星くずの片隅でのレビュー・感想・評価
全11件を表示
香港の夜景はいつどこで見ても目に沁みる
新鋭ラム・サムが単独でメガホンをとり、コロナ禍の香港の片隅で生きる人々の孤独な心を、やさしい眼差しと美しい映像で紡ぎ出したヒューマンドラマです。カンフーの達人や凄腕の刑事、マフィアのボスや殺し屋たち、そして滑稽な小市民や幽霊も出てきません。本作の主人公は、不器用でやさしい中年男と、ずる賢くも憎めない若いシングルマザーなのです。
誰にも気づかれずに街の片隅で生きていた中年男が誰かのヒーローとなり、幼い娘のためにも生き直そうとする若い母がヒロインとなる。こんな時代だからこそ、一歩近づいてお互いを見つめ、助け合う姿が、小さな希望を与えてくれます。中年男を演じたルイス・チョン、若いシングルマザーを演じたアンジェラ・ユンが素晴らしい。
あることがきっかけで窮地に追いやられてしまうふたりが眺める香港の夜景は、「男たちの挽歌」(1986)でチョウ・ユンファ演じるマークが「いつどこで見ても目に沁みる」と呟いたように、コロナ禍であっても、やっぱり美しい。
コロナ禍のドラマ
ドキュメンタリーみたいな映画だった。
健気に生きるシングルマザーと娘。清掃業の社長はかなり良い人だ。ついでにキムタクと憲武を足して2で割ったような顔だった。
最後の抱き合うシーンは泣けました。当たり前なんだけど万引きしなかったことは成長しました。
貧乏でも小さな幸せな家族になるといいな。
お金は大事に!改めて痛感しました。
【”俺たちは塵より小さい。けれど、不幸は永遠には続かない。”貧富の差が顕著になったコロナ禍の香港で支え合い生きる善良なる心を持つ清掃員の男とシングルマザーの関係性の変遷を優しき視点で描いた作品。】
■2020年、コロナ禍で静まり返った香港。
清掃会社”ピーターパンクリーニング”を営むザク(ルイス・チョン)は消毒作業に追われる日々を送っていた。
ある日、若いシングルマザーのキャンディ(アンジェラ・ユン)が職を求めてやって来る。
幼き娘ジューのために慣れない仕事を始めるキャンディだったが、富裕層の客の家でマスクを盗んでしまい、一度は馘首されるが、貧しさ故にまともに暮らせないキャンディを見るに見かねてもう一度チャンスを与える。
キャンディも心を入れ替え真面目に仕事に打ち込むが、ジューが溢してしまった洗剤を補填するため、ザクに内緒で洗剤を薄めて使ってしまう。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作では、”ピーターパンクリーニング”に清掃を頼む富裕層は一切出て来ないが、ザクとキャンディが清掃する部屋を見れば、富裕層の家だと直ぐに分かる。
そして、頻繁に出て来る”欧米への移住”と言う言葉も、香港の貧富の差を示している。
・ザクは、老いた母の面倒を見ながら忙しくも真面目に清掃業務をする日々を送っている。そんな彼が、幼き娘ジューを育てるキャンディを見る眼が変わるシーン。
”何で、シングルマザーになったんだ?妊娠したら彼が逃げちゃって。家にもいられなくって。けれど、ジューを産んで良かったと思ってる。”
ー この辺りから、ザクは心根の優しいキャンディを気遣うようになるのである。-
・特殊清掃のシーンも印象的である。
ー キャンディが呟く”何で、生きて居るんだろう・・。”と言う言葉。孤独死は世界共通なのかな。切ない。だが、そんなキャンディをザクは焼き鳥屋に誘って元気づけるのである。
だが、ザクの母親も部屋で事切れている・・。-
・けれども、キャンディがザクに内緒で洗剤を薄めて使ってしまった事から、ザクは起訴され、会社は倒産。
ザクは経理作業をしていたキャンディを”友達だ。”と小さな会社の部屋から追い出し、一人で罪を被るのである。
ー そして、ザクはバンを売りディーゼル車廃棄補助金と併せ、罰金を払う。彼はキャンディの働くアダルトビデオ屋に行き、そこにジューが居る事に気付き、キャンディを”何で、こんなところに連れて来るんだ!”と一喝し、誕生日だというジューに御馳走をしてあげるのである。
そして、ジューに”お母さんと一緒に開けるんだよ。”と言いながら渡した茶封筒。
そんな、ザクにジューは抱き付くのである。
このシーンを見ると、ザクは実はキャンディとジューを支えつつ、彼も二人の存在に支えられている事が分かるのである。-
■茶封筒の中には、おそらく罰金を払ったあとのザクのほぼ全財産と思われる大金と、”これが精一杯だ。ジューをキチンとした学校に入れてくれ。”と言うメモが入っている。
その後、ザクとキャンディは出会い、キャンディはザクに抱き付くのである。
<今作は、フライヤーによると、ラム・サム監督の単独デビュー作だそうである。人間の善性をベースにしたストーリーテリングの上手さが際立つ作品である。
そして、孤独な心を抱えつつ、支え合う若き男女の姿を優しき視点で描いたヒューマンドラマの逸品でもある。>
みんなそれぞれあるよね
みなさんのレビューを読んでいると、その時の精神状態で感じ方は変わってくるように思いました。疲れていたのか私の率直な感想は
「ふーん、そうだよね、生きてるとそういう事あるよね…」
ザクの温かい人柄、キャンディの危なっかしいけど憎めない感じ、ジューは境遇がそうさせるのか時折鋭い言葉を発する。
広い世界の中“塵よりも小さい”とある3人のドラマでした。
しかしキャンディは経済的に困窮しているはずなのに毎日違うカワイイ服を着て
おしゃれしすぎじゃない、、、??
