「1時間で濃厚な黒沢清が堪能できる」Chime 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
1時間で濃厚な黒沢清が堪能できる
1時間程度の中編映画はもっと増えていいと思っている。無駄に長い作品が増えているので、新鮮だ。そもそも、映画は省略の芸術なので、だらだら長い作品よりも短く表現した方がいいと思う。切り詰めまくってそれでも3時間以上になるほど、濃厚なものを表現しているならいいけれど。
内容的には黒沢清の持ち味ががっつりと活かされて素晴らしかった。なんてことない日常に、普通の人がおかしくなっていく様子を淡々と見つめていく、その乾いた恐怖感。妙なものに導かれて人がおかしくなるというのは、『Cure』を思い出す。『Cure』の萩原聖人の問いかけが、今回はチャイムなわけで、人はそんなふとしたことでおかしくなる生き物なのだと。
地味に料理教室のロケーションがいい。どこにでもありそうなんだけど、電車が通って、その影がいいタイミングで入ってくる。あの影は本物の電車なのかわからないが、いつもいいタイミングで入ってきて、不穏な空気を作ってくれていた。。
Roadstedで販売されるという新しい流通形態を採用していいるのも、注目すべきことかもしてない。劇場で回収しなくても、そっちで利益をだせればいい、そうすると、作品の多様性を確保することにもつながるかもしれない。
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