「画の魅力あるも、幼稚園児に翻弄される大人達に共感出来ず。 ★3.4」哀れなるものたち レオンさんの映画レビュー(感想・評価)
画の魅力あるも、幼稚園児に翻弄される大人達に共感出来ず。 ★3.4
現在、概ね高評価レビューが多いが、私的にはは自信の基準点★3.5よりマイナスに。
原題が「Poor Things」なので、邦題が「ものたち」で"物"と"者"の両方を表しているのはよく考えられている。
まずよい点から記すると、衣装やセット美術は目に留まる美しさで、船や小さい城などが本物ではなく、アート作品の様に魅せている画力が抜群。
が物語は、序盤の外科手術による誕生というプロットはフムフムと作品に引き込むが、その後が”幼稚園児”に翻弄される大人の物語が、作品の3分の2あたりまで続き、私的にやや冗長に感じ、他作品のデジャブを感じた。 「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」だ・・。
それに矛盾と疑問を感じる設定も多々。
なぜ博士は一般道徳を教えなかったのか・・。
なぜ宝物のように大事な"実験体"を不安な旅に出させたのか・・。
なぜ100人も女性を知る狡猾な弁護士が、幼稚園児に魅了されたのか・・。
なぜ弁護士はその者と旅に出ればトラブルが待ち受けている事を予知出来なかったのか・・。
なぜ狡猾な弁護士自身の方が、稚拙な態度を取る様に変わったのか・・。
と、物語優先のご都合主義で展開するのに嫌気が増し、時々ため息も・・。
が、今作がそれでも見る者の注意を引くのは、幾度となく"意外な物"を画に描写している点だ。
奇怪な動物、現象、唐突な主人公の行動、ユニークなダンス、ヌード、キモい男性、性描写・・・。
エマ・ストーンはそこまでやるかと驚愕してしまう熱演で、是非主演女優を獲得してほしいと記している方もいるが、私は逆にこの役で受賞してほしくないと感じる。
世界中の「映画女優」を目指して努力している女性に、あそこまでしないとアカデミー主演女優は獲れないのか・・。 逆にあそこまでやれば主演女優が獲れるのか・・と"異質な基準"になってしまいそうに感じるから。
(が、実情は他の多くの女優達は、彼女以上の"仕事"は出来ないと判断しストーンに投票する方も多いと思う)
あのお人形の様な大きな目のストーンはこの役にはピッタリで、エロティックなシーンでも、ポルノチックになってないのは彼女のキャラが貢献してると思う。
が今作役は、心中にある事がすぐ行動に出てしまう、稚拙な成長途上で、人としての人格が完成されていない役どころなので、私的には、他にもっと打ち込める作品でその演技力を発揮してほしかったと・・。
私が思う、本当に素晴らしい演技とは、僅かな出演時間、あるいは台詞がないシーンでも、その登場人物の性格や心の深淵まで伝わってしまう様な演技だと思う。
あきらかに一般ウケしそうにない今作が、もしアカデミー賞を多部門受賞すれば、ますます国内では洋画離れが進行してしまうかと・・。
(現在、日本国内の映画収益の「和洋対比」は68:32で、圧倒的に邦画優勢)
↓ エンディングネタバレ
終盤でベラの心が大人に成長して、ようやく感情表現も含まれる描写になるも、傲慢将軍が現れてマックスとの関係がフリダシに戻りそうに・・。
その時点で、そうか今作がこれほど★評価が高いのは、この将軍をベラが殺してマックスの元へ戻るのか! と、(より感情的な行動を取るのかと)瞬時にひらめいた♪
だから、マックスに「必ず戻るわ」とか、「私がこの状況を解決するわ」等の台詞を言うはず!
と思ったのだが、無言でふらふらとついて行く・・。
なんだ結局奥深い感情を表現する演出はないのかと、やや落胆・・。
が、物語がまだ続き・・という事はやはり将軍を・・・。
私はもっとブラックなエンディングを予想した。
危篤の"博士の脳"を”将軍の体”に移植して蘇らせ、
"将軍の脳"を、"犬の体"に移植する!
が、結果は見ての通り、1段階弱いラストに。
ベラが式場でマックスに予定行動を一言告げて、尚もっと必然的に将軍に銃を向ければ、私の評価はもう少し上がったが結局、叙情表現より叙事表現の方が強く感じ、★が上がらずに・・。
同じ異色作でも「TITANE/チタン」はもっと感情移入出来、「バビロン」は全編魅了されたのだが・・。
でも記憶に残りそうなシーンは数知れずの作品でした♪
PS=
現在米アカデミー協会の「作品賞」対象作品には"二つの必要条件"が。 2020年秋に発表された内容を要約すると↓
1 . 主演または重要な助演役に白人以外の人種を最低一人以上起用すること。(発表文ではアジア人・黒人・ヒスパック系・・と記載)
2.または作品テーマに、女性、人種/民族的少数派、LGBTQなどの性的マイノリティー、障がいを持つ人等の要素を含むこと。
さらに制作スタッフにも、最低二人は上記に該当する者を起用するなどの新基準が設けられた。
昨年「作品賞」の「エブリシング・・」や、その前年の「コーダ あいのうた」も上記に該当する。
そして今作も・・・。
が、「バビロン」は候補にならず・・。
最近この様な作品が増えたのは、このアカデミー基準が要因のひとつに。