コロナ禍が収束した2023年の夏に、あの頃とこの先を見せてくれた
2020年コロナ禍の香港が舞台のヒューマンドラマ。個人の清掃会社を経営する中年男性ザクとシングルマザーのキャンディとの関わり合いを描いた作品。
10年以上前に旅した香港で見た、雑多で活気のある街並みやギラギラとした夜景。私の記憶の中と香港とは異なる、切なくも美しい景色がスクリーンに映し出されていた。それはコロナ禍の新宿や身近な街で見た景色に似ていた。自粛で多くの店が閉まり、マスクや消毒が手に入りにくく、不安や悲しみや憤りが渦巻いていたあの頃を否が応でも思い出す映像だった。だからこそ、登場人物に共感したりできなかったり、やっぱり幸せになって欲しいと願ったりした。
所謂エッセンシャルワーカーであるザクとシングルペアレントのキャンディは、自らを「神様にも気づかれないような塵のような存在」と台詞にあったように、誰もが大変だったコロナ禍で、より厳しい状況にあっただろう人達だ。ただでさえ楽じゃない生活にコロナ禍が襲いかかり、懸命に生活を続けるも、家族の死・廃業・夜逃げなど、追い込まれていく様子はいたたまれなかった。二人が清掃に行く富裕層のマンションとの対比、更には彼等よりもっと貧しい人が孤独死した部屋の清掃シーンなど、厳しい格差も見せつけられ、ずしりとくる。これはありふれたお涙頂戴ものではない。
そんな中でもザクと母親、キャンディーと娘のジュ―、ちっぽけな家族それぞれの日常のやりとりは心温まるシーンのひとつであり、特にキャンディとジュ―が暮らす小さなアパートの部屋はポップで明るく、彼等だけの小さな宇宙が広がっていて、自分たちなりの幸せを見つけて何とか生きていこうとする姿には、強張っていた頬が緩む場面だった。
自分を更に不幸にした張本人でもあるキャンディの不器用さや正しくなさを受け止め、彼女を許し信じるザクの行き過ぎた優しさに、少々驚き呆れながらも、こうしたザクの行動が、彼やキャンディや彼等が生きる世界を最終的には良い方向に導いてくれるのかもしれない。そう信じたいと思わせてくれた。
主演のルイス・チョンがトータルテンボスの大村に似ている事が若干のノイズではあったが(笑)彼を含め、ザクの母親役やキャンディの娘役など俳優陣の演技が素晴らしかった。キャンディ役のアンジェラ・ユンはトップモデルと俳優を兼業しているだけあって、そのスタイルの美しさに目を奪われた。VaundyのMVにも出演しているらしく、今後の出演作や活動にも注目したい。時々話す日本語もキュートだった。
心温まる映画。ガチで。
ほんとに文字通りの、心が温まる映画です。
何がいいって、もう登場人物が良すぎて。
何も考えずにしばらく見てると、普通に好きになってしまうような人たちの話です。
こういうもんですよね。
愛すべき人たちの物語だから、見てると自然と心が温まる。
心温まるストーリーになるのが、必然のように思えるのです。
そんなキャラクターを生み出せる才能を持った作り手が作った映画だと思います。
そういうものの大切さを知りながら、自分にも、周囲にもそれを見い出せずに、苦しく日々を送っている人、映画館に行ってこの映画見てください。
涙出ますよ。
そういう気持ちを信じていいんだと思えて、少し楽になると思います。
コロナ禍の街の風景
個人的に(台湾を含む)中華圏の映画は比較的観られていない私。日本から距離は遠くないのに、政治的イデオロギーの違う中国に対して「遠い国」という印象をもっていることは否めないものの、中国映画にみる市井の人々に感じる印象から、それが単なる思い込みだったと気づかされることが多くあります。
この映画の舞台は香港ですが、序盤のやり取りの中で「やつは今中国に行っている」という字幕に、香港人からしたら未だに「中国は中国、香港は香港」なのかもしれないと思ったり(まぁ、字幕をそのまま信じればですが)、或いは、この物語は2020年のコロナ禍なのですが「葬式が多すぎて」と、やはりコロナでの死者が少なくなかったのかと臭わせるようなセリフに、当局の検閲もあるだろうにと心配になったり、冒頭からなかなかの味わい深さを感じさせてくれます。
