「正しく歪んだ現実世界」ヒンターラント uzさんの映画レビュー(感想・評価)
正しく歪んだ現実世界
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カメラか建物か、あるいはその両方が常に傾いている。
窓はハの字に付き、床も壁も家具も垂直平行を保たず、パースは歪み、緑がかった色調が幻惑感を増長する。
パッと見のポスターの雰囲気は、公開中の『ホーンテッドマンション』や『ドラキュラ』のよう。
そんな非現実的な画面で描かれるのは、哀しい現実。
歴史に疎い自分は、どこまで事実に則しているのか分からない。
しかし、捕虜の扱いや変わり果てた祖国、帰還兵への風当たりなどは的外れではないのだろう。
また、“19”に関してもかなりの手間がかかるものの実現不可でもない塩梅。
むしろ、それを達成させる犯人の執念が際立つ絶妙な数字だったように思う。
ただ、映像に慣れてきた後半は話の地味さからやや退屈に感じる。(死体のショッキングさも2人目がピーク)
情報がすべて後出しなので、ミステリではなくサスペンスだし。
博士とのラブシーンとか余計なことやらずに、人物を深堀りするか流れをスムーズにすれば…
あるいは、もっと幻想的な方向に振り切ってもよかったかもしれない。
セヴェリンとの意外なコンビや、結局“分かってない”発言を繰り返してしまう博士の配置は好み。
ラストシーンのみ、全編を貫いてきた映像の“違和感”を消す演出もベタながら良い。
そして、ドイツ語表記が英語に変わっていくエンドロールも、作品の雰囲気と相俟って素晴しかった。
いつだってトロッコ問題に答えなんてない。
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