「音楽のように理屈抜きで感じて楽しむ異色の作品」映画ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー) eigazukiさんの映画レビュー(感想・評価)
音楽のように理屈抜きで感じて楽しむ異色の作品
平凡な小学生の男の子「のび太」と未来からやってきたロボット「ドラえもん」の交流を描く国民的アニメが原作のSFヒューマンドラマアニメ映画シリーズ。2024年公開。今回のお話は音楽の授業が苦手な主人公のび太が宇宙からやってきた宇宙人の少女とともに音楽で地球を救う話。
点数:4.5。お勧めします。すばらしい音楽を聴いた時のような、言葉では表現できない感動を味わえる。従来のドラえもん映画のように、ひみつ道具がまき起こす騒動のストーリーを論理的に理解して楽しむのではなく、ストーリー全体を音楽のように感じて楽しむ作品。宇宙人の女の子がドラミちゃんのような声の魅力をもっている。ストーリーはあってないようなものでありキャラクターの出す音やリズムや音楽を感じて楽しむ異色の作品となっている。
この作品の良い点はキャラクターに魅力があること。キャラクターのアニメーションの動きが丁寧に作られており見ているだけで楽しくなる。セリフの内容ではなくそれぞれのキャラクターの出す声や音を感性で楽しむことが求められる。この作品の良くない点は敵が怖くないのでカタルシスが低いこと。敵が音楽に弱い悪いエイリアンという設定だが敵に個性がなく脅威を感じない。敵の脅威が少ないのでストーリーがしまらない。
私はドラえもんの映画は何十年かぶりに観たがさすがに世界展開をしているコンテンツなだけあってかなりお金をかけて丁寧に作られていると感じた。とくに最初の30分は時間を忘れるくらいストーリーに引き込まれた。ストーリー全体でヒロインキャラクターに魅力があった。このドラえもん映画は素晴らしいと思った。ストーリーを細かく見ていくとキャラクターが音楽を出しているだけなので単純であるがこの映画はストーリーを音や音楽のように感じて楽しむものだと思った。体全体で感じて楽しむ。音楽というものはそういうものである。
私は西洋文明は日本人にとってのドラえもんであると思う。のび太とドラえもんの関係は文明開化後の日本人と西洋文明の関係である。明治時代の文明開化後の日本人はつぎつぎと海外からやってくる最新の西洋文明とともに仲良く暮らしてきた。夜を明るくする電灯や牛や馬の何百倍もすごい蒸気機関車など驚異の西洋テクノロジーとともに日本人は発展してきた。大戦の不幸もあったが日本人と西洋文明は現代まで仲良く暮らしてきたのであった。
かつていわゆる後進国と呼ばれたアジアやアフリカや南米や東欧などの国々の人たちにとって世界中に展開した自動車や電化製品などの日本製品は彼らにとってのドラえもんであったと思う。日本製品は異国である日本からやってきてその国の人たちの役に立っていた。文明開化後の日本人と、日本に上陸した西洋文明の関係が現在では切っても切り離せない友人以上の関係であるように、日本製品は海外の人々にとって友人以上の存在となっていたであろう。今日(こんにち)では外国人による問題が叫ばれてはいるが日本製品が海外の人たちにとってのドラえもんであったことを忘れずにいたいものである。「ドラえもん」は世界中の人たちにとって友人以上の存在であるのだから。
視聴:液晶テレビ(有料配信アニメタイムズ) 初視聴日:2025年7月17日 視聴回数:1(早送りあり) 視聴人員:1(一人で見た)
追記:
私はこの映画を見てアメリカの実写映画「グーニーズ(1985年)」を思い出した。「グーニーズ(1985年)」は少年少女たちが海賊の秘密基地の遺跡を探して財宝を見つけようとする話だが、音楽が重要な要素になっている。昔の海賊たちが侵入者を防ぐために設置した罠を解除するためにはピアノが弾けないといけないのだが少年少女のなかでピアノが得意なものはおらず死の危険が迫るピアノの罠に少年少女たちは悪戦苦闘する。このドラえもんとグーニーズは関係が深いと思った。ファミコンのゲームソフトもドラえもんとグーニーズは同時期に発売されていたと思う。映画を題材にしたファミコンのゲーム「グーニーズ」も「ドラえもん」も両方とも名作である。ドラえもんの映画が40年以上も続いているのは驚きである。
追記2:
私はこの映画を見てアメリカの実写映画「マーズ・アタック!(1996年)」も思い出した。「マーズ・アタック!(1996年)」は火星からやってきたエイリアンとUFOが地球を武力で侵略しようとする話だが火星から来たこのエイリアンたちは音楽に弱かった。火星から来たこのエイリアンたちは音楽を聴くと脳が破裂して死んでしまう。火星から来たこのエイリアンたちは文明レベルも高く好戦的なのに風貌がユニークで行動もコミカルなのだが彼らが怖さとおかしさを両方もっているので物語に味わいがあった。しかしドラえもん地球交響楽の映画のエイリアンはコミカルな部分が全然ないのでいまいちであった。「マーズ・アタック!(1996年)」は映画の敵役には人間味やコミカルな部分があるといいといういい例であろう。
