「サンデイモーニング」人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
サンデイモーニング
乃木坂卒業後も様々な作品に出て活躍をし続けている深川麻衣さんの主演作品。自分を映画狂いの世界に誘った一本でもある「パンとバスと2度目のハツコイ」から追いかけ続けているので、元アイドルという共通性のある今作は絶対観なきゃなと思っていたので鑑賞。
少し重いテーマを扱いながらも、優しさが常に漂う雰囲気にほんわかさせられました。
アイドルを卒業してからライターの仕事をしていた安希子。突然足が動かなくなり、結果的に会社を辞めざるを得なくなった安希子の元にルームシェアのお誘いがやってきて、しかもおじさんとの2人暮らしという前代未聞な事になっており…みたいな感じのあらすじです。
今作の魅力はなんてったってササポンの飾らない優しさです。全身のトゲを抜き去った後くらい物腰柔らかで、程々にテキトーにをモットーに生きており、喜怒哀楽の激しい安希子をよそに刑事ドラマを見るために爆速で帰ったり、漬物をお裾分けしてくれたり、基本的には無干渉だけれど、歩み寄ってきてくれたら話を聞いてくれたりする優しい優しいおじさん。現実にはそうそういないと思いますが、安希子がこれほどまでに生き方が緩やかになったというのが劇中多く表現されているのもササポンがいたからなんだなぁと思いました。演じられた井浦さんの落ち着いたトーンの喋り方も最高でした。
安希子も毒を吐きまくっており、「少しだけ呪われろ」はかなりのパワーフレーズでした。物事を考えすぎて前のめりになってしまうが故に自分も他人も振り回してしまうというのが彼女の特徴ですが、原作者がここまで自分のことを見れて文章に書き記すってのは中々度胸のいる事だよなぁと映画外で感心していました。
誕生日を祝ってもらったり、少しだけ仕事にやりがいを見つけたりして前を向けるようになり、肩の力を抜いて書いた作品がバズって現在に繋がる、力を入れるばかりだけで無く、力を抜いて身近なものをテーマに書くという筆者本人の人生観にも繋がったんではないかなと思いました。
別れ際も壮大じゃ無いのがとても素敵です。今生の別れじゃないんだからサラッとテキトーに挨拶するように別れるというのがまぁなんとも印象的でした。別れの曲をしっかり弾ききって、その後の未来に幸あれ!と優しく背中を押してくれるようでした。
その後は貯金100万円で飛び出していくのは中々リスキーでは?とは思いましたが、自分に強く自信が持てているようでしたし、早口もすっかり直っているのは良い傾向なんだろうなと思いました。
映画館で観るべき!と強く推せる作品ではありませんが、どうやって人生を生きようかと思っている人の心を少しだけ支えてくれる、そんな作品でした。
鑑賞日 11/5
鑑賞時間 9:30〜11:35
座席 H-10