「期待度○鑑賞後の満足度◎ 最近珍しい素直で爽やかに泣かせる好編。愚かしい戦争だったけれど、後世から見て判るからで、その時代を生きた人達は決して愚かではなかった、と思わせてくれた映画でもありました。」あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
期待度○鑑賞後の満足度◎ 最近珍しい素直で爽やかに泣かせる好編。愚かしい戦争だったけれど、後世から見て判るからで、その時代を生きた人達は決して愚かではなかった、と思わせてくれた映画でもありました。
①本編が終わって感傷に浸っていたらエンドロールが始まってすぐ福山のファルセットが聴こえた時は少し退いてしまいましたが…
②この歳になると、泣かしてくれる映画であっても一方で映画としてどのくらいの出来かを冷静に判断している自分がいて歳を取るのも佳し悪し…
③ということで、映画自体としてはこのくらいの星の数を付けてあげるのが精一杯ではありますが(何せ特攻隊員に恋する乙女というドラマは数限りなくあるし、これはそれにタイムスリップという捻りを加えただけで、設定を知っただけで結末が予想できる予定調和ぶり、演出も特に素直なだけで旨味なし)、色々な点で否定的ではなく肯定的な意味で好感が持てました。例えば:
A:特攻隊の隊員達に現代の俳優が演じる時にどうしても漂う現代性が薄く、如何にも当時の特攻隊員らしい潔さと克己性が感じられたこと。
特に、村上恒二扮する彰が最後まで、ヘナチョコ映画なら簡単に口にしそうな“愛してる”なんて台詞を最後まで口にしなかったこと。ましてや濡れ場などなかったこと。
(しかし、日本人にしては実に立派な鼻梁。白人の血が入っているのかしら。)
B:千代ちゃんを演じた女の子が、如何にも戦後の日本映画の女優さんを彷彿とさせる昭和の佇まいとルックスであったこと。
C:劇中で百合ちゃんが口走ることを当時本当に言えば即憲兵に引っ張られただろうけど、そこはそれ、もし現代の人間で普通の良識がある人間なら言いそうなことを代弁させて当時の風潮との対比としているし、周りの人達も顔をしかめないことで彼らも心底では同じ様に思っていたことへのメタファーとなっている。
D:憎まれ役の警官に扮した津田寛治さんは、1シーンの登場ながらさすがの迫力ある好演。
また、その直後の彰の台詞「悪いのはあの警官ではなく、あの人をああいう風にしてしまった“何か”だ」は心に残る。
その“何か”は現代まで生き残り世界各地で相変わらず人々を苦しめ悲しませている。
些細だか重いメッセージだ。
E:偶然だとは思いますけれども、『ゴジラ-0』と本作と特攻隊に関する映画がほぼ同時期に公開されたのも興味深い(本作を観ようと思った理由の一つ)。
『ゴジラ-0』の方は敵前逃亡した元特攻隊員がゴジラと対峙することで自分の戦争を終わらせるところが感動的ではあったけれど、本作では敵前逃亡した(実際はああいうシチュエーションでは逃げられないか、軍牢に入れられるだろうけど)板倉君が戦後生き延びて天寿を全うした描写にホッコリさせられる。
F:変に反戦カラーを付けるのではなく、心が触れ合いながらも別れなければならなかった二人の純愛と粛然と死に向かっていく若者達を素直に描くことで、その時代に生まれた為に死を選ばざるを得なかった特攻隊員達ひいては当時の若者達の悲痛さ・痛々しさが却って胸に迫ったと思う。
G:現代ではブー垂れていた主人公が、違う時代・環境に行きそこでの生活・人々との触れ合いを追体験することで、自分がいかに平和で安全で自由で幸せな生活・環境の中で生きていたかを悟るのもよくあるストーリーではあるけれども、中嶋朋子(蛍ちゃんも年取ったねぇ)の生活感のある受けの演技で説得力あるものとなっている。
H:そして最後、この映画を観る気になったもう一つの理由、福原遥ちゃん。NHKの朝ドラ『舞い上がれ』でファンになったけれども、高校生役はもうシンドイかな。でもやっぱり上手だ。
④食堂のおばちゃん役の松坂慶子。最近は顔出しだけの役が目立つけれども、本作では若手俳優ばかりの戦時中パートに安定感をもたらしてさすが。
でも、今の若い人は知らないだろうけれど、『夜の診察室』や「愛の水中花」の頃のセクシー女優がねぇ。
若い頃セクシー女優だった人は歳を取ると大概ケバいおばちゃんになるものだけれだも、こんな安定感と円熟味のある押しも押されぬ演技派女優になるとはねぇ。
⑤確かに現代日本は平和で安全で自由な良い国(一応そう言っときましょう)になったけれども、戦争が終わった後もそうなるまで実に様々な事が有ったことを、教師になるべく頑張って勉強するなかで戦後史もしっかり学んで行きましょうね、百合ちゃん。
そして、それが祖国や家族・愛する人達を守る事だと信じて命を差し出した若者達の死が無駄死にならないように、大平洋戦争の事もしっかり伝えて、より良い未来の日本を作るように子供達に伝えてね。
はじめまして
みかずきです
本作の良いところは、仰る様に、現代人・百合を戦時下にタイムスリップさせることで、現代の視点を戦時下に持ち込み、当時と対比させることで、当時の人達の苦悩、葛藤を浮き彫りにしている点にあると思います。
お国のためにという大義に従わざるを得なかった人々、特に特攻隊員達の苦悩、葛藤を描いているところです。
まさしく、戦争の理不尽、不条理です。
本作、多くの人、特に若い人に観て欲しいです。
ー以上ー