思い起こせば、日本でも21年頃の作品の多くに「コロナ禍」の閑散とした街の風景を観せるものを多く見かけましたが、今、あの頃の街の風景を観ると、最近の東京と比べ(御幣がある言い方になりますが)少し懐かしさを感じます。何なら、この物語の主人公であるザク、キャンディのように「その日暮らしすらままならない状況」で暮らしていた人にとっては、あの風景が「恐怖や不安」を掻き立てるPTSDの心配すら考えるほど、今やコロナ禍の象徴とも言える「近過去に世界中の皆が観た風景」になりつつあります。
当然、そんな雰囲気で語られる物語ですから、思い通りにいかない悪循環な展開に、観ていて辛いものがあります。にも拘わらず、当人であるザクとキャンディ、そしてジューやザクの母親の「それでも生きていく」様子、また辛さの中でも冗談を言ったり、励まし合って生きている彼らに心を動かされるのです。
公開週のサービスデイ19時10分の回、シャンテの客入りは芳しくない感じでした。確かに「映画館でなければ」という作品性ではありませんが、こういう映画を観終わって一人歩く帰り道は悪いものじゃないなんて思ったりもする(勿論、二人でも)、しみじみと染み入る良作だと思います。興味を持ったあなた、騙されたと思って如何ですか?
ザクがいい人すぎ 少なくとも私が香港にいた頃は、 ここまでの人は周...
ザクがいい人すぎ
少なくとも私が香港にいた頃は、
ここまでの人は周りにいなかった
どうしてもキャンディが許せない
子供守ったからって、美談にはできないし
あの人は、何回反省しても一生繰り返す気がする
映画として悪いわけじゃないけど、点数に影響する
映画「星くずの片隅で」を観た。 清掃業者とアルバイト女性を通して、...
映画「星くずの片隅で」を観た。
清掃業者とアルバイト女性を通して、コロナ禍の様々な問題とその少し前に起こっていた中国政府による民主化運動の弾圧、香港の姿を描きたかったのだろう。
監督は、将来を悲観して海外に移住する人達が後を絶たないが「残った人たちが困難をどう乗り越えていくのかも表現したかった」と言う。
真面目な清掃作業を行うザクは言論の自由を制限し、民主派を取り締まる現状に対して耐え忍ぶ正義を、アルバイトのキャンディは大規模デモから始まった混乱に翻弄される市民を表しているのかも知れない。
だがザクと知り合いキャンディ親子も徐々に変わっていく。
ザクは言う「世の中はひどい。それに同化するな」と。
自由がない場所に健全な市場経済は育たない。
香港の神様が「東洋の真珠」と言われた自由都市に、いつかは福を呼び込み希望の輝きを取り戻してくれるのを祈る。
狭い道だが皆で頑張ろうと前を向く、地味ではあるがとても優しさに溢れた素敵な映画。
信じてくれる人
香港で清掃会社を1人で営む男と、バイトの求人をみてやってきた若いシングルマザーの話。
コロナ禍で特殊な洗剤は品薄だし高値だし、車は不調で不安ばかり。
しかしながら仕事は何とか順調という状況下、シングルマザーを雇ったけれど…。
あらすじ紹介をしっかり見ていなかったし、話しの流れから自分も最初は妹かと思ってましたが、とりあえずキャンディちゃんが可愛いので☆+0.5?w
母親と2人で暮らし真面目に仕事に励むザクと、軽〜い気持ちで人のものに手を出したりしちゃうキャンディ。
いくらかわいくてもそれはあかん!
心を入れ替えマジメに仕事に励む2人の機微をこのままひたすらみせていくだけのはずはなく………って良く判らんレベルでザクが良い人過ぎるんですが。
しかも悪人は誰も出てこないし。
ある意味何だか中途半端な面もあったけれど、とりあえず塵なりにコツコツ生きていきましょうという決意は伝わったかな。
全11件を表示