アスファルト・シティのレビュー・感想・評価
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こうなる前に手を打つ必要がある日本の未来
本作を鑑賞する前に先に伝えておきます。
エンドロールで流れる監督からのメッセージ
「救急現場で闘う英雄にこの映画を捧げる──」
ジャン監督、こういう大事な事は映画の冒頭で書いてくれ……。
というわけで、本作は貧困層が住む治安の悪いNYハーレムで活動する、ニューヨーク市消防局(FDNY)の救急隊員を主人公に描いたドキュメンタリー風作品。
彼らが救助に向かう先は、銃撃で重症を負ったのギャングやDV被害に遭っている妻、オーバードーズでぶっ倒れた貧困老婆、不衛生極まりない食肉解体場で喘息発作を起こすアラブ人(英語が話せない)など、救助活動以外の厄介ごとが幾重にもある、もう苛烈極まりない過酷な現場。
それらの事件がドキュメンタリーさながらに、次から次へと映し出されていくので、ぶっちゃけ鑑賞していて疲労感が半端なかった。
救急現場の緊迫感もあるが、それとは別に
「他者に危害を与えるような者、劣悪な環境で憂いる未来しかない者を救って意味があるのか」
という命の選別を、救急隊員に突きつけ、自ずと観客にも投げかけられるから。
鑑賞後、どっと疲れましたが心に刺さる作品でした。社会全体の最適化が図られても、部分最適化を蔑ろにすると、こうなるという事例だな。他山の石としたい。
綺麗事をいつまで言えるか
救命士へ捧ぐ
新人の救急救命士が、
コンビを組んだベテランの救命士とともに、
厳しい現実と向き合いながら、
一人前になっていく。
といったありきたりな成長物語にショーン・ペンが出ているはずがなく、
アスファルト・シティ、ニューヨークでは、
罵られ、感謝もされず、
支えてくれる家族もいない。
救うべき命、
救わない方がいい命。
人を救いたくて救命士になったのに、
逆のことをしてしまう。
心を壊し、
自ら命を絶つしかないのか。
救命士の自殺が増加している。
その数は殉職者の数を上回る。
救いようのないアスファルト・シティの現実。
せめてこの映画では、彼らを英雄(ヒーロー)と讃えよう
「ありがとう、あなたは命の恩人よ。」
2023年の作品。
キノフィルムさん、ありがとう。
アメリカ救急救命士の闇と…
ヒーローというブラックな職場
スパイダーマンもバットマンもヒーローって命がけなブラックな職業。命がけで嫌なことを率先してやってくれるからヒーローって呼ばれるのかな。人気あってみんなにありがたがれるヒーローならいいかもだけど、ある時は罵倒され、理不尽なケースで呼び出され、犯罪者も助ける。助けて当たり前、助からなかったらこっちのせい。こんなヒーローはできればやりたくない。
でもこういう隠れたヒーローが世の中にはいっぱいいて、そんな人たちに助けられてることもいっぱいあるんだろうなと考えさせられた。
不快にされる映像がたくさんで、そんな演出で相当暗い気持ちになる。繊細な方は映画だけで心折れちゃいそう。主人公の彼はギリ気持ちをコントロールしていたが、彼の将来、大丈夫かなあ。
見ている間緊迫感が続いて、こちらの心がやられそうでした
あまり予備知識無く観たもので、ミステリーめいたテイストなのかなと思っていたら、のっけからガンガン戦場の如き映像が連続して、想像とは全く違った内容でした。
(帰ってから解説を読んだら、実話ベースの小説が原作だと知り、納得でした)
エッセンシャルワーカーの苦悩や現実をいやというほど見せつけられた感じです(コロナの時はもっと自分の命が危機に晒されていたのでしょうね……)
ラット(ショーン・ペン)が職務停止になった時にクロス(タイ・シェリダン)と組んだ彼が発した「バディと常に共有しろ、そうでなければ心をやられる」がワタシの胸にも染み入りました。
本当に過酷な職場で、地域にもよるのでしょうが、まともな感性を維持するのは本当に難しそう。
救急隊員たちが現場に向かう時の陰鬱な表情がそれを物語っていました。
命と向き合い、命を司ってはいるけれど、全能ではない。うーん、とても苦しい。
解決法が見当たらないけど、寄り添ってくれる人を不幸にするのは違うよね、それは分かりました。
息苦しくなりそうな時間を少し緩めてくれたのは、マイク・タイソンさんでした。
手ブレ映像に酔っちゃった
The Baby
上半期ラストはこの作品になりました。
救急救命隊員の辛い日常を描いた作品という事で、どんな風に展開されるのだろうというところにも注目して鑑賞しました。
行く現場行く現場で罵声を浴びせられたり、邪魔をされたりと感謝される方が少ないというとんでもないヘビーな環境下で過ごす主人公たちを観ているのはかなり過酷ですし、一つのミスがきっかけで絶望の淵まで落ちていくというこれまた残酷な現実が突きつけられたりとで他人事ながら大変すぎるだろう…と思いました。
意外な感じでバディものになっていく過程は面白かったですし、だからこそ終盤の展開の辛さに繋がっていくというのもうまい作りだなと思いました。
