Chimeのレビュー・感想・評価
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1時間で濃厚な黒沢清が堪能できる
1時間程度の中編映画はもっと増えていいと思っている。無駄に長い作品が増えているので、新鮮だ。そもそも、映画は省略の芸術なので、だらだら長い作品よりも短く表現した方がいいと思う。切り詰めまくってそれでも3時間以上になるほど、濃厚なものを表現しているならいいけれど。
内容的には黒沢清の持ち味ががっつりと活かされて素晴らしかった。なんてことない日常に、普通の人がおかしくなっていく様子を淡々と見つめていく、その乾いた恐怖感。妙なものに導かれて人がおかしくなるというのは、『Cure』を思い出す。『Cure』の萩原聖人の問いかけが、今回はチャイムなわけで、人はそんなふとしたことでおかしくなる生き物なのだと。
地味に料理教室のロケーションがいい。どこにでもありそうなんだけど、電車が通って、その影がいいタイミングで入ってくる。あの影は本物の電車なのかわからないが、いつもいいタイミングで入ってきて、不穏な空気を作ってくれていた。。
Roadstedで販売されるという新しい流通形態を採用していいるのも、注目すべきことかもしてない。劇場で回収しなくても、そっちで利益をだせればいい、そうすると、作品の多様性を確保することにもつながるかもしれない。
理解不能
場面場面の不気味さ理不尽さはさすがですが、いろんな謎を雑にぶん投げていて、全体としては「なにこれ?」という印象しか残りませんでした。
回路はもうちょっとしっかり骨組みがあった印象ですが…
まぁ叫とかも自分とは合わなかったし、わたしゃ黒沢監督とは相性悪いんですかねぇ…
「Cloudが楽しみ」
今年218本目。
渋谷パルコ8Fホワイトシネクイントで。
黒沢清監督9月27日公開「Cloud」がとても面白そうなので監督の作品行っておきたかった。
序盤驚く演出。そしてChimeと言うタイトルが映画を表している。最後感じ方を観客に委ねるのもいい。
電波飛ばして操るやつ
聴覚(と嗅覚)刺激は視覚と違ってその場にいる限り逃れようがなくストレス源になりやすい、というのをどんどん膨らませるとこうなるのだろう。
モノクロ画に薄色を後付けしたみたいな色彩や棒読み的な台詞が非現実感を醸し出す。
解釈というものを拒否しているような作風だから、そうそう、こういうのイラつくよね、と感じながら観るのが吉かな。
日本の写し鏡として、よくできたホラー映画
ホラーとSFは見ないジャンルだが、所属する映画の合評会の課題映画だったので覚悟して見ることに。
見てみると、45分でここまで引き込まれる作品を作れる黒沢清監督のすごさを実感。体感は65分くらいだった。
主人公と一緒に、観客も、初めから終わりまでずっと「不穏な緊張感」との闘い。
現実なのか妄想なのか、パラレルワールドなのかよくわからない事象と世界観。一部の事象はまず現実では起こり得ない設定だが「Chimeが鳴っている世界」ならあり得るのかもしれない。
主人公の松岡はそんな「Chimeが鳴っている世界」に入り込んだ時、狂気の殺戮行動に走る。
その世界に入り込む原因を作っているのは、不穏な動きをする家族や自分の料理教室の生徒、自分の夢を託そうとするフランス料理店の面接担当。
松岡は自分が馬鹿にされたり蔑まれたり、なきものとして扱われたりする時にChimeが脳内で鳴り、その現象が映画の中での「実に嫌な音響効果」に表されていると感じた。
ここからは映画から自分の感覚や解釈となるが、このように「何かChimeのようなスイッチが入り、殺人や犯罪が起きる」現象が昨今の日本の世の中で昔より起きやすくなっていると感じた。
昔は金策に窮した物取りや、明確な逆恨みが原因の犯罪が多かった気がするが、最近は身内や家族、隣人へのストレスが犯罪の引き金になるケースが増えていることも確実に感じている。それが、この映画で描かれた「自分の思ったようにならない」欲求が満たされない状態と紐づく、つまり非常に独善的な犯罪が横行するということ。
犯罪まで行かなくとも、例えばヘイトスピーチやネット上の中傷など、ネガティブな攻撃はこのような「承認欲求」と密接に結びつき、欲求が満たされないことがピークに達した時に起こる。
松岡も、料理教室で最後に残った生徒の不遜な態度にイラつき、崩壊している家庭生活を送り(息子に馬鹿にされ、妻には無視されている)面接官には「要らない」とされる。そのような事の積み重ねは松岡を追い詰めて行く。不穏な音の大きさが彼のストレスや不満を増大している(と感じた)。
