「上質のウイスキーのような味わいが漂う良い作品です♪」駒田蒸留所へようこそ 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
上質のウイスキーのような味わいが漂う良い作品です♪
以前から興味のあった作品を出張先で観る機会があり、やっと鑑賞しました。
で、感想はと言うと…面白い!
個人的にウイスキーは大好きで、いろんなウイスキーの蒸留所に足を運んでいるので、こういったウイスキーに纏わる作品は興味津々と言うか、大好き♪
様々な土地のベンチャーウイスキーの蒸留所がモデルにしているのも良く分かるし、物凄く良く調べられている。世界中で注目されるジャパニーズウイスキーでも小規模で製造されているベンチャーウイスキーに焦点を当てられてますが、細かい部分でもきっちりと練り込まれている。
物凄くウイスキー愛に溢れています。
世界五大ウイスキーの1つとして挙げられるジャパニーズウイスキーは近年、サントリーの「山崎」や「白州」、ニッカの「竹鶴」などのブランドウイスキーの価格高騰や中国市場での買い占めが取沙汰されてますが、日本のウイスキー市場の8割近くを占めるのは比較的低価格クラスのウイスキー。
それでも「安かろう悪かろう」ではなく、様々な飲み方にも対応出来つつ、料理との相性も抜群なのは価格を超えた高品質の表れ。
サントリー、ニッカ、キリン等の大規模な企業での製造以外にも小規模で「ベンチャーウイスキー」と称される地ウイスキーは規模こそ小さいけど、ハイクオリティな物も多く、市場に出回りにくい物も多い為、プレミアが付いている物もあります。
ただ、一般流通も殆どしていなく、ウイスキーマニアでないと知らない銘柄も多い中で、様々な土地で蒸留されているウイスキーのお話はウイスキー好きには嬉しい限り♪
柔らかい絵柄に様々なウイスキーの基礎知識が盛り込まれた作風はウイスキー好きでなくても、見応えある作品なのは、流石「お仕事アニメ」を得意とするP.A.WORKSの本領発揮かと思います。
通を唸らせる様々な蘊蓄だけでなく、ウイスキー工程の流れもマル。ベンチャーウイスキーの多くの蒸留所が焼酎やジンを足掛かりにして、ウイスキーの蒸留に着手すると言うのはウイスキーを仕事にしているものには当たり前でも普通は知らない知識。
特に幻のウイスキー「KOMA」の最後の決め手になる「カスクフィニッシュ」には“よくぞここまで!”と膝を叩きたくなる程のウイスキーへの愛を感じます。
また、変に恋愛に片寄らないのも良い。
駒田蒸留所の社長でヒロインの駒田琉生とニュースサイトの記者、高橋光太郎との関係は恋愛に行ってもおかしくないのに、そこに至らなかったことがとても良い。
アニメだからと言う偏見では無いんですが、男女の登場人物がなんでもかんでも恋愛に発展すると言うのはちょっとあざとい感じで個人的に嫌。
“恋愛にうつつ抜かさずにもっと確りとウイスキーについて考えんかい!”と言うオジサンの気持ちをよく御理解頂いてますw
また、シングルモルトではなく、ブレンデッドなのも良い♪
どちらかと言うとシングルモルトとブレンデッドでは価格の違いもある分、シングルモルト>ブレンデッドと言う風潮がありますが、会社規模の経営関係でベンチャーウイスキーの本懐はブレンデッドかなと個人的には思います。
また、ブレンデッドは様々な組み合わせでシングルモルトを上回るようなウイスキーが産まれることもあり、それこそがブレンダーの本領発揮ではないかと思います。
琉生がウイスキーのイメージをイラスト(それもBLテイストw)で表現しているのはご愛嬌w
この辺りがちとアニメ作品っぽいし、何処か「神の雫」的な感じもあるw
けど、そのイラストが海外でウケると言うのは結構伏線回収としては上手いと思います。
ただ、多少なりともツッコミどころが無い訳ではなく、高橋光太郎のイージーなミスはちょっと“…おいおい…”どころの騒ぎではない。校了に際してのミスの確認はし過ぎてもし過ぎないのに、時間が無かったとかはあり得なさ過ぎ。
またウイスキーを樽で熟成保存する「ウェアハウス」の漏電火災は最初光太郎が原因かと思ったw
琉生の兄の駒田圭がライバル企業の社員でありながら、終業後にライバル先のウイスキーの開発に多分に加担するのは実家の家業の手伝いとは言えど、どうなのかとw
“ベンチャーウイスキーの希望でウイスキー好きが待望する「KOMA」の復活になら、喜んでお手伝いしますよ”と言うぐらいのくだりがあればまだ納得出来ていたけど、光太郎のチェックミスで起こしたトラブルを鑑みると…ちょっと難しいわなw
個人的にはもう少し、ベンチャーウイスキーの開発に地元活性化や地元食材とコラボ企画なんかが作中に盛り込まれていると良いのかと思いますが、本筋に変な流れが組み込まれる感じもしなくもないので、悩むところではありますが如何でしょうか?
約1時間半と言う上映時間も観やすいし、かと言って中弛みもない。光太郎の成長物語でもあるけど、琉生の成長物語でもあるし、ベンチャーウイスキーの成長物語でもあるのはいろんな意図が含まれる作品の懐の深さかなと。
とても上質な作品でウイスキーをよく知らない人でも楽しめるし、ウイスキー好きな人ならより一層楽しめる。
ウイスキーをストレートで味わうような重厚さやロックで味わうような変化の妙。また水割りのような飲みやすさやハイボールのような爽快感が味わえる作品!…と言うと…言い過ぎですかねw
でも、とても良い作品なので機会があれば是非鑑賞してい頂きたい作品。お薦めです♪