「その変なチョビ髭を取れ」名探偵ポアロ ベネチアの亡霊 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
その変なチョビ髭を取れ
ベースとなっているのはクリスティの「ハロウィンパーティー」。ただしハロウィンが題材なのとポアロが友人の女性作家と同行し事件に巻き込まれることくらいが一緒で役名をそのまま使っていてもお話は全く異なる。ミシェル・ヨーの演じる霊媒師ジョイス・レイノルズは原作では殺人事件を目撃する13歳の少女の名前だったりする。
そもそも原作の舞台はロンドン郊外の邸宅なのでベネチアに移した時点で換骨奪胎、ほとんどオリジナル脚本みたいなものです。アメリカ資本の映画だけど制作陣はケネス・ブラナーもリドリー・スコットも英国人。グランドツアーじゃないけど英国人のDNAには大陸への憧れみたいなものがあるのだろうね。オリエント急行、ナイル殺人事件に引き続き英国以外に話をもっていった。
ただ、非常に良くできた脚本で、謎解きに全くの矛盾や不合理を感じさせません。ベネチアの風物や怪奇趣味をとても上手く織り込み十分楽しめる内容になってます。オリエントやナイルのようなビッグネームに頼らなくてもシリーズとして見応えのある映画をつくることができることを証明したので是非この路線で次作もお願いしたいところです。
一つだけ、ケネス・ブラナーのチョビ髭はやはりアルバート・フィニーやデヴィッド・スーシェのポアロを観てきた我々にはなんか前例をなぞっているというかコスプレみたいに見えてしまいます。ケネス・ブラナーは身のこなしがとても英国人的というか、今までのポアロ像からはどうしても異なる部分は隠せません。でも、演技の厚み、オーラのレベルが違っており堂々たるポアロを演じていると思います。だったら別に変なチョビ髭をつけることなく外見的にも新しいポアロを創り出したらいいんじゃないかと思いますが。