監督は、もしかしたら、そういう「独善的な世の中」はこれからもっと研ぎ澄まされ、そのような要因による犯罪ももっと多くなり、日本という国のたどる暗い未来を映画に象徴させたのではないか…そんなふうに感じ取ってしまった。
悲観的な見方かもしれないが、映画は時にそういう「予言」を提示するものであると思う。
最後に、これまで沢山の映画で名脇役として活躍されて来た吉岡睦雄さんの主役の名演にも大きな拍手を送りたい。この名演からまた役者として飛躍され活躍されることも、併せて願う。
もしかして:CURE
料理教室の生徒から言われた「チャイム」がだんだん理解できるようになっていく男の話。
「CURE」でもそうだった気がするけど、すでに自分が病んでいることに気づかされてしまうと元の状態には戻れない。誰にでもあり得る日常の落とし穴みたいなものかもしれない。
45分という呎は映画としてはかなり短いけど、正直見やすくて助かった。
最後まで観ても震えあがるほど怖くはなかったけど、男を取り囲む世界の異常さが明るみに出るに従って、妙に許された感覚というか、社会で生きるうちに堆積した自分の中の矛盾や狂気を受容されたような気がして、むしろ癒された。
それが破滅を招くとしても、否認していたものを認める過程自体はCUREなのね。
キャストみんな良かったけど、やっぱり主演の役者さんの振り幅がめちゃくちゃ良くて一気にファンになってしまった。
約45分という時間枠が、内容を薄めるどころか凝集性を高める方向に作用している一作
黒沢清作品に対する「日常に潜む恐怖と狂気」という表現はいささか使い古されている感がありますが、本作を見た後だと、「それでも今までの作品は、場面と場面の間に余白を設けたり、段取りを設けてくれたり、いろいろ観客に配慮してくれてたんだな……」と思い至りました。
本作は劇場公開作品としては短め、とはいえ、日常の狂いっぷりはいささかも薄まってはおらず、むしろこの限られた時間枠の中に押し込めるだけの要素を詰め込もう、という黒沢監督の意思が透けて見えるようです。それだけ、一応本作の主人公的な立場にある松岡(吉岡睦雄)をはじめとした登場人物ほぼすべての、「とりあえず日常生活を送っているんだけど、折々に異常性が垣間見える」人々の狂いっぷり、そしてその狂気が噴出する脈絡のなさに、都度観客は終始不意を食らい続けます。これが45分間続くのは、映画の上映時間としては短くても精神的な疲労を催させるには十分すぎるほどの時間で、観終わった後に多くの人々はどっと疲れていることでしょう。
料理教室の一幕は割と予想がつくんだけど、それ以外の場面描写、例えば松岡の家庭が、一見すると穏やかで上品な雰囲気に包まれているんだけど、家族それぞれが狂気に侵されている、その表現の創意工夫はやはり新鮮。「日常的な動作に過ぎないのにそれをこんなに怖く見せちゃうんだ!」と改めて黒沢監督の手腕に驚いてしまうのでした。
疑問点ばかり残った
ある日、料理教室の講師・松岡卓司に生徒の田代が、チャイムのような音で、誰かがメッセージを送っている、と言った。そして、別の日、田代が、自分の脳の半分は機械に入れ替えられていてる、と言い、それを証明するために自分で首筋に包丁を刺し死んでしまった。その後、下茹でした鶏肉を切るレッスンをしていた生徒の菱田に対し・・・さてどうなる、という話。
最初の田代のチャイムの音も結局何だったかわからず、菱田に対する松岡の行動も理由がよくわからず、何だったんだろう?
松岡の妻が空き缶を捨てる量が半端じゃないんだけど、アレ何ヶ月分?
なかなか面白かったけど、疑問が多く残り、消化不良な感じ。
フランス行ったり歴史もの撮ったりするより、小品ながら黒沢清一流の...
フランス行ったり歴史もの撮ったりするより、小品ながら黒沢清一流の「身近なロケーションに潜む恐怖」が良く表れていた。料理教室があんなに不穏に見えることがある!?なんなら導入の「頭の中に機械が…」なんてありがちな妄言や唐突な刃傷沙汰さえノイズで、建物を震わす電車の轟音や、異常な量の空き缶を食事を中座して捨てに行く妻、まったく話の通じそうもない息子の方がプリミティブに怖い。
黒沢っぽい、ぎこちないアクションの急展開。音による恐怖映画。呪怨み...
黒沢っぽい、ぎこちないアクションの急展開。音による恐怖映画。呪怨みたいなものより根源的に怖い。
包丁のような身近な狂気
料理教室で講師の仕事をしている松岡。
その料理教室には1人変わった生徒がいた。
彼の名は田代。田代は松岡に「チャイムのような音が聞こえる」と何度も訴えるが松岡は特に相手にしない。
すると……。
全然意味わかんねぇけど最高に不気味で恐ろしくて面白い!
