劇場公開日 2024年1月26日

「大人になる前に観るべき映画なのにR18 。」哀れなるものたち t2law0131さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0大人になる前に観るべき映画なのにR18 。

2023年11月28日
PCから投稿

今年のベネチア映画祭で最高賞である金獅子賞を受賞したという超話題作だが、思いっ切りR18。しかし映画史に残るR18なのかもしれない。このあたりの論考では「ラストタンゴ・イン・パリ」(ベルナルド・ベルトリッチ監督 1972年)や、存在価値は違うが「エマニエル夫人」(ジュスト・ジャカン監督 1974年)を交えて語られるだろうが、それは専門家に任せておこう。
スコットランドの小説家アラスター・グレイの原作だという。映画を信じるなら官能幻想ロードムービー小説なのだろう。ウィレム・デフォーは、これまた北欧の狂才ラース・トン・フォリアーの諸作、特に「アンチクライスト」(2009年)などで竿を振るっていた。しかし本作では狂気の天才外科医。醜いブラック・ジャック役だ。なにより、製作にも加わって力瘤の入っているエマ・ストーンが演じる主人公ベラが凄い。しかしこの凄さはレビューでは語らない方が良いだろう。まず、絶対観ろ。
倫理を超越した科学的医学的実験で生まれた「無垢(イノセンス)」な女性の自分探しのロードムービー。そうとう身体を張った、彼女の自己(自我)が覚醒していく過程を、観客は爆笑しながら眺めることになる。その純粋無垢に、喪失しきった倫理の奇妙さに。スクリーンのこちら側の「全うな道徳を幻想している観客」とは別の世界であるという、歪んだ風景のなかで、観る者に正気を確かめさせるヨルゴス・ランティモス監督の挑発に、僕らは打ちのめされる。
そして、このうえなく、純粋な「愛」についての物語であることに、溜息が出る。

t2law
berkeleyさんのコメント
2024年2月7日

「全うな道徳を幻想している観客」
その通りだと痛感させられました。この映画は、「倫理を喪失している世界」での、「自我が覚醒するための過程」を表現していた、と。

berkeley
亞LEXさんのコメント
2024年2月3日

「無垢」な女性のロードムービー、確かにです。オデッセイでもある。

亞LEX
Mさんのコメント
2024年1月27日

「映画史に残るR18」確かにそうですね。

M