2人が軽口を叩き合っているところはえぇなぁってなったりもしたり。
エンドロールにて救急救命隊員の自殺が年々増加しているという残酷な現実が流れてきました。
命を張って命を助けているはずなのに、些細なミスを咎められたり、目の前の命を見誤ったりとたくさんある中で多く抱え込んでしまう正義感の強い人が多いからこそなのかなと思い辛くなりました。
映像的にはリアルさが先行しているのでド派手なエンタメにはなっていませんですが、重みをしっかりと与える風にはなっているので、リアル路線なのは正解だったなと思いました。
ちょくちょく挟まる弄り合いは若干ノイズにも感じていましたが、こういう感じで発散しないとどうしようもないんだろうなという虚しさもあったりとで中々に物悲しいところでした。
どうか救急救命隊員たちの方々が気持ちよく仕事を全うできるような世界になって欲しいなと。
多くの命を救ってくださってる方々に感謝です。
鑑賞日 6/29
鑑賞時間 15:50〜18:05
まさに命のやりとりの現場
予告から、救急救命隊員が要救助者の命をめぐる事件に巻き込まれるような話かと思っていたのですが、ちょっと違いました。命は命でも、救命隊員自の命を見つめ直すような物語でした。
ストーリーは、犯罪多発のニューヨークのハーレムで、医学部入学を目ざして勉学に励む傍ら、新人救急救命隊員として働くクロスが、バディのベテラン隊員ラットから厳しい実地指導を受けながらさまざまな救命の現場を目の当たりにして心身ともに疲弊していく中で、ある現場での新生児への対応をめぐって二人の救命に対する姿勢が浮き彫りになっていくというもの。
これが救急救命隊のリアルだと言わんばかりに、観ている者に激しい衝撃を与え、メンタルをこれでもかと抉りにきます。命がけの現場に出向き、献身的に活動しながらも、ほとんど感謝されることもなく、むしろ興奮した患者や周囲の人々から罵声を浴びせられる救命隊員。それでも必死に救命を試みる姿に頭が下がります。
しかし、そんな救命活動さえ、虚しく徒労に終わることも少なくないでしょう。まじめな人ほど、自分の無力さに打ちのめされ、己を責め続けることになるかもしれません。心身ともに疲弊し追い詰められていくさまが、重く苦しくのしかかります。
クロスの部屋に飾られた絵は、それでも人命を救うことをあきらめないという彼の決意や理想を象徴するかのようです。そして、彼の上着の背中に描かれた天使の翼は、両手の動きに合わせて羽ばたいているかのように見え、その時々におけるクロスの心情を物語るようです。
一方で、クロスと親しくなった女性やラットの元妻らの姿を通して、隊員の疲弊は彼らだけの問題ではないことが描かれます。誰かの命を救うために、隊員らが自らの命を削るという現状。そこから脱するためには、現場で命を選別したり、自らの命を断ったりするほかないのでしょうか。そんな彼らを誰が救ってくれるというのでしょうか。世界中の救急救命の現場で今も苦しんでいる隊員がいるかと思うと、心が痛みます。
キャストは、ショーン・ペン、タイ・シェリダン、ベンガ・アキナベ、ラケル・ネイブら。どなたも救急現場の過酷さを伝える熱演で魅せてくれます。
MERの仕事をリアルに伝えて
さらに残念なアメリカの惨状を伝えている。
タトゥー、ヤク、エイズ、、、。
天使じゃないけど悪魔でもない人間がすべきことは何なのか。
各々考えさせられました。
日本がこんな社会にならないことを心から祈る。
皆保険制度も中国人ら外人に喰われ、中間層が居なくなり総低所得者層になり、、、。
NY MERでは無い…
アメリカ版TOKYO MERみたいな感じかなと思って観たら、そんな爽やかさは皆無で、暗くて血生臭くてリアルな現場を描いたまるでドキュメンタリーのような映画だった。
アメリカだけあって怪我の内容がエグすぎる。
最後まで救われない感じも無くはないけど好きな部類の作品でした。
カッコよさは全然なし
混沌と悲劇のライトモチーフ、黄金を盗まれないように
かなりのリアリティ
VR救命救急24時
予告編を見た感じではショーン・ペン扮するベテラン救急救命士が新人救命士をビシバシしごいて一人前にするストーリーを予想していましたが。
NYのハーレムを舞台に救命士の抱える心の闇にフォーカスしており、ありきたりの訓練もの映画ではなかったです。
前半は特にストーリーらしいストーリーがなく、ドキュメンタリーのような緊迫した救命救急シーンが脈絡なく続きます。
助けなきゃいけない患者が揃いも揃って犯罪者まがいのクズばかりで、主人公の置かれた状況に観てるこちらもイライラ、うんざりしてくる。
しかし、このイライラが後半になって効いてくる。
日々、命が失われる現場にいると死に対して鈍感になるというのは想像がつくし、相手はクズばっかりだし…とはいえ。
患者をジャッジして命の選別に走る、のはやり過ぎですね。
もう1人の救命士のように患者のドラッグをくすねたりするのはまあアリなのか?
