「感情を知らない怪物の木こりは…」怪物の木こり 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
感情を知らない怪物の木こりは…
亀梨和也が以前出演した作品なら、“早く人間になりた~い!”。
本作は、“普通の人間になりたくな~い!”。
二宮彰。表向きはエリート弁護士。本当の顔は、サイコパス。
自分の邪魔になる者を冷酷無比に殺す。
弁護士としての恩師であり、婚約者・映美の父親を自殺に見せかけてビル屋上から突き落として殺した。
何も知らぬ映美と婚約関係を続けるその神経…。
サイコパスの心情など理解出来るものじゃないし、そもそも“心”などあるのか…?
亀梨和也が新境地の冷演。
そんなサイコパスに、類は友を呼ぶ。
医師の杉谷。彼もまたサイコパス。実は二宮よりイッちゃってるような染谷将太の雰囲気がマジヤベェ…。
そしてある日二宮の前に現れたのは…
不気味な“怪物マスク”を被った何者か。
突然襲撃され、負傷する。
命は助かり、誓う。ぜってぇー殺してやる…!
巷を脅かす連続猟奇殺人事件。
被害者は頭を割られ、脳を持ち去る事から“脳泥棒”。えげつない…。
その犯人と目されているのが、『怪物の木こり』という絵本に出てくる不気味な怪物マスクの殺人鬼。
ただの快楽殺人か…? それとも何か繋がりが…?
警視庁のプロファイラー・戸城のプロファイリングで、被害者たちにある共通点が見つかる。
皆、養護施設育ち。性格に問題あり。
もし同一犯ならば、二宮が襲撃された理由は…?
彼も養護施設育ち。性格は言わずもがな。
入院中の頭部レントゲンで、脳にチップが埋め込まれている事を知る。
本人に記憶ナシ。一体これは…?
警察の捜査線上に、二宮も浮かび上がる。何かしらの重要参考人。それとも犯人…?
二宮の前に“怪物の木こり”が執拗に姿を現し…。
サイコパス主人公vs警察ならよくある構図だが、本作はサイコパス主人公vs警察vs連続猟奇殺人鬼。
TVドラマの悪女役などで女優として花開いた菜々緒が、今回は正義感あるプロファイラーを熱演。
問題行動で飛ばれた刑事・乾。渋川清彦十八番のやさぐれ感。
その乾と因縁ある過去の殺人事件の容疑者・剣持。『首』とは真逆の中村獅童の恐演。
各々の人物像や関わった事件なども話に絡み、二転三転していく。
被害者たち全員にも脳チップが埋め込まれている事が分かった。
被害者たちと二宮の関連性、“怪物の木こり”に狙われる理由がこれで繋がった。
では、その脳チップは一体…?
30年前、多くの子供が誘拐。警察がようやく辿り着いた犯人は、サイコパスの医師夫婦。
警察が踏み込んだ時、一人の子供に何かの手術を終えた後。
唯一の成功。失敗した子供たちは皆…。
夫婦の研究目的は、脳にチップを埋め込み、サイコパスを作り出す。
生存者はその子供一人かと思われたが、脳にチップを埋め込まれた子供は何人か養子として。被害者たちや二宮はその子供たち。
彼らが狙われる理由は…?
警察が踏み込んだ時いた子供は今…?
“怪物の木こり”の正体は…?
二宮の復讐は…? そんな彼に異変が起きる。
二宮が人を殺せなくなった。
原因は、“怪物の木こり”と揉み合った時、頭部に受けた負傷。チップが壊れた。
今まで人を殺す事やそれ以外でも何も感じていなかったのに…、何だ、この感情は…? 何だ、この込み上げてくるものは…?
と同時に、罪の意識。恋人の父親を殺した自責の念。
人は犯した罪の重さに耐えられない。
サイコパスがサイコパスじゃなくなった時…
それは“もう一人”いた。
映美が“怪物の木こり”に捕まった。今は廃屋のサイコパス夫婦の屋敷跡へ。
いよいよ“怪物の木こり”の正体。
衝撃!…ほどではなかったな。剣持。これが吉岡里帆だったら驚きだったんだけど…。(吉岡里帆の役、あんま目立ってなかったような…)
剣持もサイコパス夫婦によってサイコパスにされた。あの時の子供。
かつて乾と揉み合った時、頭部に衝撃を受けてチップが壊れた。
罪の意識がのしかかる。彼の場合、妻を殺した事…。
サイコパスにされた自分たちの苦しみを止める。
ちと動機が弱い気もするが、これが事件の真相。
もっと三池節炸裂かと思ったら、グロもバイオレンスもそこまでではなく。血の噴出は勢いあったが、『首』の方がグロかった。
思ってたよりドラマ重視。当たり外れの多い三池作品の中で、個人的には当たりの方。
サイコパスにされた者たちの苦しみと哀しみ。彼らも誘拐されなければ…。
幼き頃の思い出。友達が欲しかった。
復讐されたのは自分のせい。それでも愛した人を守りたかった。
サイコパスがサイコパスじゃなくなった時…
本当は普通の人間になりたかったのかもしれない。