劇場公開日 2023年7月14日

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「香港の夜景はいつどこで見ても目に沁みる」星くずの片隅で 和田隆さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0香港の夜景はいつどこで見ても目に沁みる

2023年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

笑える

幸せ

新鋭ラム・サムが単独でメガホンをとり、コロナ禍の香港の片隅で生きる人々の孤独な心を、やさしい眼差しと美しい映像で紡ぎ出したヒューマンドラマです。カンフーの達人や凄腕の刑事、マフィアのボスや殺し屋たち、そして滑稽な小市民や幽霊も出てきません。本作の主人公は、不器用でやさしい中年男と、ずる賢くも憎めない若いシングルマザーなのです。

誰にも気づかれずに街の片隅で生きていた中年男が誰かのヒーローとなり、幼い娘のためにも生き直そうとする若い母がヒロインとなる。こんな時代だからこそ、一歩近づいてお互いを見つめ、助け合う姿が、小さな希望を与えてくれます。中年男を演じたルイス・チョン、若いシングルマザーを演じたアンジェラ・ユンが素晴らしい。

あることがきっかけで窮地に追いやられてしまうふたりが眺める香港の夜景は、「男たちの挽歌」(1986)でチョウ・ユンファ演じるマークが「いつどこで見ても目に沁みる」と呟いたように、コロナ禍であっても、やっぱり美しい。

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和田隆