「観たい度◎鑑賞後の満足度◎ LGBTQ+版『愛と青春の旅立ち』かと思ったら違った。「LGBTQ +映画」とすら言えないと思う。普通の若者を殺人マシンに鍛え上げる人々の方が偏見がないという皮肉。」インスペクション ここで生きる もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
観たい度◎鑑賞後の満足度◎ LGBTQ+版『愛と青春の旅立ち』かと思ったら違った。「LGBTQ +映画」とすら言えないと思う。普通の若者を殺人マシンに鍛え上げる人々の方が偏見がないという皮肉。
①この映画が、息子がゲイであることを一生受け入れられなかった母親に捧げられていることでもわかる。LGBTQ +(そろそろ止めません?このカテゴライズ。同じ人間なんだから。)の人、それを偏見なく受け入れる人、がいるのを認めるのであれば、それをどうしても受け入れられない(偏見からではなく生理的にとか宗教上の信義からとかで)受け入れられない人がいる、ということも認めなければ本当の意味で平等の意味がないのではないか、とも思わせてくれた(私、何か理解不能なこと言ってます?)。
②教官達が海兵隊志願者を罵詈雑言で迎えるシーン、何かというと腕立て伏せをやらせる訓練シーン、修了式シーンは『愛と青春の旅立ち』をまんま思い出させる(あちらは士官学校だったのでもっと華があったが)。
40年経ってもやってることはあまり変わらないな(当たり前か)と思ったが、教官の罵詈雑言の中に流石に差別的スラングは減っているようだ。
ただ、ここ40年でUSAの軍隊が抱える問題が更に複雑怪奇になっているのは確か。
③自分の半生を描く映画で長編デビューしたという監督の演出はなかなか達者。
それぞれ個性的な訓練生たちを上手く描き分けている。
出演者で印象的なのは主役のジェレミー・ポープは勿論母親役のガブリエル・ユニオン、そして鬼教官役のボキーム・ウッドバイが映画を締めている。
④正確に言うと、教官達はLGBTQ +(自分でまだ使っていますが)含めマイノリティーへの偏見・差別云々よりも国防の為にマンパワーとして必要なのが実情。
USAの保守層はそれが分かっていないのかね。
他国に加え国民の安全保障意識が格段に低い日本ではどうかというと、自衛隊員希望者や警官希望者が不足している。
日本の経済が後退・停滞しているのはマンパワー不足が大きな要因の一つ。
移民の受入れに対して非常に消極的なのにマンパワー不足が更に進む日本。
LGBTQ +の人達は一定数いるのは最早明白な事実なのだから、人権問題としては勿論マンパワー不足の対策としてそういう人達が肩身の狭い思いをせずに自分の能力をフルに発揮できる社会を目指すべきなのに「生産性がない」だの「そういう人たちなどいない」
だの言う政治家等がまだいる日本という国は情けない。
映画の内容とは直接関係ないけれども、こういうことを考えさせる本作ではあった。