「エマ・ストーンの体を張った演技は見ものだが…?」哀れなるものたち bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
エマ・ストーンの体を張った演技は見ものだが…?
エマ・ストーンが主演のベラ役を務め、体を張った演技で、ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、アカデミー賞にもノミネートされている話題の作品。ホラー、ミステリー、サスペンス、ファンタジー、エロチシズム、ヒューマンドラマの様々な要素が盛り込まれ、一つのジャンルには、到底、分類できない不思議な作品。
大人の体を持ちながら、胎児の頭脳しか持ち合わせてないベラが、次第に頭脳と体の釣り合いの取れないセクシャル・ディスティニーに目覚めていくシーンは、極めて生々しく描かれている。エマ・ストーンが、全てを曝け出して、ストレートでエログロなセックス・シーンを惜しげもなく披露し、女優魂を見せつけてくる。
また、前半部分は、スクリーンがモノクロで映し出されていたのが、途中からカラーとなる演出は、ベラの自我からの目覚めや心の開放を、演出していたのかもしれない。背景も19世紀のヨーロッパを思わせる街並みの中に、どこか近未来も思わせるような色彩と佇まいが美しく印象に残る作品となった。
物語は、身ごもったベラが自ら命を絶つところから始まる。しかし、風変わりな天才外科医のバクスターによって、胎児の脳を女性に移植され、体は大人、脳は幼児のちぐはぐな女性として蘇る。次第に自我か芽生える中で、バクスターの館から出ることを禁じられていたべラは、「世界を見てみたい」と、弁護士のダンカンとヨーロッパ大陸への逃避行に出かける。その旅で、ベラは純粋な欲望と視線で世界を見渡し、成長していくのだが…。
当初は、フランケンシュタイン的な悲哀の作品かと思いきや、ベラの奥底から突き上げてくる性欲に対する衝動と共に、『女性の自由や解放・平等』がテーマとして根底にあるようだ。「ここまで映していいのか?」というようなシーンも盛り込まれ、海外での各賞を受賞しているが、日本では、賛否両論の作品になるだろう。
出演は、主演のエマ・ストーンの脇を固める、天才外科医のバクスター役をウイリアム・デフォーが演じ、相変わらず怪演振りをみせている。また、逃避行の相手ダンカン役には、『アベンジャーズ』の『ハルク』を演じたマーク・ラファエロが演じたが、エマの相手なら、もう少し若手でも良かったように思った。そして、ベラの婚約者でバクスターの助手をテレビドラマに良く出演している、クリストファ・アボットが務めている。