劇場公開日 2024年1月26日

「異形ともとれるアートな世界観」哀れなるものたち asukari-yさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0異形ともとれるアートな世界観

2024年1月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

知的

難しい

 ヨルゴス・ランティモス、というギリシャ人の映画監督を聞いたことあるでしょうか?名前だけは知っている。作品を観たことはないが、断片的な情報から奇抜でシュールで毒のある世界観を生み出す監督だそうで、以前から興味はあった。そして今回、本作を拝む機会ができた。

 ストーリーから奇抜。お腹に子を宿したまま身投げした女性の体を天才外科医が見つけ、女性の脳を取り出し、胎児の脳を移植。生まれ変わったその子(本作の主人公:ベラ)を実験体にし、観察して成長過程を記録する中で、ベラは世界を見て回りたくなる・・・というお話。

もう奇想天外である。

それをのっけから白黒のシュール感を付け足して見せつける。序盤は白黒なのはまだ外界に出てないからか、街を飛び出してからカラーに。しかしいきなり濡れ場からカラーになるからビックリ。またベラの体は大人でも脳はまだ子供なだけに無垢で無知。だから次何をやらかすか少しヒヤヒヤしながら見てしまう。それがシュールにも見える世界観と相まってドキドキしながら見てしまう。

この変わった世界観、いままで観たことがない・・・!

 変わった世界観と言えば大昔の映画「カリガリ博士(1920)」を思い出す。全てを歪な形にしたシュールな世界観。またシュールと言うか、奇想天外な映像を作る監督とすればティム・バートンかデヴィッド・リンチか、はたまたウェス・アンダーソンか?しかしいずれにも属さない。背景から船から人の顔からどれ一つとっても“普通”ではない。“異形”ともとれるその姿形、

自分は美術館にある「アート(Art)」と感じてしまった。

いうなれば“まだ少しわかるピカソの絵画をみるような”感覚か。それが、自分が思うこの映画の世界観。しかし、居心地は良い。汁が溢れまくる、ジューシーな果物を食べるような感覚。だから胃もたれなく観ていける。ヒヤヒヤ感はずっと続くが。

 だがストーリー自体も確かに面白い。女性が自立していく姿を映画いているが、成長ではなく、“女性が男性と同じ立場に立つためには”と言う視点で描かれているように思う。だから大人の女性を最初は無知で描き、女性の自立の方法を、自分を使った実験として模索していくような哲学的視点で描いたように思うのです。しかし、こんな描き方、ヨルゴス・ランティモス監督でなければできなかったのではないか?けっこう濡れ場多いぞ?それをアートに昇華できる監督でなければこれは無理やろー?そこはギリシャ人ならではの感性なのか?今後気にしていきたい監督としてメモしておこう・・・。

 奇抜なストーリー、シュールで異形とも思える世界観、ヒヤヒヤしながらも、果汁溢れるジューシーな映画。R-18指定だが、観れるなら観ておいて損はない。逆に面白い発見ができる映画ではないかと思います

asukari-y