「タイムスリップ「前」と「後」での劇的な変化。」あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
タイムスリップ「前」と「後」での劇的な変化。
特攻隊員との悲しい恋物語は普通にありそうである。この映画は、現代の少女が戦時中にタイムスリップして特攻隊員と恋に落ちる物語である。現代の若者が直接戦争体験をしたらどうなるのかが描かれていて、今までにない新鮮さを感じた。なるほど現代から見たら、戦争は不条理の塊である。戦争のためにはすべてを犠牲にしなければならないという風潮に誰も逆らえない。罪もない人々が命をなくし家をなくし、日常生活が破壊される。若者は、お国の為という名目で自ら命を捨てる。そんな過酷な現実を、主人公の百合がどう受け止めるのかがこの作品のテーマでもある。
百合と彰の純愛物語であるが、美しい物語を成立させるためには彰の気持ちに嘘がないことが大きなポイントになる。現代から見れば、「特攻」は嘘の塊である。人間を意志を持った爆弾位にしか考えず、若者の純粋に国や家族を思う気持ちを利用して、無謀な作戦を続けた。しかし、彰の国や家族を思う気持ちには嘘がなかった。命を犠牲にしても、自分が守らなければならないという強い決意に揺らぎはない。百合も戦争の理不尽さが分かっていてもそんな彰の真っすぐな気持ちに惹かれるのだろう。彰の出撃を見送る百合の気持ちはいかばかりかと想像するだけで心が痛む。
百合が現代に運よく戻ってきてからが物語のクライマックスである。百合は戦時中にタイムスリップする前と後で大きく気持ちに変化が起きていることを知る。そして夢ではなかったかと思っていた彰との出来事が思いがけず事実であったことを知った時の衝撃もよく伝わってきた。
不平不満だらけだった少女が、不思議な体験を通して生まれ変わる様子を、福原遥が素直に演じていた。爽やかな印象が残る映画でした。