追記3:
地球を侵略してくるエイリアンを音楽で撃退する話はまだある。日本のSFロボットアニメ映画「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか(1984年)」である。この映画の内容は巨人型エイリアン「ゼントラーディ宇宙人」の大艦隊が地球に攻めてくるのだがある地球のアイドルが歌を歌ってエイリアンたちを改心させる荒唐無稽な話である。宇宙空間で歌を歌っても音が伝わらないので意味がないと思う。しかしドラえもん地球交響楽の映画はその点ではよくできていると思った。宇宙空間では空気がないので音楽が伝わらないが、ドラえもんのひみつ道具でその問題をクリアする。その方法はのび太の家の風呂場をスケールを大きくして地球とその周りの空間につくりだすのである。これで宇宙空間でも音がよく伝わるようになった。
追記4:
ドラえもんのひみつ道具は万能のようであって万能ではない。人の使い方次第で道具は有益にも害にもなるという人類への教訓がこのアニメには込められている。音楽を奏でる楽器も道具のひとつである。音楽が苦手なのび太がリコーダーを吹いて出す音は「ドレミファソラシド」のどれにも属さない「の」の音であるがこれが本作の伝えたいメッセージであろう。下手でもよいので自分だけのオリジナルの音を勇気を出して出してみようということであろう。つまり、人間社会においてのび太のような不器用な人間も欠かせない存在であるということをこの映画は言っている。
追記5:
この映画はのび太、スネ夫、ジャイアン、しずか、(ドラえもん)だけで冒険するので大人が関係せず子供たちだけで冒険する雰囲気が良い。仲の良い子供たちだけで知らない土地を冒険するのは誰しもワクワクした記憶があると思う。私も幼少のころの記憶がよみがえった。昔のわくわく感を思い出させてくれるドラえもん映画は大人が見ても良い映画である。良い冒険映画といえばアメリカのテレビ映画の古いほうの「IT イット(1990年)」の前編であろう。この映画は子供たちだけでピエロの姿をした恐怖の存在と戦うホラー映画なのだが子供たちの冒険映画として見てもかなり良いと思った。子供たちの集団で何かをするのが面白いのは子供は親に怒られはしないかいつも気にしているのでそれが自由と解放感となってあらわれるのであろう。開放感の味わえる映画といえば「ショーシャンクの空に(1995年)」である。無実の罪で終身刑となった元銀行員の主人公が過酷な刑務所を脱獄する話だが、ラストで脱獄に成功した際に感じる解放感がとてつもなかった。子供の冒険映画でも親や教師に管理されながらの家や学校といういわば「刑務所」からの解放感を味わえるのであろうか。と思う。
追記6:
映画ドラえもんシリーズ
1980年 のび太の恐竜
1981年 のび太の宇宙開拓史
1982年 のび太の大魔境
1983年 のび太の海底鬼岩城
1984年 のび太の魔界大冒険
1985年 のび太の宇宙小戦争
1986年 のび太と鉄人兵団
1987年 のび太と竜の騎士
1988年 のび太のパラレル西遊記
1989年 のび太の日本誕生
1990年 のび太とアニマル惑星
1991年 のび太のドラビアンナイト
1992年 のび太と雲の王国
1993年 のび太とブリキの迷宮
1994年 のび太と夢幻三剣士
1995年 のび太の創世日記
1996年 のび太と銀河超特急
1997年 のび太のねじ巻き都市冒険記
1998年 のび太の南海大冒険
1999年 のび太の宇宙漂流記
2000年 のび太の太陽王伝説
2001年 のび太と翼の勇者たち
2002年 のび太とロボット王国
2003年 のび太とふしぎ風使い
2004年 のび太のワンニャン時空伝
2005年 (なし)
2006年 のび太の恐竜2006
2007年 のび太の新魔界大冒険 ~7人の魔法使い~
2008年 のび太と緑の巨人伝
2009年 新・のび太の宇宙開拓史
2010年 のび太の人魚大海戦
2011年 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ天使たち~
2012年 のび太と奇跡の島 ~アニマル アドベンチャー~
2013年 のび太のひみつ道具博物館
2014年 新・のび太の大魔境 ~ペコと5人の探検隊~
2015年 のび太の宇宙英雄記
2016年 新・のび太の日本誕生
2017年 のび太の南極カチコチ大冒険
2018年 のび太の宝島
2019年 のび太の月面探査記
2020年 のび太の新恐竜
2021年 (なし)
2022年 のび太の宇宙小戦争2021
2023年 のび太と空の理想郷
2024年 のび太の宇宙交響楽
2025年 のび太の絵世界物語
2025年時点で全44作。ほかにも大長編以外の短編ドラえもん映画作品が全21作ある。
大長編映画は2005年と2021年以外は毎年公開されている。のび太の恐竜は3作品もある。
3DCGアニメ-ション版のドラえもん映画シリーズ
2014年 STAND BY ME ドラえもん
2020年 STAND BY ME ドラえもん2
2025年時点で全2作ある。