「エマ・ストーンの素晴らしさ」哀れなるものたち わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)
エマ・ストーンの素晴らしさ
圧巻。心震えるとはこのこと。安易にフェミニズム映画と括りたくない強さと皮肉さがたっぷり詰め込まれているのに、人間讃歌にもなっている。
名探偵コナンの何から何まで逆で、見た目は大人、頭脳は子どもの場合、女性として生きていく上の社会的接点・社会性の獲得の前に(並行して)進んでいく、性欲への目覚め。純粋に食欲や睡眠欲と同様にあるとなると、性への目覚めはこうなるのかという驚き。
“冒険”という言葉が何度も出てくる。文字通り、家の中で抑圧されて生活してきたベラが、外の世界に出ると女性としての抑圧を喰らう。さらに、なぜ彼女が自殺することになったのかやら、貧困の階級差やら、社会に擦れる前に、ないし擦れることに抗いながら頭脳が成長を遂げていく様の美しさと尊さ。無垢の強さ。擦れたからこその強さ。
他社の悪意すらも自身の成長に変えていく。そして、男性だって変えられるかも…という期待の的は惜しまないことと、変えられないと判断したら…のラストカットの皮肉ぶり。「Swallow」みたい。
どのタイプの男も結局は『男は女の所有物』的な考えをしていて、それを時に個人で蹴散らし、時に女性と連帯して乗り越えていく。
エログロなんでもありだし、男性器まで出てるからR18なんだろうけど、この寓話にリアリズムを与えるのは、その生々しい映像と音楽。そして特殊なカメラのセットと割り方。そのどれにも魅了される。モノクロからカラーへの切り替えも意図的で本当に素晴らしい。
本当にエマ・ストーンが素晴らしい。知能が女児の時の振る舞いや目線と、成長後の振る舞いや目線の緩急。これぞ演技力の賜。日本でこれできるのおるんかな…二階堂ふみか?
僕はこれからもヨルゴス・ランティモスの「愛とはなんぞや」映画に魅了されていきたい。