「ほとんど虫の息だが、かろうじて良心はあると語っている」アスファルト・シティ ノーキッキングさんの映画レビュー(感想・評価)
ほとんど虫の息だが、かろうじて良心はあると語っている
ラット(ショーン・ペン)が9•11にも出動したと言った場面で、当時のある記事を想い出した。
ビル崩落で、警察、消防、救命、にも多くの犠牲者が出たが、家に戻って来ず、おそらく落命したと思われる“夫”の妻たちが、生活のため銀行に払い出しを求めた際、銀行側は、所属部署と名前だけで現金を渡したのだが、実際、多くの“ニセモノ家族”が現れ、その詐取被害額は50億円超だったとか。しかし当局は敢えて追求しなかったという。讃えられるべき英雄達の美談のウラにはこんなこともあったのだ。
エンドロールで救命士の自殺は殉職者より多いとの字幕。ラットの自殺の原因はもちろん良心の呵責に苛まれてという単純なものではない。元妻と娘が去り、事務職への異動、なにより相棒に同調されないという、ことどもである。
いかがわしいタクシー運転手から、ハーレムの夜を疾駆する救命士に転身のショーン・ペン!かわらず渋い演技。“最新の元妻”は笑えたし、娘と遊ぶシーンはホッコリする。
一方、主人公クロスの人物造形は、バスルームで母親がリストカットして死んだ時、なにもできない八歳児で、そのトラウマを抱え、いまは医学部入学を目指しなから新人救命士として働く青年というありがちな設定。
人命救助の激務、助けているにもかかわらず浴びせられる罵詈雑言、仲間からの嫌がらせ、暴力、麻薬、通じない言葉! 当然のように疲弊し、壊れてゆくしかない。
話を盛って作るのが映画なのだが、ここでは逆に現実を矮小化しなければスケールに収まらないというジレンマがある。ゆるいドラマなら、ここらで一服、友人に愚痴るとか、海を見に行くとか、だが“感傷”など入れ込むスキはない。うっぷん晴らしはもっぱら子持ち女とのセックスだけという日常だ。
問題のヤク中女にクロスが謝罪しに行く場面はやるせない。腕にヘロイン注射を刺したまま、HIV陽性、感染予防薬も無視、そのくせ逆ギレする人間を相手にする必要があるのか!新生児殺しを目論んだラットを断罪する安直な発想に意見したい!ほとんど永久に解決をみないハーレムの現状、人種のるつぼのリアル!
ラストでクロスが見せる、ほのかな笑みは、かろうじて、かろうじて良心はまだ残っているというメッセージだろうか。
「いかがわしいタクシー運転手」いかがわしかったですね、私なら絶対家の前までつけさせませんね。
最後のクロスの笑みは、いよいよ精神が逝っちゃったのか、または凄惨な状況の中毒になったかと思いました。
4月1日って、言わずと知れた世界中の人が嘘をつきまくる日、ノーキッキングさんのカレンダーだけ、時空が歪んでんのかと思いました。
そして、おとめ座なんですか、えええっ!!
コメントありがとうございました。
「セブン」ですか!テイストは似てるかもですね。
タイソンについては、よく似た人だなぁと思ってエンドロールをガン見してたら名前を発見しました。
彼は最近吐血で大量輸血を受けたり機内で救命措置を施されたりしているようなので、思う所あっての出演なのかも知れません。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。