うん、大好きです黒沢清。
私が求めている恐怖ってまさにこういう恐怖。
不快すぎて鑑賞中に今すぐにでも劇場を抜け出して早く帰りたいと思える作品は、大体帰り道にまた観たい欲を掻き立てられる良作だと勝手に思ってる。
短編だからこそ、鑑賞後に大満足なようなまだ少し足りないような、そんな感じも最高だった。
繰り返しになるが、終始意味不明である。
何もないところにも何かがあるし、平凡な人かと思えば突然突飛な行動を取りだす。
狂気に溢れた日常は「おかしいのはあなただよ」と言わんばかりに平然と私たちに歩み寄ってくる。
画面外で繰り広げられる怪異と画面内に溢れかえった人間の恐ろしさで我々は逃げ場を失い、気づけば恐怖の中に立ち尽くしているのだ。
そして、これの何が怖いって、限りなく不自然なのに自然なところ。
狂人だけの特別な狂気ではなく、誰しもがどこかに持っている狂気。
もしかしたら自分も何かの拍子にフッとこういうことやってしまうかも知れないと思ったら、自分さえも恐ろしくなってくる。
皆さんも、理性というストッパーが外れたら……って思いません?
まあ、ヤバいかもって自覚あるだけいいのかな……?
これから何が起こるのか分からない期待感と不安感。
感情のない殺意が1番怖い。
あの人がいきなり…なシーンで前の方のお客さん声出てたw
黒沢清、よくもやってくれたなと終映後ニヤニヤが止まらなかった。
光と音の演出も素晴らしかった。
これは『Cloud』の期待が高まる!
僕にだけ聞こえた音?
2回ほど料理教室のビルの玄関だけ、モスキート音のようなキーンとした音が嫌に耳に入ってきたんだけどあなたも聞こえてましたか…?
よくある何歳以上には聞こえない音みたいでそういう効果も狙ってたら策士だなぁ…と思いました
この映画は音が命ですね。スマホだとかの規模では味わえない音があります。
内容はこんな事があったからこうなりましたとかの説明の類いは一切なく、良く言えばいろんな解釈がある映画でした。
鑑賞後に考察をみてあとからジワジワ恐怖が襲ってくるのも仕掛けなのかな
ホラー?スリラー?サスペンス?
観る前の期待が高くて、観てみたら思ってたより良くなかった(笑)
は?こんな終わり?と(笑)
少し難しいけど『箱男』よりは分かりやすい(笑)
だいたい何となく分かる(笑)
分かりますよね?(笑)
何となく(笑)
ホラーゲームの『サイレン』や『サイコブレイク』を連想した。
45分というコンパクトな上映時間が潔くて素晴らしいと思う。
不安に特化した作品
日常に潜む狂気を描いた作品は数あれど恐怖ではなく不安に特化し、演出や音楽でそれを的確に煽ってくるので終始緊張しホッとする瞬間がない。
癖のありそうな主人公を筆頭に登場人物も元々そうだったのか、それとも徐々にそうなっていったのかハッキリさせる事ができずどっちにどう転ぶのか予測がつかなかった。
45分と短い時間で恐怖演出も少ないながら満足感は非常に高いし、何より暗い劇場から明るい外に出た時ホッとした作品なんてそう無いと思う。
当たりの少ない日本のホラー映画では間違いなくトップクラスの作品。
頭が痛くなる45分
人を拷問するときにはきっとこんな風に音を使えばいいんだろぉな〜とよくわからないことを考え妙に納得しながら観てしまった。不協和音の轟音攻撃は脳ミソや神経回路を破壊するよ💦💦💦
Chimeの音よりそっちの方が気になった。
引き抜き話で喫茶店で話をしていた場面が印象的✨“いるいる〜こーゆー人〜”って笑ってしまった😂
久々のStrangerに行けたから、まぁ良しとする!
タイトルなし
菊川ストレンジャーに見に行きました。見られるものは極力ここで見てます。映画館を応援するのも楽しみの一つ。
昔の黒沢清が戻ってきたようだった。北野武がまたバイオレンス撮り始めたみたいな感じ。
内容はさっぱりわからなかったけど、黒沢清のいいところって劇中最低1回は笑わせてくれる所。面白いとかじゃなくて、不気味すぎて笑える、不穏すぎて笑える、みたいな。鶏肉のくだりが冴えてたなあ。笑ってしまった。
電車通過の反射光やら基本能力の高さは当たり前として(最近の邦画では見られないけど)、演出力がずば抜けてる。当たり前か。俳優の台詞を抑揚なくすることで芝居の臭みを隠すやり口、最近は濱口竜介の専売特許みたくなってるけど、よく考えたらこの人が元祖かも。バブル崩壊後から今も続く現実観に合ってるんだろうな。
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