「演劇に打ち込むことの素晴らしさを謳い上げた作品…、と一言でまとめることができない、なかなか油断できない一作」シアター・キャンプ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
演劇に打ち込むことの素晴らしさを謳い上げた作品…、と一言でまとめることができない、なかなか油断できない一作
急病で倒れた演劇学校校長の代役としてサマーキャンプの運営を行うことになった、校長の息子トロイ(ジミー・タトロ)の奮戦を主軸に展開するドラマです。予告編の印象から、よくある「逆境克服もの」かな?と思っていたところ、ひねっているのかひねっていないのか、と疑問を抱いてしまいそうになる(もちろん全ての要素は、仰天するような結末に向けて周到に配置されているのですが)展開が続き、ことごとく「こうなるだろう」という予想を覆されたのでした。その意外性は結末で頂点に達しており、エンドロールが流れ始めて、「えっ、こういう話だったの?」とようやく分かった次第。
サマーキャンプの様子を記録した、いわゆるモキュメンタリーという手法を採用した本作ですが、編集は丁寧に施してあり、映像面で粗さや引っかかりはあまり感じませんでした。画面酔いを心配する人も安心して鑑賞できそうです。
ドキュメンタリー的な映像とすることで、特定の人物に感情移入することなく割とフラットな意識で物語を追うことになります。そんな視点でトロイの振る舞いを見たときの痛々しさといったら…。規模の大小に関わらず何かを企画したり、運営した経験のある人であれば冷や汗が出ること間違いなしです。みんなで演劇を作っていくという努力と涙、友情はどこへやら。
演劇作品を作り上げていく過程を描いている点は間違い無いんだけど、一つひとつの場面に深入りせずに次の展開に移行するため、95分の上映時間がさらに短く感じられるほどのスピード感。もっとディテールが観たい、と思わなくもなかったけど、それを期待しちゃあ…、な作品(決して悪い意味ではなく)でした!
「みんなで何かを作り上げる達成感を味わいたい!」という純粋な気持ちの持ち主はもちろん、「いや、集団活動苦手だし、別に…」という人にこそむしろお勧めしたい一作。