる人には身につまされる想いになるかもしれません。
エンドロールの途中、ティム・バラード役のジム・カヴィーゼルがメッセージとしてこの物語の主人公はあくまでも被害にあった子供たちと語っています。
きっとこの視点で観るのが正しいのでしょう。
これだけ世界的にアメリカを中心に国連などで基本的人権や「世界子ども人権宣言」などが叫ばれている中で、アメリカがその児童売春、人身売買最大の消費地であり、帝国主義の時代以上にこうした状況に置かれている子どもたちがいるというラストメッセージには、カリフォルニア州を中心とするリベラル意識の高い地域と重なり、如何に現在のリベラルが欺瞞であるかを改めて知らされる想いになります。
(2020年に撮影され、公開がここまで引き延ばされた語られない諸事情を含め)
作品の粗を晒せば、実在のティム・バラードはスタッフへのセクハラやらグルーミングやら不同意性交渉やらで散々叩かれていて、映像の中のようなイケメンでもありませんが、そこはご愛嬌。
カメラの性能があがったせいか。映像が鮮明すぎて『ザ・世界仰天ニュース』の再現ドラマのような作りものっぽさ(中盤以降)と、妙にリアリティのある少し埃っぽくて粗い映像(前半)が混在しており、作品にのめり込むようにして観る作品とは少し違うのかなと。