「私達自身の暴露本」哀れなるものたち 猿田猿太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
私達自身の暴露本
閲覧注意の凄まじい映像ばかり。生々しい性描写や手術シーン、死体を持て遊んで切り刻み、人間をオモチャにするかのような脳移植、生体実験、去勢手術。そんなえげつない話でも全て我々が知っている、世界の何処かで行われていることばかりではないでしょうか。ペットを大人しくさせるための避妊手術とか、多くの飼い主の皆さんならやっていることですよね? 勿論、私自身も人間です。何一つやってないなどと云えません。何をやったか、恥ずかしくて云えません。
勿論、我々はやってはいても、あえて口に出したりしないし、人前で見せつけるなんて事はしない。それらをまるで内臓から裏返すかのように露呈したのが、この映画なのかと理解しました。なにせ、人間の作った映画だからこそ、人間の知らないことは映像化できないでしょうから。
映画の締めくくりと言えばスタッフロールですが、この映画は黒いバックで出演者や協力者の名前がスクロールするのではなく、様々な壁画?やなにかのカット映像にテロップを貼り付けられたものでした。制作者の意図は知りませんが、この映画の内容は壁画に著されたような史実、実話の物語なのですよ、とでも云い表そうとしているのでしょうか。あくまで、私の想像ですが。
これはちょっと、へんな既成概念というか偏見かもしれませんが、手塚治虫氏の描いた「ブラックジャック」に類似しているようでもありますね。似たような話もありました。確か、あちらは大人の脳を赤ん坊に移植したんだったかな。心は子供で大人の体になってしまう「ビッグ」という映画もありましたが。それでも、この映画のオリジナリティーが損なわれることはないでしょう。独特のテンポ、聞いたことも無いような音色の音楽。モノクロも交えた凄まじい映像感覚だった。