「痛々しいけれど小さな希望がともったように美しい」インスペクション ここで生きる ちいまめさんの映画レビュー(感想・評価)
痛々しいけれど小さな希望がともったように美しい
愛されたくて、認めてもらえなくて、何かをなしたくて成せなくて自信を無くし、それでも愛する人がいて生きようと苦悩する。隠していれば親子関係は修復できたけれど、自分であることを認めてほしくて、結果的に厳しい選択をする。
南部はこんなにも保守的で狭窄的なのかと、この時代こんなにも軍は非人道的で厳しかったのかとぞっとする。少数派が自己を主張することも許されず、見なかったことにして抹消する世界。
痛々しくてつらい場面が多かったけれど、ほんの小さな良心に励まされて支えられてがんばろうと奮起する主人公がいとおしい。不器用で狭窄的で愚直。歪んだ世界で蔑まれても優しさを忘れず、それでも苦難をともにしたことで一応の居場所と尊厳を手にする。限られた世界で得た尊厳だけれど国民としての誇りと自信を回復して前を見つめる姿は痛々しいけれどすがすがしくて小さな希望がともったように美しい。体力と精神力がいるが素晴らしい作品に出会えました。
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