「【”儂の娘でおってくれて有難う。”頑固だが自らの気持ちに正直に生きる男の姿を周囲の温かき人達の姿と絡めて描いた作品。”日本人として、決して忘れてはいけない事”を裏テーマとして描いている作品でもある。】」高野豆腐店の春 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”儂の娘でおってくれて有難う。”頑固だが自らの気持ちに正直に生きる男の姿を周囲の温かき人達の姿と絡めて描いた作品。”日本人として、決して忘れてはいけない事”を裏テーマとして描いている作品でもある。】
ー 今作は前半は高野豆腐店を営む頑固で不器用な男、辰雄(藤達也)と娘、春(麻生久美子)を中心に、彼の長年の悪友たちとの関係性をコミカルに、後半はスーパーの清掃係の女性ふみえさん(中村久美)との関係を、”日本人として、決して忘れてはいけない事”を裏テーマとして描いている。ー
◆感想
・前半は、結婚して直ぐに離婚した春の再婚話で、辰雄と、彼の長年の暇な悪友たち(理髪店店主:徳井優、定食屋店主:菅原大吉、タクシー運転手:山田雅人、英語ペラペラの少しチャラい男:日向丈)は見合い相手の写真を多数揃えたり(で、辰雄はイロイロと難癖をつける。)昼間っから寺の境内で、何故か見合いの練習をしたり・・。
ー おバカで暇なオジサン達である。
だが、春が何故に直ぐに離婚したかが後半分かるのである。
又、辰雄と春の真なる関係も。巧い脚本であると思う。-
・で、イケメンで好青年のイタリアンシェフ村上(小林且弥)と春がお付き合いする事を期待していたオジサン達。(含む、辰雄。)
だが、春が選んだのは駅ナカのスーパーに赴任して来た“ちんちくりん(桂やまと)By辰雄”で、皆ビックリ。
ー 春が”お父さん、話があるの・・。”と切り出した途端に逃げる辰雄。分かるなあ。私も娘から一番言われたくない言葉である。
で、3人の気まずい料亭での食事。“ちんちくりん”が巨人ファンと分かり憮然たる辰雄。
可なり、大人げないです・・。で、春は怒って家を出てしまうのである。-
■辰雄は狭心症であり、病院に通ってステント施術を促されるが、拒否。そこで知り合った女性で、独り暮らしの”病気持ちの”ふみえさんと距離を縮めていく。
ー 中村久美さんが、品のある女性を好演している。そりゃ、辰雄の気持ちも傾くよねえ。-
・ふみえさんから手術前に電話を貰った辰雄が仕事着のまま病院に駆けつけるシーンや、ふみえさんの姪夫婦が、彼女の財産目当てで病院にやって来るシーンも印象的である。
休憩所で二人の”いっそ、死んじゃえば良いのに。”と言う言葉を聞いた辰雄がブチ切れるシーンでの辰雄の啖呵。
”一生懸命、生きようとしている人に対し、何だその言葉は!”スカッとしたぞ!
辰雄は口は悪いが、一本気で情の厚い筋の通った男なのである事が良く分かる。で、姪の旦那を投げ飛ばし警察へ・・。
・実は、中野さんは広島の被爆者であった。そして、春の本当の両親も・・。
ー この辺りから、物語は観る側に様々な真実を明かしてくるのである。
春の本当の父親が辰雄と同じ造船所で働いていて、不慮の事故で亡くなり辰雄が二人を引き取った事。
春の母が放射線による血液の病で40歳で亡くなってしまった事。
春が結婚した際に、相手の姑が春の血も汚染されているのではないかと懸念し、春が離婚した事。ー
・その後、反省した辰雄は、春と“ちんちくりん”じゃなかった婚約者に”あの時は済まなかった。と詫びるのである。
・和解した二人はいつものように、朝から豆腐を作る。辰雄は初めて春に”やってみないか”と言い、にがりを投入する作業を任せる。そして、ナレーションで春は辰雄の豆腐が如何に大豆の香りをキチンと残していて美味いかを語る。
そして、出来た豆腐を見ながら、辰雄は春に
”儂の娘でおってくれて有難う。”
と深々と頭を下げるのである。すると春は辰雄に抱き付いて号泣するのである。
ー 観ている方も、涙を堪えるのが大変なシーンである。-
■そんな事を中野さんに話しながら、瀬戸内の海を見る辰雄。
春の瀬戸内の海は穏やかだ。
桜も、キチンと咲いてくれるのである。
辰雄と中野さんは商店街の中のテーブルに座って、慣れない手つきで電話番号を交換する。
そして辰雄は、中野さんが且つて持っていたピアノリサイタルのチラシを懐から出しながら、”ピアノ、弾いてくれんかね。”と頼むのである。
ここは、私の勝手な解釈だが、あのストリートピアノは平和の象徴である”被曝ピアノ”ではないかと私は思ったのである。
そして、中野さんは、ストリートピアノを軽やかに弾くのである。
<今作は前半はコミカルに、後半は且つて原爆の影響で大変な目に遭った辰雄や中野さん達が、慎ましい生活を送りながらも真面目に手を抜かずに仕事をし、毎日を生きる姿を描くことで、人間の矜持を貫く姿が印象的な作品である。
それにしても、三原監督って良いオリジナル脚本を書くなあ。>
NOBUさん 共感沢山つけていただきありがとうございます。
ミニシアターで少し遅れて見たのですが、これすごく良い映画でしたね。
被爆ピアノかー考えもしなかった。流石です!
ではまた。
またまたお邪魔します。ローカルネタに反応です。
NOBUさん制作の地下鉄のおかげで、仕事に映画に買い物にと
日々のお出かけが楽チンです。・^・
どうもありがとうございます。
お酒は殆ど飲まないので酒場の情報も詳しくないのですが
「源氏」というのは「文化横町」のお店でしょうか?
勤務先がその近くだった時期があるので。…と、遠い目。
学生NOBUさんと、街のどこかですれ違ったことがあるのかも。
そう考えると感慨深いものがあります。
※明日も暑い一日の予報です。
熱中症には気をつけましょう。(自分もです。はい)
NOBUさん、こちらにもコメントありがとうございます。
この作品の監督さん
「オレンジ・ランプ」の監督さんなんですね。
今改めて気付きました。
他にも良い作品作っていそうです。
気になる監督がまた増えました。
お仕事、熱中症に気をつけて下さい。
※宮城も暑いですが、名古屋近郊ほどでは
無さそうです…
NOBUさん、共感&コメントありがとうございます。
藤竜也さん、麻生久美子さん、中村久美さんが、本当によかったですよね。尾道の風情とあいまって、じんわり沁みてきました。ヒューマンドラマっていいですよね〜。☺️