「もう一皮剥けて欲しい」怪物の木こり U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
もう一皮剥けて欲しい
雰囲気もいいし、脚本もいいとは思うのだけど…なんか主旨がブレてるような印象を抱く。
物語としてはサスペンスになるのかな?
ダントツで染谷将太が凄まじかった。
とてもとても普通だ。
自分の異常性を認めつつ普通だ。
戸惑いも抑揚もない。異質を自覚しながら矯正も抑制もしない。サイコパスってああいう精神状態なのかもしれないと、妙な説得力があった。
菜々緒さんも良かったなぁ。
モデルさんだったけかな、凛々しい立ち姿で背骨がちゃんとある人だった。
歪んだ愛情が発露みたいな事なのだけど…トウマ医師のキャラが腑に落ちてない。
サイコパスの息子を治療する為の人体実験って事なのだけど…ならあんな異常者じゃない方がいいような気もする。それは建前でマッドサイエンティスト的な事でもいいのだけれど、子供にメスを突きつけたすぐ後に自害するのは、やっぱりわからない。
死ぬつもりなら子供を人質にとるようなジェスチャーはなんだったのだろうか?
なんとなく、そんな上滑り感じを感じながら見始めた訳なのだけど、染谷氏からはその上っ面を感じなかったのだ。
ああ、俺は主人公に同情できなかったんだな。
誘拐されて脳を弄られて、サイコパスの人生を歩まされる。酷い話だよな…。
それ故に、自らの行いを悔いたのが中村氏なのだけど…彼は「最愛の人」って言う。
謎だ。
愛情を理解できてたように到底思えない。
チップが壊れる前なんだから利用はしてたと思う。壊れてから愛してた事に気付くなんて…そもそも愛してるから結婚した訳でもなかろうに。
数十年間「是」だったものが、ある瞬間から「否」になっていく…性善説が前提ならばそうかもしれんが、人を育てるのは環境だと思う。
中村氏の切替は良かったのだけど…数十年間に渡りかけられてた呪縛は、あんな風に解消されるものなのだろうか?
それと同じ事をラストにも感じた。
刺されて殴って首を絞めたまでは良かったと思う。ああ、やっぱり彼はその呪縛を振り解けないでいるんだと思えた。
でも違った。
彼に葛藤はなくて、温もりを与えてくれた存在を守る選択枝しかなかった。
今まで躊躇なく発動してた殺意との葛藤を感じさせる台詞ならば、もっと彼に同情できたかもしれない。
彼女を殺害してしまい、苦悩し自らの思考を恨み、彼が第二のキコリになるラストもありなんじゃないかなぁとは思う。
とまぁ、なんかブレを感じた作品だった。
編集もなんだかしっくりこず…スケジュールなかったんかなぁと余計な事を思う。
◾️追記
キコリのコスチュームもなぁ…。
一回ランニング途中に襲われたシーンがあったけど、アレがなぁ…。
マスクは直前に被るとしても、あの服装は不審者でしかなく、通報待ったなしなわけで…仮面ライダーの世界観じゃないのだからと、そのあたりもリアリティに欠けてはいたかなぁ。
襲う直前にワザワザ着替えるのかよとか、要らぬツッコミをしてしまったなぁ…。