どうせ誰にもバレないし?
いやいや、これじゃどっちもどっちでしょう。
主人公は最初は青臭い理想論をふりかざしていますが(ヒーロー・ボーイと揶揄される)、シビアすぎる現実にどっぷり浸かり、終盤にかけて心が壊れかけていくのが観ていてしんどかったです。
特に主人公の心理を音や揺れる映像で表現する演出、あなたならどうする?と突きつけられているようで息苦しくなりました。
このままバッドエンドだったらどーしよう?と不安になりましたが、主人公の理想がかろうじて守られるラストに安堵。
ショーン・ペンは相変わらず、酸いも甘いも噛み分けたイケオジだし、新人救命士役のタイ・シェリダンがクールな表情の中に繊細さを秘めた演技で大変良かったです。
(調べたらわりと色んな映画に出ているようですが、ノーチェックでした)
今後の活躍が楽しみです。
善と悪を観客に問う作品
映画の多くは冒頭に「ゴール」が示される。
殺人事件の解決、恋愛成就、生き残り、が定番。
だが本作は違う。
新人救命士がベテランと組んで任務にあたる。そこでの日常と過酷な任務で疲弊してく姿が描かれるが、明確なストーリーラインがあるワケでもない。
ドコに向かうんだろうな、この映画。と思っていると、急にスイッチが入る。
「善悪」「神とは」を問う作品だ。
この問いは、医療関係者など一部の職業人に限らず、全市民への問いだ。
今やネットでは、生活保護受給者、障害年金受給者など弱者、というか「税金に頼っているヒト」へのバッシングが酷い。
数年前の某アナウンサーの「自己責任の透析患者は死ね」発言が典型だが、
本作の主人公たちが直面する「善悪の葛藤」は全市民の共通するものだ。同じ状況になった時にどう判断するか?常日頃、どう判断するか?
を問う作品である。
「助けなくていい命」なんて無いのでは?
キリスト教に同じ概念があるのかは知らないが、日本には、
「他人を呪わば穴二つ」・・・つまり誰かを〇したいと思うには、自分も〇んでもいい覚悟が必要・・と言う諺がある。
冒頭から銃撃事件の現場に飛び込み、助けられなかった重い場面から導入。その後も様々な現場が続くが、どれも「こんな奴助けなくてもいいんじゃね?」と思わせるに十分な胸糞例が次々出て来る。
こんなんじゃ人間が早番壊れるんじゃ?・・と思っていたら娘との面会や人妻との逢瀬で、かろうじてバランスを取っていた。
映画後半では、それらの「救い」が(自責でもあるが)離れて行って、人格が崩壊していく様子が丁寧に描かれている。その過程で段々と「全能の神」の立場に居る錯覚から「命の選別」に手を出してしまう。その命の重みに耐えきれず、パートナーを絞め殺す衝動を抑えきれなくなったり、相棒を「人殺し」と罵倒したり・・・
目の前で人が〇ぬ場面を何度も見ていればPTSDになっても不思議ではないが、それを避けるために〇を正当化することは、反対にその〇を背負い続けることで人格破壊してしまうのではないか・・・が本作の主題かと。
終盤で「救命」は・(どんな相手でも)・患者だけでなく自分の心も助けているんだ、と気が付いたのかも知れない。
・・・と安らかに見終わったと思ったら、エンドロールで打ちのめされた。
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