「緊迫ジェラルド・アクションに見えて、今世界に問う」カンダハル 突破せよ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
緊迫ジェラルド・アクションに見えて、今世界に問う
先日見た『ロスト・フライト』が面白かったので、まだ見てなかったジェラルド・バトラー映画を。
こちらも『ロスト・フライト』と同じく昨年公開。漢ジェラルドらしい硬派アクション!
イランで任務中のCIA工作員トム・ハリス。核施設の破壊に成功する。
イラン側も報復を開始。CIA内部告発者の協力者である中東の女性ジャーナリストを尋問。リークされ、トムの顔も名前も存在もバレてしまう。
すぐさま中東からの脱出を。唯一の方法は、アフガニスタン南部カンダハルにあるCIA基地から離陸する英国軍機に乗るしかない。
距離にして約640キロ。タイムリミットは30時間。さらに、イラン革命精鋭集団・ゴッズ部隊、パキスタン軍統合情報局=通称“ISI”のエージェント(バイクにまたがるカッコ良さ!)、タリバンゲリラらが執拗に追う。
文字通り命の懸かった脱出ミッション…!
見終わってWikipediaや解説を基に、今こうやって整理しているのであらすじをまとめられたが、見始めはなかなかに把握しづらかった。
どうしても中東絡みやスパイ物は小難しい。今どういう状況なのか、イラン追跡側は誰が何処の所属なのか…。
でも、決死の逃走劇が始まると、一気にスリリング!
町中でのカーチェイス。
夜の砂漠での暗視スコープ越しの奇襲ヘリとの戦闘は随一!
急襲され囚われ、絶体絶命のピンチ…。
何とか難を逃れ、壮絶な銃撃戦。
目指す軍機は目前…。
追跡の敵だけじゃなく、日中と夜の砂漠の環境、時間までもが襲い掛かる。
本当にスリリング、絶体絶命、危機一髪の連続。であるからこそ、手に汗握る面白味。
漢ジェラルドの魅力も際立つ。
孤軍奮闘ではなく、協力者が。アフガニスタン人の通訳者、モー。
夜の砂漠での談話。
トムが何としてでも生きて帰りたい訳。娘の卒業式への出席。
定番の家族との関係不和だが、ストレートな動機。
そんなトムに家族がいる幸せを説くモー。彼の息子は殺された。
トムは昔なじみのタジク人将軍に助けを求める。が、金で動く彼のせいで、モーの息子は犠牲になった。
息子の敵と対するも、ムスリムの教えで赦すモー。
一筋縄ではいかない事情や経緯が複雑に絡む。
それは追跡側も同じ。主人公を追い詰める敵の位置付けだが、各々背負うものがある。
トムが命を懸けてまで危険な任務をしているのかにも通じる。即ち、
何の為に闘うのか…?
答えは一つじゃない。
国の為、家族の為、金の為、背負ったものの為、己の為…。
答え無き問題。紛争続く中東や強いては世界中の争い全てを表す。
脚本を手掛けたのは、元アメリカ国防情報局職員。自らの体験に基づく。
その目で見たリアリティー、問題、真実を、世界に問う。