劇場公開日 2023年8月19日

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「2次元と3次元のハイブリッド」オオカミの家 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.02次元と3次元のハイブリッド

2023年8月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

壁に絵を描いては塗り直して、ひとコマずつ撮影していくということをやっているのか、これは。壁の絵が動いては、元いた場所に塗り直した痕跡が残っているから、きっとそうなんだろう。気の遠くなるような作業をやっている。

この塗り直しの痕跡が得体のしれないゴースト的なものがこの家には宿っていそうな、そんな異様な雰囲気を醸し出していてすごくいい。さらに、本作は立体造形物も駆使して、2次元と3次元のアニメーションのハイブリッド作品となっている。壁画から命が生まれて、飛び出してきたかのようなそんな感慨を与える。
しかも、カメラの使い方が独特。普通、ストップモーションはカメラを固定するが、本作のカメラはひとコマごとに動いていて、まるでブレる手持ちカメラのような印象を与える。アニメーションなのに、手持ちカメラの実録ドキュメントを撮っているかのような、そんな奇妙な感覚が全編にある。それが、この異様な悪夢に強烈なリアリティを与えている。虚実をないまぜにするメタフィクション的な手法も相まって、鑑賞中、異様な混沌に放り込まれる、唯一無二の鑑賞体験が得られる作品だ。

杉本穂高