劇場公開日 2023年9月1日

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「【”大日本帝国への抵抗か、迎合か。”第二次世界大戦時の日韓の歴史の闇を背景に、80歳の認知症が進む男が若き友人を目的を話さずに運転手として雇い、60年来の計画を実行していく様を描いた哀しき物語。】」復讐の記憶 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”大日本帝国への抵抗か、迎合か。”第二次世界大戦時の日韓の歴史の闇を背景に、80歳の認知症が進む男が若き友人を目的を話さずに運転手として雇い、60年来の計画を実行していく様を描いた哀しき物語。】

2024年5月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

■80代の老人・ピルジュ(イ・ソンミン:フライヤーに名があったが、最初分からず。特殊メイクだそうである。)は、60年前の第二次世界大戦時に大日本帝国陸軍及び韓国人親日派の男達の行為により、家族全員を理不尽な出来事で亡くす。
 それ以来、家族を死に至らしめた者達への復讐を誓い、生きてきた。
 認知症に見舞われた彼は、処刑すべき5人の名前をタトゥーにして指に刻み、飲食店で一緒に働いていた若き友人青年インギュ(ナム・ジュヒュク)を、レンタルした真っ赤なポルシェの運転手として、目的を話さずに雇い、彼に指示し、復讐殺人を決行すべく当時の銃を手にする。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・認知症を患うピルジュが、妻の死を見届けた後、真面目に働いて来た飲食店のバイトを辞め、一緒に働いていた若き友人青年インギュを、レンタルした真っ赤なポルシェの運転手として、目的を離さずに雇うシーンからそれまでのコミカルな雰囲気から、凄惨な雰囲気を漂わせてくる。

・それとともに、ピルジュの表情も徐々に無表情になり、次々に指にタトゥーにして刻んだ家族を死に至らしめた者達への復讐を決行していく。
ー この辺りからのピルジュを演じた、イ・ソンミンの演技は流石である。-

・最初は、犯人と誤認されたインギュが、犯行に巻き込まれつつ、ピルジュの行為の事情を理解し、躊躇いつつ運転手としてピルジュを目的地に運ぶ。
ー が、彼はピルジュの行為を止めようと懊悩するのである。-

・ピルジュが、処刑すべき5人の名前をタトゥーにして指に刻んでいた5人目の”キヨハラタカヨシ”が、誰であったか。
 そして、ピルジュが4人目のキム・チドク将軍を彼の名誉となる除幕式で撃ち殺した後に、銃口を自らのこめかみに向けるシーン。
 だが、駆け付けたインギュの”罪を犯したなら、法で裁かれるべき。死に逃げるな!”と言う叫びにキヨハラと刻まれた銃を手から落とすピルジュ。
ー このシーンからは、ピルジュ自身の長年に亙る、深い懊悩が感じられる。-

■第二次世界大戦時の朝鮮は、日本の植民地であったが故の複雑な事情があった事は、知識としてはある。大日本帝国への抵抗か、迎合か。
 当時の朝鮮人の方々も大変な思いをされた事が、今作からは伺える。
 只、親日派を全て悪と描く事には途中まで違和感を覚えていたが、ピルジュがインギュに説得され銃を手から落とすシーンを見て、今作の製作者側の意図が分かった気がした。

<ラスト、収監されているピルジュは認知症が進み目の光が無い。
 だが、彼に面会に来たインギュに対しては、飲食店でいつも行っていた”挨拶”を行い、自らを抱きしめるインジュに対し、ゆっくりと彼の腰に手を回し、愛おし気にポンポンと彼の腰を叩くピルジュの手の動きが何とも切ない作品である。>

NOBU